冬物語

2/9 『冬物語』 福山リーデンローズ

作=シェイクスピア

演出=平幹二郎

もともと29日に尾道で観る予定だったこの作品だが29日が都合が悪くなった為1日に広島で観る事にしたところ生憎その日は大雪で断念せざるを得なかった。

で福山へ変更・・・、こういう事が出来るのが市民劇場の良さだと思う。だが他の会場へ行けば当然座席の割り当ては無いから良い席で観る事は出来ないと覚悟しなければいけない。 その積りで少し早めに会場へ着くとなんと座席は確保してあります、との事・・これはとても嬉しかった!  

時間が余ったのでリーデンローズの中や廻りを歩いてみたが、それにしても立派な建物だこと!これは福山市が運営している公共の建物だから当然かもしれないけどホールも階段もテラスも兎に角広い?!しかも周りには木や花を植え込んだスペースが至る所にあってそれがレンガ色をした建物の外観に良く映える。劇場内も中々豪華でゆったりとした造り、何処か外国の劇場を思わせるような雰囲気だ。何時も通う尾道のテアトルシェルネとは規模も造りもチョッと違う(笑)そして確保して頂いた座席は左側の一段高くなっていて通称LBと呼ばれる所の前の方・・・、舞台にも近くとても観易い席で役員の方に感謝!

舞台には下手前方に人形が蹲っていて動かない・・・、のだが開演と同時にそれが立ち上がって歩き出したので会場は大笑い!

舞台はそんな雰囲気で始まった。

此処はシチリアの王リオンティーズ(平幹二郎)の館、その王が親友のボヘミヤの国王ポリクシニーズ(渕野俊太)と手を組んでタンゴの音楽と共に踊りながら登場してくる、これが中々素晴らしい踊りで・・・(^^♪ 平さんは もうかなりのお年だと思うがアフロヘヤーのような髪形に濃いえんじ色のロングドレスが良く似合ってる。 ポリクシニーズはこの館に長い間逗留していたのだがそろそろ帰らなくては・・・、と言うのをリオンティーズが引き止めるが聞き入れないのでリオンティーズの妃ハーマイオニ(前田美波里)にも引き止めるよう助言を頼み、ようやくそれが聞き入れられたのだが・・・、睦まじく語り合う二人の姿に突然リオンティーズの心に疑惑の念が持ち上がる!

妃は身重の身体だったのだが、もしかして二人は以前から親しい間柄になっていたのではないか?  お腹の子はもしかして彼の子供ではないか? この王の変わり様があまりにも突然過ぎる気がしないでもないが・・・。しかしその妄想に取り付かれた王の過酷な処分が始まる。

ポリクシニーズはカミロー(勝部演之)の手引きでようやく逃れる事が出来たが、ハーマイオニは裁判にかけられそのショックで出産してしまう。生まれた女の子は山へ捨てられる事に・・・。だが老羊飼い(坂本長利)に拾われ羊飼いの娘として成長する。

2幕は時が流れて場所はボヘミヤに移るのだが、まるでカーニバル・・・!登場人物がそれぞれ動物の仮面をつけて出て来たりして1幕の陰鬱な場面とは雰囲気がガラリと変わる!

ごろつきとパンフには書いてあるオートリカス(松橋登)が出て来る場面も、音楽も演歌調で殆ど大衆演劇の雰囲気だった(^^♪ しかもジプシー(前田美波里)がこれも仮面をつけ脚線美を見せながら踊る・・・、終演後の帰り道で皆さんの会話が聞こえてきたが「あのシーンは長過ぎたよねぇ?・・・」(笑) 私はダンスが好きだから前田さん、お歳に似合わずスラリと伸びた足も綺麗だし、まだまだ充分踊れるねぇ?と思いながら見ていたのだけれど・・・、やはりチョッと長かったかも(^^) このシーンは恐らく前田さんの美くしさを見せる為に作られた場面だろう。

ここでボヘミヤ王の息子フロリゼル王子(城全能成)が虎の仮面を被って出てくる登場するのだがこれが中々ハンサムなのだ!城全くんは「モンテ」のマクシミリアンで観ただけだが、今回は髪はツンツン、スリムな身体にピッタリとした短めのTシャツにジーパンのへそだしルックがとてもよく似合う! この王子があの羊飼いに育てられた娘パーディタ(小林さやか)と愛し合うようになっているのだが、当然周りから反対されていてボヘミヤから脱出しようとしていた。だがこの娘が実は羊飼いの娘ではない事を知っているのはその羊飼いだけなのだ。捨てられた時籠に入っていた宝石と書付、包まれていたスカーフによってパーディタはシチリア王の娘である事がわかり王と再会する。しかも亡くなったと思っていた王妃ハーマイオニも生きていた。この場面彫像になってハーマイオニが舞台に登場しリオンティーズの後悔の告白の後彫像が動き出して王と手を取り合うのだが、パンフを読むとこの場面がクライマックス!と解説して有るが・・・、それほどの高揚感は無かったなぁ?。彫像として場面に出ているのは紛れも無くハーマイオニの前田さんだったもの・・・(笑)

しかしこの時の前田さんはとても美しかった! 「おぉ?温かい?!」と手を取って頬擦りする平さんとのツーショットは、まさに絵になるシーンだった!

永年消息不明だった娘との再会、そして死んだと思っていた妻も生きていた・・・、この辺りになるとこの物語がすごく「ペリクリーズ」に重なっているなぁ?、と思い始めていた。勿論作者も同じシェイクスピアだし晩年に書かれたロマンス劇と言われているのだから似て当たり前かもしれないけど、「ペリクリーズ」程の感動を受けなかったのは、やはりこれはリオンティーズの嫉妬が原因で招いた悲劇だからかもしれない。そのリオンティーズが自らを罰する為に鞭で身体を叩く場面があるが、これがどうも説得力が無いんだなぁ?。まるで子供が遊んでいるようにピチャ・ピチャ・ピチャと鞭で身体を叩く・・・、全然罰とは思えないし、その後悔の念も伝わらない。ここは平さんの演技力不足だよ! 平さんの精進を怠らない立派な身体や歯切れのよい台詞、良く通る声など立派だなぁ?と感心しただけにこの場面は残念だった。

冬物語

冬物語

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-01-08

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