『』

はじめまして.
春夏秋冬です。
この度は『』を読んでいただきありがとうございます。
更新は遅いですか、少しづつ書いて行こうと思いますので、宜しくお願いいたします。

人物紹介

桃華 朔羅(ももばな さくら)
富士波高校三年生。
見た目も知能的も優等生だが、売られた喧嘩は買うタイプ。
喧嘩で負けたことはない。
他人と関わるのを基本的に面倒だと思っている。
霊力が異常で、見ることは勿論触れることも出来る。


如月 麻己音(きさらぎ まこと)
テーマパークMPの社員。
朔羅の親友(?)というか家族(?)
銀髪で外見は不良に近い。
喧嘩はそこそこ強いが、朔羅に勝った試しはない。
馬鹿だが家事全般は一流。

臾鎌(ゆかま)
テーマパークMPの園長。
見た目はポニーテールをした女子だが、前髪で半分だけ隠した左目は閉じられており、その上には×印のような傷跡がある。
人間ではないが、詠里と出会う前の記憶を喪失している。
人の感情に興味を持っており、臾鎌自身は面白いとつまらないの感情しか持っていない。
フリーダム自己中。

詠里(えいり)
テーマパークMPの副園長。
綺麗な水色髪を気に入っており、結構な美人。
が、種族は怨霊。
禁忌の術で人間化しており、怨霊モードは現在なりを潜めている。
高崎みなという偽名で声優として活動し、副園長の仕事は空いてる時にやっている。
臾鎌に対しヤンデレ。

黒月 水夜(くろつき みずや)
テーマパークMPの社員。
黒と赤の入り混じった髪で顔の右半分を覆い隠している。
頭上に小さな団子を結い、ほんの少し後ろ髪を垂らすという面白い髪型。
左頬には悪魔の羽のようなタトゥーが入っている。
声は男性的だが、姿は女性。
種族は悪魔だが、追放されているので自称元悪魔。
ゲーム、アニメ、漫画が趣味でそれらを満喫するため、月一でしか睡眠をとらない。
基本的に金が欲しい時以外仕事はしない。
常にウィンドブレーカー着用。

伊達 政宗(だて まさむね)
テーマパークMPの社員。
料理長兼パティシエ。
かの有名な戦国武将。
種族は浮遊霊。
詠里と同じく禁忌の術で人間化している。
休みの日は霊に戻る。

火夜(かや)
テーマパークMPの社員及び偵察隊員
紳士服を着た二足歩行の狐。
性格もジェントルマン。
社員の中で一番仕事をしており、月3回しか休みを取らない。
九尾の妖怪と稲荷という狐神の間に生まれた狐。
種族は妖神(臾鎌が勝手に考えた種族名で、事実上は存在しない)

ジャック→ジョーカー
テーマパークMPの仮社員。
頭はジャック・オ・ランタン、身体は浮遊霊体で大きさは赤ちゃん程度。
常に首に長い灰色マフラーを巻いている。
中身も3歳児くらいで幼い。
種族は魔錬士となっているが、ジャックは魔錬士に造られた魔錬士で、正式的には魔錬士ではなく造種となるらしい。
自分を造った親の魔錬士はすでにあの世を去っている。

壱・夏のイベント

7月下旬に入り、そろそろ夏休みが始まるという頃。
MPは夏イベントの準備でせわしなく動いていた。
「と、いうわけで!さすがに人間のバイターだけに任せるのも無責任なので、この辺であたし達も準備に取り掛かるわよ!」

バンッ!

詠里は机を勢いよく叩いて立ち上がった。
「肝試しの!」
「何の話になってんだオイ」
朔羅は冷静に突っ込んだ。


いち、夏のイベント


全然関係ないのに、話し合いに巻き込まれた朔羅は、ため息を吐いて詠里を見る。
「夏イベントの話から何で肝試しにトんでんだ」
「イベントで肝試しをやるからよ」
「は?アトラクションじゃなくて?」
「アトラクションにはお化け屋敷があるでしょ」
「それと別に作るんじゃねぇの?」
「作るわけないでしょ。どんだけ金かかると思ってんの。イベントよ!イベント!日が沈んでからやるイベントなんだけど、まず最初に警報を園内に放送するの」
「迷惑極まりねぇし、客もビックリすんだろうが!」
「ちゃんとパンフにイベントの注意事項書くわよ。勿論警報のこともね。それで、警報を鳴らしてから10分後、お化けに変装したバイターを園内で徘徊してもらうの。あ、驚かすのは有りだけど、触れたりするのは無しでね。場所は食事所とショッピングロードと入り口付近とトイレを除いた園内全体」
詠里の説明を聞いた朔羅は数秒考えた。
「それ、肝試しか?」
「肝試しではなく、ハロウィン祭りに近いと思います。トリックオアトリートと言葉を付ければ完璧でございますね」
「それは言えてるな」
火夜の言葉に朔羅は同意する。
それを聞いた政宗は顔をしかめた。
「夏料理をハロウィン料理に変更しないと…」
「いや、夏料理でいいのよ政宗。マジで捉えてどうすんの。正直言えばあたしもそう思ったわ。だ、か、ら!」
ニコッと笑った詠里に臾鎌を除いた社員は嫌な予感を感じた。
ちなみに臾鎌は失踪中。
園内にいると思われるが、行方知れずである。
詠里は一枚の書類を突き出し、高らかに言う。
「まずはあたし達が肝試しするわよ!」
「「何でだぁっっっ!!」」
人間二人が勢いよく突っ込んだ。
「怖いわっ!」
「そう言う問題じゃねぇんだよバカやろう!」

ゴンッ!

朔羅は麻己音の頭を思い切り殴った。
そして詠里に向き直る。
「何で実際に肝試しする必要があんだよ!肝試しなんて、幽霊が出るか分からない所を歩き回れるか肝を試すから肝試しって言うんだろうが!お前のそのイベントは霊を歩き回らせるから肝試しっぽくねぇだけで、園内で雰囲気だけ作って決まった場所に霊を配置させとけば、後は客がそこ歩けるか肝試せば良いだけだろーがっ!つーか、お前怨霊じゃねぇかぁ!肝試す側!」
「違うわよ!そんなくだらない事しないわ!肝試すのは浮遊霊とかで、人を呪い殺すことが怨霊よ!」
「知るかっ!どーでもいいし、性質悪ぃ!」
「つーか、その書類、依頼書じゃねぇか。肝試しなんて口実だろ。本音は?」
今まで我関せずだった黒が突然口を開いた。
それに全員驚く。
「どうしたの黒。ゲーム最中のあんたが喋るなんて」
「エンドロールはトばせねぇんだよ」
「納得だわ。安心した」
「すんげぇ腹立つんだけど。言いてぇこと分かっても腹立つ」
「それでもあたしには頭が上がらない現実でしょ?肝試しに行く予定の廃墟なんだけど、何か異常に霊が出現してるみたいでね。その調査を頼まれたのよ。ついでにイベントのヒントにでもなったらと思って、肝試しでもやろうと」
「怨霊が肝試しぃ?聞いたことねぇよ。あ、終わった。取り敢えず次は別のゲームでもやるか」
黒は目の前に置いてある、二段式のジュエリーボックスを開き、名前順に並んだゲームソフトを見ながら悩む。
「おい、黒。その箱おかしくねぇ?」
隣にいた朔羅。
偶々黒のジュエリーボックスが目に入り、微妙に違和感を感じたので、直球で本人に聞いた。
「あ?何言ってんだてめぇ」
「それ俗に言うジュエリーボックスだろ。全然ジュエリー入れる仕様になってねぇじゃねぇか。何でゲームソフトが一枚ずつ並んで仕舞えるようになってんだ」
「これは俺がジュエリーボックスを改造してソフトボックスに進化させたんだ。何か文句あんのか」
「進化っていうのかソレ!?ってか、お前、ホント自分の趣味にはトコトン妥協なしだな!」
「ウチの子に愛情あるのは当たり前だろうが」
「子じゃねぇだろ!物だろ!」
「それで、肝試しなんだけど、今日の深夜0時にこの廃墟前に集合ね」
「話進めんな!勝手に決めんな!」
二人のやり取りを無視して話を進めた詠里に、朔羅は切れる。
「何よ。文句多いわね」
「ったりめぇだろう!そのまま話進めさせたら俺も肝試し参加ルートになるだろ!ふざけんな!俺はてめぇらの仲間でも、此処の社員でもねぇんだよ!何度言わせんだ!毎回巻き込みやがって!」
「嫌なら断っていいわよ。あんたの実家に呪いかけるだけだから」
「死ねっ!」
朔羅はガツンッ!と机を殴る。
いつもの事なので一人を除いては、全然気にしない。
ただ、ジャックだけは涙目でオロオロしていた。
これもいつもの事なので、皆気にしない。
「もう死んでるし。でも行った方が良いんじゃない?」
「あ?」
朔羅は詠里を睨む。
「この廃墟、肝試しするにはうってつけって事で、人間達がよく入るのよ」
「だからどうした」
「さっきも言ったけど、異常に霊が出現してるの。どんな異常なのか分からないわ。ただ、ほったらかしにしたら、死人が出る確率は高いと思うけど?」
「…」
「知ってて何もしないのは、見殺しと同じよ。獣医を目指してるって言っても、医学に変わりはないでしょ?それなのに、いいの?見殺しにしても」

ビキッ!

朔羅の額に青筋が浮かび上がった。
「てめぇ…肝試し終わったら覚悟しとけよ」
「冗談なんだけど…。まぁ、参加決定ってことで。社員は全員強制参加だからね。集合時間にはちゃんと廃墟前にいてね」
「あのっ、り、リタイアは?」
二人の一触即発に割って入り、恐る恐る聞く麻己音。
それに対し詠里はズバッと返す。
「全員強制参加」
「嘘だろぉおおおお!」
怖いのが苦手な麻己音は頭を抱えて叫んだ。
その様子を見た朔羅は、呆れからため息を吐き出した。
「まだ怖がってんのかよ。人外と仕事してる癖にこんなんでビビるんじゃねぇよ」
「いや怖ぇえよ普通に!言っとくが、人外つってもこいつらだぞ!怖いと思うか!?別次元の話だろ!」
「何しでかすか分からない恐怖なら断トツトップだけどな」
「ホント毎日ギャンブルしてる気分になるぜ。ってそれは、どうでも良いんだよ!」
「皆で固まって行くから大丈夫よ。それに…」
ニタァと嫌な笑みを浮かべる詠里。
「霊を容赦無くぶっ飛ばす朔羅」
「奴らに手加減なんていらねぇ」
当然のように言い放つ朔羅。
「元悪魔とは言え、とある特殊部隊隊長を務めていた黒」
「こっちはクリアしてるが、久し振りにこれもやりてぇし…」
未だにゲームソフトと睨めっこしている黒。
「神と妖怪の間に産まれた火夜」
「ただの狐ですよ、私は」
苦笑いしながら答える火夜。
「戦後時代に独眼竜として名を馳せた政宗」
「…」
無視する政宗。
「そして怨霊のあたし」
詠里の笑みが深まる。
その笑みに朔羅と麻己音は若干引いていた。
「何の心配が?」
「そ、そうですね」
その問いに麻己音は肯定せざるえない。
詠里の背後に言葉で表しがたい黒い何かがいる。
正直、黒より悪魔…いや魔王とでも言うべきだろうか。
朔羅は慰めるように麻己音に告げる。
「諦めろ。こいつらはそう言う奴らだ」
「ねぇねぇボクはボクは!?ボクにはないの?そういうの」
詠里に近づき、袖を引っ張りながらジャックは叫んだ。
「役立たずの癖に何を言っているの?顔洗って出直してきなさい」

ガーンッ!

容赦ない言葉にジャックはショックを受け、涙目になる。
「うぅ…ひどいよぉ…」
「以上!本日は解散!」
「ボクのことしらんぷり!?」
更にショックを受けるジャックはほっといて、全員会議室を出た。
廊下を歩きながら火夜は詠里に質問する。
「そういえば臾鎌はどうするつもりですか?ご一緒に同行して下さるのですか?」
「さぁね。連絡はしたけど、来るか来ないかは本人の気分次第でしょ。期待はしない方がいいわよ」
そう言いながら、詠里は仕事服であるMPの刺繍が入った黒衣を脱ぐ。
「あたしは今から仕事あるけど、20時までには終わるから、集合時間には余裕で間に合うと思う。もしあたしが遅れるようだったら皆に伝えておいて。ほざいたらぶち呪うって」
「かしこまりました」
火夜は綺麗に一礼した。
「じゃあねー」
笑顔で去って行く詠里を見送り、残った時間は趣味に使おうと火夜は自分の部屋に戻って行った。

廃墟に逝っきまーす

「さぁ、廃墟行くわよ!」
「あー、ちょっと待て。今、麻己音と黒がコンビニ行ってる」
「遠足気分っ!?ちょっと!コンビニって何処の!?結構遠い筈よね!?もういいわ!あの二人は置いて先に行きましょう。黒と一緒なら麻己音も大丈夫でしょうし。あたしがあの二人に連絡しておくわ」
詠里はそう言って、麻己音と黒にメールを送った。
「これでよし。さぁ!二人除いて行くわよ!」
「何でコイツこんな元気なんだよ。廃墟行くのによぉ」
朔羅は面倒そうに火夜に聞く。
火夜は苦笑いしながら返した。
「廃墟は霊が好む場所ですからね。故郷に帰ったような気分になるのではないのでしょうか?」
「いっそ此処に住めよ」
「いくら心地が良いと言いましても、此処にはいらっしゃいませんからね。彼女の求める者が。なので、住むことはないと思いますよ」
「求める者?」
「臾鎌」
「あぁ、そうか」
火夜の言いたいことが理解出来た。
詠里の臾鎌に対する執着は異常だ。
臾鎌のためなら喜々として自分の命を失うことも厭わないだろう。
朔羅は書類を確認する詠里を遠い目で見つめた。
「…よしっ!皆、今から突入するわよ。心の準備は良いわね?」
「ねぇねぇ?いまからあそこはいるの?」
ジャックが首を傾げて詠里に聞くと、呆れた表情で言葉を返される。
「あんたは朝何を聞いてたのかしら?殴るわよ?廃墟に入るために此処に来たのよ?蹴り飛ばすわよ」
「うわぁあああああああん!!えいりもおばけもこわいよぉおお!」
泣き出すジャックに全員が頭を抱えた。
が、しかし、泣き止むのを待ってられない。

ガシッ!

「いたいっ!」
詠里はジャックのヘタを問答無用で思い切り掴んだ。
「さぁ、とっとと行くわよ!!」
「先が思いやられるな」
「らしいと言えばらしいではございませんか」
詠里(片手にジャック)を先頭に、朔羅、火夜、政宗は廃墟へと入っていった。
そして、五人が廃墟に行ってから30分後。
「本当に先に行ったんだなあいつら」
コンビニの袋を持った黒は廃墟を見上げる。
隣にいた麻己音は詠里にメールを打つため、携帯を取り出した。
「今から入るって連絡入れておくか。霊が怖いとか言ってらんれねぇな」
自分の持っているコンビニの袋をチラッと見る。
「タイムリミットはかき氷が溶けるまでだな」
「溶けるまでにあいつらに渡さねぇと。つか、アイスの方が先に溶けんだろ」
「暑いと思って全員分×2のアイス買わなきゃ良かった。まさか先に行くなんて」
「メールに気づいたのが買い終わってからとか、完全後の祭りじゃねぇか。俺の分寄越せ。食べ歩きする」
「お前はどれだよ」
「ジャ○アン○コーン」
麻己音は袋から言われたアイスを取り出し、黒に渡す。
「急ぐぞ黒。アイスの灯火が消える前に」
「おい、俺のすでに灯火消えかかってんだけど」
黒のアイスは少し軟らかくなっていた。

失踪現象とアイスの寿命

麻己音と黒を置いて先に廃墟に入っていた5人は、現在二階の廊下を歩いていた。
「結構広いな」
「此処は元学校なのよ。随分前にお亡くなりになってるけど。廃学校よりあたしは廃ホテルの方が好きなんだけどね」
「それはお前だけだ」
「そんなことないわよ。世の中には廃墟マニアなんて者もいるらしいからね」
「見える俺からしたら全く気持ちの分からねぇ性癖だ」
「それはあんたが力強すぎて霊に襲われるからでしょう。のわりにはぶっ飛ばしてるじゃない。霊のこと」
「言っとくが、向こうが襲ってくるからぶっ飛ばしてるだけだ。一通じゃねぇからな。つーか、さっきから霊の気配感じねぇんだけど。本当にいるのかよ」
「そうなのよー。でもあたしが来た時には既に気配感じなかったわね」
詠里は腕を組んで考え始める。
「お前は一番最後に来たじゃねぇか。俺が着いた時には、火夜とジャックがいたな」
「あら、じゃあ火夜がジャックを連れて来てくれたのね。ねぇ、火夜」
詠里は後ろを歩く火夜に声をかける。
視線も少し後ろに向けた時、とあることに気づいた。
「あら、いない」
「あ?」
詠里が立ち止まったので、朔羅も止まって振り向く。
二人の背後を歩いていた筈の火夜、政宗、ジャックの3人がいない。
「…いつからいないんだろうな」
「さぁ?一階の保健室を出た時はまだ全員いたと思うけど」
二人は一瞬視線を合わせる。
目の前には薄暗い廊下。
「おい、これ…」
「大丈夫でしょ。あいつらだし」
「あいつらの心配はしてねぇよ。まさか、一人一人バラバラになるってことはねぇよなって心配だ」
「それは確かに危ないわね。作者が上手く一人一人の話を書けるのか」
「あぁ、それは確かに危険だ」
朔羅と詠里は頭を抱えた。

一方、アイスクリーム組である黒と麻己音は…

「アイスクリーム組って何だ」
「何の話ししてんの」
「天の声」
「んな電波野郎見たいなこと言ってないでこの状況を打破する方法を考えてくれ」
麻己音は目の前の廃墟を見た。
意気込んで二人で廃墟に入ろうとしたのはいいものの、見えない壁によって阻まれてしまったのだ。
「もう待ってれば良くね?」
「アイスの灯火が順々に吹き消されてんだよ!すでにバニラのカップが風前の灯火!」
「俺はもういらねぇからな。かき氷3つアイス2個も食ったんだ。ハッキリ言って気持ち悪ぃ」
「俺は3つずつの計6個だ!もっと気持ち悪いわっ!うっぷ」
麻己音は左手で口を押さえる。
「6個と5個で11個の消費か。おいおい…後9個も残ってんのかよ」
「くそっ!早く渡してぇのに!」
入口は目の前にあるのに、見えない壁が邪魔をする。
麻己音は焦る気持ちを落ち着かせるために、顔を上げた。
目を閉じ、深呼吸をしてから再び目を開ける。
広がるの闇。
それを唯一の光である月が照らす。
「屋上」
ボソッと麻己音は呟いた。
「あ?何か言ったか?」
「屋上だ!」
「は?」
嬉しそうに言う麻己音。
反対に黒は、わけが分からないというように顔をしかめる。
それに気付いた麻己音は慌てて説明しだした。
「屋上から中に入れば良いことに気付いたんだ!」
「俺にお前を抱えて跳べってか?」
「アイスクリーム組行くぜ!」
「だから、アイスクリーム組って何だ。くっそ面倒臭せぇ」
黒はそう言いつつ、軽く屈伸をしていた。
そして、麻己音を肩に担ぎ上げる。
「お前、人間の女に化けてんだよな?」
「あ?だから何だよ」
「いや、俺男…」
麻己音の言いたいことが理解出来た。
男である自分が、人外とはいえ女である黒に軽々と担ぎ上げられたのが嫌なのだろう。
「あぁ?たっく人間ってのは男だ女だ性別ってのにうるせー生き物だ。化けてんのは表面だけだっての。力は男に化けようが、女に化けよう変わんねぇよ。行くぞ」

ダンッ!

地面を強く蹴り、一回のジャンプで黒は屋上に辿り着く。
そして麻己音を下に落とす。
「いって!お前下ろす時くらい普通に下ろせ!投げ落とすんじゃねぇ!」
「うるせぇ。抱えて跳んだだけ有り難いと思いやがれ。さっさとアイス配って帰るぞ。俺は早くゲームやりてぇんだ」
「わかってるつーの。たっく。って、あれ?目的変わってね?」
「あ?」
「アイス配りに廃墟来たんだっけ?」
「…」
「…」
二人は黙ったまま見つめ合う。
「「何しに来た?」」
二人が同時に発した言葉。
しかし、残念ながらそれに答える者は誰もいなかった。

紳士は火、武将は壊、カボチャは泣

先程まで廊下を歩いていた筈なのに、突然周囲が歪んだと思ったら、いつの間にか理科室と思わしき所に立っていた。
廃校と言うわりには、薬品や実験器具はなくなっておらず、何故か綺麗に棚に並んで置いてある。
「誰か…いるのでしょうか」
火夜は側にあった机に触れた。
勿論、埃が手に附着する。
それでも数十年手入れをされていないとは思えない。
「…」
実を言えば、火夜はこの廃校の噂を聞いていた。
何でも一人の生徒が自殺をした後、不可思議な現象がこの学校を襲い、結果廃校となったらしい。
少年の自殺した理由はわからなかったそうだ。
火夜は薬品等が収納されている棚に近づき、引き出しを開けていく。
「!まだありましたか」
引き出しにあったのは大きなマッチ箱。
それを手に取る。
「小さい物が良いのですが、問題はございませんでしょう。後は無事に使用出来れば宜しいのですが」
火夜はマッチ棒を一本取り、火を付けようと試みる。
長い間放置されていたので、普通なら点く筈はない。

シュボ!

勢いよくマッチ棒の先に火が灯った。
「ふむ。やはり此処は異空間でございましたか」
火が点いたマッチ棒を持って、扉に近づく。

バチンッ!

手に持ったマッチ棒を扉に近づけた瞬間、独りでにマッチ棒飛んでいった。
まるで弾き返されるように。
床に落ちたマッチ棒は椅子の近くまで転がる。
その椅子の足は木で出来ており、引火の影響により徐々に、火が大きくなった。
「私を焼いても美味しくないのですがね」
火は火夜を囲むように燃えさかっていく。
見事に火に包囲された火夜は、右手でシルクハットを抑え…

パチンッ

指を鳴らした。
ブワッと火夜の周囲に青い火が出現する。
「残念ながら普通の火は出せませんが、狐火なら出せますよ」
シルクハットから手品の様に黒いステッキを取り出した。
カッ!と思い切り床をステッキで叩く。
狐火が外側に向かってグングン広がって行く。
そして、最後には火とぶつかった。
その瞬間、狐火は火を飲み込みそのまま消えて行った。

タタタッ。

誰かが廊下を走る音。
気配は知らない者ののだ。
火夜は相手を追ってみることにした。
スゥと教室を通り抜け、廊下へ出る。

ドゴォ!!

廊下へ出た瞬間、背後から大きな音がした。
何事かと振り返る。
火夜がいた教室から数えて2つ目の教室。
そこの扉が吹っ飛んでいた。
ドアの壊された教室から足音が聞こえてくる。
スッと静かに教室から出てきたのは知った顔だった。
「政宗」
自分の名前が呼ばれた政宗は、顔を火夜に向ける。
「…忍狐」
「違います。忍ではございません。火夜です。しかし、貴方様も閉じこめられていたのですね」
「お前もか」
「えぇ。攻撃を仕掛けられましたが、大したものではございませんでした。何者かが此処を走り去ったので、追跡しようと思い、教室を通り抜けてきた至大でございます」
火夜は政宗の足元に視線を向ける。
「 物を壊すのは感心しませんね」
政宗の足元には叩き壊されたドアがあった。
「急いで気配追うなら、壊した方が手っ取り早い」
「野蛮人ですか貴方は。」
火夜はため息を吐いた。
「残念ながら、気配を見失ってしまいましたね。 いかがなさいますか?気配の向かった方向に行ってみますか?」
「それしかない」
「では、行ってみますか」
これ以上会話するのは面倒臭いというオーラを感じ取った火夜は、早々に話を切り上げた。
気配はこの廊下を真っ直ぐに走って行ったが、階段を下がったのか上がったのかは分からない。
雰囲気が違えど、此処が二階というのは知っていた。
先程5人で回ったのだから。
火夜は一度行った場所の地理は全て把握でき、細かい背景や置いてあった物を記憶している。
「教室も確認しておけば良かったですね」
「…」
火夜の言葉を無視して、政宗は静かに後ろを向いた。
「どうかなさいましたか?」
問いかけると、政宗は小さな声で返事をする。
「音」
「音ですか?」
火夜は音に集中するため、目を閉じた。

『』

『』

都心にできたMPというテーマパーク。 正式的にはMyParkだが、社員は一名除いて人外。 そして別に巻き込まれ型人間一名もいる。 そんな奴らが繰り広げる日常とは? ギャグベースのドタバタストーリー第一章開幕です。

  • 小説
  • 短編
  • ホラー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-14

Public Domain
自由に複製、改変・翻案、配布することが出来ます。

Public Domain
  1. 人物紹介
  2. 壱・夏のイベント
  3. 廃墟に逝っきまーす
  4. 失踪現象とアイスの寿命
  5. 紳士は火、武将は壊、カボチャは泣