ヤクルト爆弾

ヤクルトが宙を舞う

みなさんは、あの、お腹の健康に役立つヤクルトが、爆弾になるところを、想像できるだろうか。

私は、それを見たことがある。


小学生の頃、給食に、ヤクルトがでた。
給食当番が配膳を忘れた誰かが、
『ヤクルトないよ〜』
と、叫んだのだ。

その時だ。給食当番の一人だったMちゃんが、
『いくよ〜』
と、ヤクルトを、教室の後ろから、前方へ向かってなげた。

ヤクルトは宙を舞い、床に激突して、乳酸菌が弾け飛んだ。

私は、その光景に衝撃を覚えた。
今まで、物を投げるな、とか、食べ物を粗末にするな、とか、割と厳しく躾けられた私には、ありえない光景だったのだ。

Mちゃんは、決して悪い子ではない。屈託がなく、元気で明るい、クラスの人気者だった。
その時も、
『ごめ〜ん』
と言って、何事もなく、給食の時間は始まった。先生も、確か怒らなかったと思う。

もうすっかり疎遠になってしまったけれど、Mちゃんのことだ、立派な大人になっているだろう。

今でも時々思い出す。
自分の固定観念に、ガチガチに縛られて苦しい時、周りからの圧力や大人の責任に、耐えられないと思う時。

ヤクルトが、鮮やかに宙を舞った姿を。

ヤクルト爆弾

ヤクルト爆弾

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-11

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted