【魔法世界の理】楽しき守り手

ツイッターで募集した「リプしてくれたフォロワーさんを自分の世界観でキャラ化する」の小説もどき化。
過去に書いた小説の世界にフォロワーさんに住んでもらいました。

楽しき守り手

魔力に満ちたこの世界には魔法をつかう者がほとんどである。
この世界に存在する魔法の能力は全部で4種類。
人口の31%を占める攻撃型魔法を得意とするアタッカー、
29%を占める守備型魔法を得意とするディフェンダー、
20%を占める補助型魔法を得意とするエイダー、
約5%の治癒型魔法のキュアーである。
そのどれにも属さず魔法をもつことを拒否した拒否者が15%存在する。

ディフェンダーと診断されたケントュスは隣町へと向かっていた。
隣町と言っても山を一つ越えることとなり、長旅である。
道中には大型の獣が潜む森もある。
ケントュスの防御型魔法であればなんとか切り抜けられる。
ケントュスは隣町へあるものを入手するために向かっている。
(周囲の町にはない一級品だ…!)
目指す町はケントキュスが生まれ育った町よりも大きく、多くの物が行きかう町。
煌びやかな衣、見たこともないような果実、秘伝の魔法書…すべてがそろう町。
町へ向かう途中に川があり、太陽の光が反射している。
川底の石や水草が見え、小さな魚が元気に泳いでいる。
(休憩するか…)
ケントュスは川の傍に座り、持参しているカップで川の水をすくう。
汚れた匂いはしない。透き通った綺麗な水だ。
念のため、持参している濾過機に注ぐ。
(高位なキュアーがいればこれも必要ないんだけどな…)
治癒型魔法を扱うキュアーは汚れを落とすこともできるという。
周囲には木になる果実もあり、休憩をとるのには十分な場所だった。
最近は日々暑くなっていく。水に入るのが楽しくなる季節がやってくる。
(…女の子たちの水遊び…)
しばらく休んでいると、少し遠くから激しい物音がした。
木の枝がグラグラとゆれ、熟した果実が落ちる。
ケントュスは果実をとると、音のする方へ歩きだした。

木々を抜けると、そこは低い崖となっていた。
崖の先には大地が広がり、低い草にエネルギー弾が撃たれた痕が残っていた。
1つではない。無数に広がっていることから誰かがここで戦っていたか修行していたことがわかる。
(どっちかっていうと、戦っていた、かな)
崖の下にある木の幹には大きな爪痕。大型のドラゴンがよく残す爪痕である。
あたりを見回すと、大型のドラゴンと戦う一人の少年がいた。
薄茶色の髪。高圧のエネルギー弾や雷の魔法。
身のこなしは軽く、纏う魔力は強い。優秀なアタッカーのようだ。
ケントュスは崖の上から見物することにした。
少年の戦い方を見てわかったことがあった。
少年は防御を知らない。攻めるばかり。
些細なドラゴンの攻撃も体を動かして避ける。
(防御璧を張れば済むことなのに…)
ディフェンダーのケントュスからすれば体を動かして避けるよりも防御璧を張った方が確実に生存率があがる。
少年が地面に足をとられ、転倒した。
よく見れば少年の足元には少年が残したと思われるエネルギー弾が撃たれたくぼみ。
ドラゴンはこの好機を見逃さなかった。
鋭い爪が少年に向かって行く。
少年はすぐに起き上がれず、身をかばう様に手を交叉した。
ケントュスに冷や汗が走る。
考えるよりも先に体が動き、崖を飛び降りる。
降りた時の衝撃は防御璧で相殺し、すぐさま少年を覆う様にドーム状の防御璧を張った。
ドラゴンはあたりを見回した。
ドーム状の防御璧の表面はざらつき、日差しの反射によりまるで少年がいなくなったように見せた。
少年の離れた木の下に少年に似た形の幻を召喚させる。
逃走用に使う手法としてよく用いられる。
幻に気付いたドラゴンは幻を少年だと思い込み、そのまま幻を追ってその場を立ち去って行った。
胸を撫で下ろしたケントュスは少年の周りに張った防御璧を解除した。
「大丈夫?」
「おう!ありがとう、助かったよ」
ニコッと笑う少年の表情はまるで花が咲いたようだった。
「俺、咲弥。いやあ、また腕でもなくしたら怒られるとこだったよ」
「俺はケントュス。…腕、ついてるじゃないか」
「親友が優秀なキュアーでさ、腕がとれるぐらいならまたつけてくれるんだ」
当たり前のように話す咲弥にケントュスは少々呆れた。
「そのキュアーも大変だな。ディフェンダーの力は使えないのか」
「んー…適正はアタッカーがほとんどでディフェンダーがほんの少しかな。特訓すれば使えるかもしれないけど…教えてくれる人もいないからさ」
話を聞いてみれば、倒したい敵がいるらしく、そのために特訓をしているという。
ドラゴンにも自ら喧嘩を売り、練習相手にしていた。
「じゃあ、俺はもう行くよ。隣町に用があるんだ」
咲弥に別れを告げ、先に進もうとした。
しばらくすれば日が暮れる。
大型の獣が住む森の手前に宿屋がある。そこまでたどり着いておきたい。
森を抜けるのには2日程度かかるため、多くの人が宿屋を利用する。
「え。待って。あの大きな町に行くの?」
「そうだけど…」
咲弥が言いづらそうに口をとがらせながら、視線をそらした。
「その…俺、大きな町の向こうの町からきてさ…その…大きな町の近くの森でやつらが結構血気盛んに…」
ケントュスは額に手を当てた。
咲弥の言わんとしていることを理解した。
中型のドラゴンと同様に森にすむ大型の獣たちを煽ってきたため、通行するのが大変だということ。
森を抜けなれば町にはいけない。
「俺だけじゃ厳しいか……咲弥、責任もってついてきてくれよ」
「はい」
「その代り、少しディフェンダーの力の使い方教えてあげるよ」
沈んでいた咲弥の顔が一気に明るくなった。
大きく頷き、咲弥はケントュスの横に並ぶ。
「ところで、ケントュスは何を買いに行くんだ?」
「…狩人娘×金髪王女の薄い本」
「なんだそれ?」
「尊いんだよ。女の子たちの夏はこれからなんだよ!」

それからケントュスは町に向かいながら、咲弥にディフェンダーの力の使い方と女子同士の愛について教えた。
この時にケントュスが教えた防御魔法が咲弥たちの戦いに必要になったことを彼は知らない。

END

【魔法世界の理】楽しき守り手

こんな感じの設定でした。
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楽しき守り手。
魔法世界に約30%存在する守備型魔法使い。
大型竜に立ち向かう天才攻撃型魔法使いと出会い、共闘する。
防御が全くできない彼に対して防衛法を教える。
後にこの教えが彼を救う。
女同士の愛についても語ったが、そちらは忘れられたようだ。

【魔法世界の理】楽しき守り手

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-07

Copyrighted
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