パーティーの招待状【1】
ここは、森に囲まれた小さな町。季節は夏、太陽の光を浴び、青々と生い茂った木々に囲まれた町には、一本の川が流れています。川は町の西側にあり、そこに架けられた橋を渡るとすぐに西の森の入り口に辿り着きます。一般的な町人たちの家は主に町の南側にあり、北側にはまるでどこかのお城のような、大きなお屋敷が佇んでいます。お屋敷の前―町の中央には広場があり、そこから町で一番大きな道が、東西へ伸びています。道を東へ十五分ほど進むと、やがて食料や生活用品など町の流通を支える、商店街が見えてきます。商店街は町の東側に位置し、三十を超えるお店が南北に軒を連ねています。
しかし、今日の商店街はいつもと違うようです。いつもなら、お客さんの声・店員の声・親子の声・カップルの声、早朝や夜中でもない限り、声の止むことの無い活気にあふれたこの場所が、まだ夕方だというのにしんとしています。ちょうど魚屋のお店の前で、猫が一匹、にゃあと鳴いている声がやけに大きく聞こえます。お腹が空いているのかもしれません。けれどいつまでたっても、いつも小魚を分けて与えてくれる、強面だけど優しいおじさんが現れることは無いようです。他のお店も今日は全て閉店しているらしく、まるでシャッター街宛らの雰囲気です。
そんな静まり返った商店街の一角に、赤い屋根で薄い黄色の壁を持つ、二階建ての家があります。そこは果物屋のようで、家の前には今が旬である西瓜や桃、さくらんぼのイラストが描かれた看板があります。ただ看板は端に除けられ、やはりお店のシャッターも閉まっています。そのシャッターに何やら張り紙が張り付けてあります。
そこにはこんな一言が書かれていました。
パーティーの招待状【1】