足し算

むやみに数字を計算するのはやめましょう、というおはなし。
小説家になろうさんにも掲載しています。
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まず10という数字を思い浮かべて欲しい。
これは4+6でもなければ、7+3でもない。
もちろん引き算でも掛け算でも割り算でもない。

あくまで5+5という足し算なんだ。
左も右も5が最大値。
実にバランスの取れた美しい足し算だとおもわないかい?

え? 君は4+6がいいって?
……仕方ない。じゃあ君はそれでもいいよ。
物好きな人だなあ。

え? 今度は君は9+1にしろって?
そんなにバランス悪くていいのかい?
じゃあ、君のはそうしておこう。

え? 君は7+7がいいって?
確かに7という数字は縁起が良いからね。
じゃあ、他の人から借りてきていいよ。

え? 君は3+3がいいって?
随分と控えめなんだね。
じゃあ、さっきの人に貸してあげてよ。


よし、それじゃあ計算は終了だね。
これで皆が望む形に収まったわけだ。


あ、そうだ、言い忘れていたけど
10という数字の中味はね
君の足の指の数なんだ。

もう元には戻せないけど
もう一度計算したい人は

自分の指を挽くなり
他人の指を足すなり

自由にすればいいと思うよ。

足し算

タイトルは「あしざん(足斬)」と読むとか読まないとか……

足し算

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-07

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