先生と生徒

 キーンコーンカーンコーン。

 小学校で始業を告げる鐘が鳴り、生徒たちがバタバタと教室へと入って行く。そんな教室の一つでは、国語の授業が行われるようだ。教室の生徒たちは、ちゃんと教科書を出して、座って静かに待っている子がいれば、後ろを向いたり立ち上がったりして、友達とおしゃべりをしている子もいて様々だ。そうしている内に、先生がやって来て授業が始まる。

 先生が教科書を読み黒板に文字を書いて、時折、不真面目な生徒に注意をしたりしている中、一人の少女が折り紙を折っている。休み時間から折っていたのか、まるで周りが見えていないかのように、夢中になっている少女の机の上は、だんだん折り紙でいっぱいになっていく。
 一方先生は、教科書に書かれた問題を生徒たちに解くよう指示した後、一度教室全体を見渡した。すると、一人の少女が折り紙で遊んでいる様子が目に入り、注意をするためにもと、その少女を指して言った。
「先ほど出題した問題を解いてみなさい。」
 いきなり自分の名前を呼ばれた少女はびっくりして立ち上がるが、折り紙に夢中になっていたため、もちろん、何を言われたのかさっぱり分からなかった。
 あたふたと、しどろもどろになる少女に、先生は軽くため息をつき、放課後に職員室に来るように注意をして授業を再開した。

 そして放課後。
 嫌々ながらも職員室へ現れた少女に、先生は授業をちゃんと聞くようにと注意を始める。
十分ほどそれを続けていると、少女がしゅんとうつむくのが見えた。先生は、仕方ないという風に表情をゆるめ、少女に尋ねた。
「折り紙は好きなの?」
すると、顔を上げた少女の顔がパアッと輝き、力強く答えた。
「うん!だぁ~い好き!」
 その後しばらく、少女は先生とそれは楽しそうに折り紙の話をしていた。

 「遅くならない内にそろそろ帰りなさい。」
少女の折り紙の話に耳を傾けていた先生が時計を見ながら言った言葉に、少女は不満そうだ。もっと、もっとお話ししたい。などと顔に書いてあるようで、苦笑をこぼした先生は、しっかりと少女の方を見て笑顔でなだめるように告げる。
「続きは、また明日ね。」
すると、少女の顔がまた輝き大きく頷く。
それから続けられた、ちゃんと勉強してからだよ、という先生の言葉に少し気まずそうに笑いながらも、
「さようなら!また明日ね!」
元気に挨拶をして、帰って行った。

 その時、外では日が傾き、きれいな夕日が学校中に差していた。

先生と生徒

先生と生徒

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-05

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted