私と彼女が出会ったのはまだ小学5年生の時だった。当時、私の通っていた学校は2年に一度クラス替えをする決まりだったようで5年の春、張り紙に記された自分の名前を見て絶望をしたのを覚えている。
 そう、私がこれから過ごす卒業までの間、今まで親しんだ友達が全くいなかったのである。とたんに自分の世界は孤独になった。
 それでも私はかつての友達に固執した。でもその友達はもう新しいクラスに馴染んでいたのだ。

「それと彼女がどう関係しているわけ」
「関係はしてないよ。だってただの思い出なんだもん」

 私は今まで親しく無かった人に声を掛けた。でもほとんどがクラスの中では上位の人達ばかりで私はついていけなかった。無理して友達をつくることを止めた瞬間、私に友達ができた。
 それは彼女ではなく彼女の友達だった。一ヶ月後、私は彼女と友達になった。

「最初はそんなに親しく無かった。でもなんで親しくなったのかは忘れたけど彼女と友達になったんだよ。っていうか、彼女が自分と同じクラスなのかも忘れたんだ。当時違うクラスかもしれない記憶だったのかもしれないんだって」

 一緒に語る友達も出来た。
 そんなとき、とある席替えで一人の男子と仲良くなった。彼は違う4年生のとき、私とは違うクラスで一度も話したこともなかった人だったし、彼の性格や言動からも自分とは無縁だったような気がしていた。

「その彼ともなんで親しくなったのかも覚えてないんだ。ただ、話していて凄くうまがあったんだ。といっても、ある国語のディベートの授業の時だけのことでね、語り合っていて楽しかった。彼、5年生のわりには思考が早熟でね、なんか別次元の人って感じだったんだよ。もしかしたら私の一方的な思いだったのかもしれない。でも本当にうまがあった。私の学年ってさ、なんか1組はよそのクラスよりもエリートっていう感じだったんだよ。実際、なんか1組ってそんな感じの空気醸し出してたし、あそこの女教師がさ、私の受け持ってるクラス、エリートなんですっていう態度がにじみ出てたんだよ。本当はどうだが分からないよ。でも化粧が濃かったなぁ」

 ただ、彼と話す事が好きだった。それだけが続いていた。でもあるとき彼女が彼のことを好きだといってきた。

「でもその記憶もあやふやなんだ。だって彼女、違うクラスだったし。きっと6年生の時の記憶が混ざってるんだよね」


 そう、6年生のとき、またクラス替えがあったんだ。だって去年別れた友達が同じクラスになったんだもん。私はとても嬉しかった。でも2年前のときのような中にはなれなかった。だってこのクラスには友達がつくりあげてきた人脈ができている。私はその人脈に乗る事は出来なかった。もう私のしっている友達はいない。私は動く事も出来ずただ受け身なものになっていった。別に全く関わらなかったっていうわけではないよ。ちゃんと友達とは交流していたよ。でもその先にはいけなかった。

「彼とも同じクラスになった。彼女とも同じクラスになった。そして彼女は彼に恋をした。私、好きな人ができたんだ、って言ってきたんだ。もちろん私は素直に応援したよ。だって友達なんだもん」

 だって友達なんだもん。だって好きな人なんだもん。応援するに決まってるじゃん。好きな人の幸せ願うことって当時の私にとってはとても嬉しいことだったし、恋愛なんて少女漫画の世界にしかないもんだと思っていたんだよ。私の好きな人と好印象的の彼とが恋人になるかもしれないって・・・そりゃ応援するって。するっきゃないじゃん。

「彼女のこと好きだった。女の子が女の子を好きになるなんて可笑しいって思うでしょ?でもね、当時は本当に彼女の事愛してた。ただ純粋に愛していたんだって。すごく愛していたんだよ。彼女が誰かを殺してくれって私にお願いそてくれたら迷わず殺す事が出来るくらいに愛していたんだ。」

 彼女と彼とが成就するために、少女漫画でやっていた恋のおまじないを二人でした。私も当時はとある男子に恋をしていた。ラブレターを送ったことがあった。そう、私達は恋をしていたんだ。

 そしてある日、私がとある委員会で外で活動をしていた時に彼女は彼に告白をした。
 彼女はその時を嬉しそうに報告していた。
 3階のひらけた人口芝生に通じる廊下にて彼女は彼に自分の事をどう思っているのかと告げた。内容は詳しく教えてはくれなかったが、私の事をそうおもっているの?好き、つき合って。
 結果彼女と彼は恋人同士になった。



「それが詩織と佐藤くんなわけ?それって本当にピュアなことだね」
「本当だよね。本当に彼女と彼は私の理想とする永遠の恋人同士だったんだよ」













 


 でも実際そんなうまくいくわけが無かった。6年のころ、よく彼女、彼、私、男といういかにも何かが起きそうな4人でよくつるんでいた。男は3年前くらいから一人の女子を思っていた。それはもう他人から見ても明らかなように男は女子のことを好いていた。別にそれはそれでよかった。だがいかせん月日がたつにつれ男が彼女にちょっかいをだすようになった。
 彼女は人当たりの良い、ちょっかいをだせば応えてくれるかまいたくなるような性格だった。弟がいるせいかちゃんとしているところもあるし、ぬけているところもあった。
 よく、彼と男で彼女の家まで行く事もあったらしい。疎外感はかなりあった。というか、月日がたつにつれ私を除くことが多くなった。いや、一緒にいるけど空気が3人と私とでは違ったのだ。
 席替えでは2列の席も担任の気まぐれで3列になり異性2人が異性一人を真ん中に挟むといったものに暫くなったこともあった。
 勿論、なんの運命か、彼女を挟み両脇に彼と男という席になって羨ましいという思いにもなった。いかせん、だって私は彼女と同じ班になったことがないからだ。なったこともあったけど4人で同じ班になりたかった。

 男はある日、自分の好きな人を彼女にだけ教えた。
 お前、女子のこと好きなんじゃないのか。なんで彼女に構うのか。
 
 どんどん疎外感が生まれたけれども、私は彼女と彼が好きだったし、この4人だけの世界が好きだった。男は正直、2人の幸せを願えばどっちかっていうと邪魔だったのは今でもうっすらとその感情を覚えている。
  
 そしてある日、男は彼女に好きだと告げた。



 中学生入学を堺に、私は3人と関わることはなくなった。同じクラスではなかったからだ。違うクラスになっても友達でいようね、なんて口では言っても私はよそのクラスに行く事はなかった。違うクラスにいくことは暗黙の了解で駄目な空気だったからだ。実際学年の先生同士、私達に違うクラスにいくことをあまりよしとしない方針だった。それもあったのかもしれない。
 私も私で新しい人と友達としての縁をつくることになった。同じ趣味を持つ人にも出会い、日々楽しい時間を過ごした。

(あるとき、友達から彼女をめぐって彼と男がギスギスしたらしい。彼と男は同じ部活だった。男は彼をいじめたらしい。彼は部を止め彼女と同じ部活に入ったらしい。)
(彼女と彼はその一年後別れた)


「本当に理想だったんだ。彼女と彼は。私の理想だった。その反面、彼を妬ましくも思った事もあった。私が男なら彼女を幸せにすることができたかもしれないっていう希望があったから。一度、修学旅行で好感ある彼の名前を出したあと、彼女に呼び出されてライバル宣言されたこともあった。まさかこんなことになるとはって思いと、浅はかな言動のせいで彼女を傷つけたことに嫌悪を感じてしまった。誤解は解けたと思うけど、あぁ、ずっと続くことなんてないんだって。中学時代、彼女と彼と男と関わることは一切なかった。そしてそのまま私は中学を卒業したんだ。」
 

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-04

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