セイフティネット

たきむらのろ

男は、走っていた。
草ひとつなく、綺麗でまっすぐ伸びる、ガラス張りのような道路の上を。
青空ながらも、吹きすさぶ空風は、男の横っ面を容赦なく叩いている。
そんな中でも、男は臆することなく、ただ前のみを見ていた。
その走力は、メロスが希望を失い、諦めかけた時の速力と変わらないほどだろう。
しかし、オートゴミ収集モービルやオート清掃ロボットに邪魔をされても、
(正確には、ぶつかったのは男の方なのだが)
メロスのように止まることなく、走り続けた。
 ”人は希望があると止まることなく、意外と走れるものだ。”
などということを、この男に考える余裕はなかっただろう。
男にとっては、目的地にたどり着くこと以外、頭になかったのだから。
そして、男はあるモニター広告の前で足を止めた。
  『1年後、あなたの人生は大きく変わります!』
”一年後、私は生きてなどいないだろう。”
息絶え絶えながらも、良くある広告の文句に、心の中で文句を言う。
モニター広告の案内は更に続いた。
  『毎月固定報酬支給。期間満了後は特別ボーナスあり。』
男にとって、この文言にも、魅力はあった。
ただ、この男の目的はこれではなかった。
男は今朝、橋の下で一晩のねぐらを共にした隣人?!が、他の人と話しているのを小耳にした。
その話も終わらないうちに、男は急いでこの場所へと駆けてきたのだった。
しかし、男の耳に待ち望んだアナウンスが流れた。
  『住居や食事も無料で支給されます。』
この言葉を待っていたかのように、男のおなかの虫が鳴いた。
「なんて俺は卑しいんだ。」
自分を揶揄する言葉をかけながら、僅かばかりに残ったプライドを慰める。
男は汚れた薄いグレーのコートの襟を立てて顔まで覆うと、手をポケットの中へと押し込んだ。
そして、大きなため息をつくと、モニター広告の横を通り過ぎ、ビルの中へと足を踏み入れた。
手に当たった10円玉3枚の小銭を握りしめながら。

******************

茂みの中、身をかがめ、男は辺りを伺っていた。
満月の夜、木々の間から月光が差し込み、辺りを照らし出していた。
どこからともなく、梟の鳴く声が聞こえる。
ここまでの道中は、それほど苦労することもなかった。
しかし、これから先は、敵の刺客も待ち構えているだろう。
男は脇に挿してある刀を握り直した。
茂みから出て、山道に再び立つと、すかさず山の方へ向かって走り出した。
さらしの上から羽織っただけの着古した着流しが翻る。
山中に近づくにつれて、石の大きさが変わり、古びた草鞋の裏に感触を強く感じ始める。
一刻前、男は小さな農村を後にしていた。
年貢に衰弱し、そして、別の理由によって、衰弱していた。
村の何人かが男と共にしようと申し出もあったが断り、一人で来ていた。
妻子あるものを共に連れていくことなどできない。
それに、男衆は多少いても、鍬を持ったことしかないものばかり。
男は、落ちても元は武者。
とても手助けができるとは思えない。
まして、相手は山賊。
大将は、男よりも大きいと聞いていたから尚更だ。

山道を中ほどまで来たところだった。
目の前に立ちふさがる者たちがいた。
20人ほどいるだろうか。
「おいおい、一人で来たのかよ。」
真ん中で一番前の男が声をかけてきた。
「要求されたものは持ってきたんだろうな?」
周囲の男たちが声とも取れない声を出し、薄ら笑いを浮かべる。
「どうやら目が悪いらしいな。」
「なにっ!」
「金品や米俵を持っているように見えるかい?」
山賊の口からはすぐに次の言葉は上がってこなかった。
「なら、お頭に刃向うのか?」
「頭まで悪いのか?あの村にこれ以上差し出せるものなんてあるわけないだろ。」
その後の山賊の言葉は決まっている。
「やっちまえっ!」
山賊は持ってた刀で男に襲い掛かった。
男は、ゆっくりと刀を抜き、深呼吸する。
夜風が吹き抜け、木の葉の擦れる柔らかな音が聞こえる。
「暑苦しい夜には、心地よい風だ。」
男は心の言葉を、口から夏の夜に漂わせた。
その言葉の霊が消えぬうちに、5人の山賊は地面に寝そべっていた。
ひきつる山賊たちの表情。
「通してくれるなら、切りはしない。」
男は、軽やかに述べる。
だが、彼らには戻る場所などない。
負けてアジトに戻ったとなれば、いずれにしても、お頭に殺られるだけだからだ。
「ひ、怯むな、い、行け!」
声を絞り出す山賊。
その後は、山林に逃げ出すもの、襲い掛かるもの、それぞれいたが、
ひと時のちには、男の前に立ちはだかるものは残っていなかった。

その後も、男の行く手に、同じような2,3の集団が待ち構えていた。
そのたびに男と山賊は同じようなやり取りを繰り返していた。
山頂に近い、山賊のアジトにつくころには、男の存在は既知となっていた。
山賊たちは刀を構え、男を取り囲み、睨み付けていた。
「さて、流石に骨が折れるかな。」
取り囲んだ50人ほどの手下を前に、男は値踏みしていた。
木々の開かれたアジト周辺では、月の明かりがより一層辺りを照らしている。
「きえぇーい!」
気勢と同時に、手下たちは男に襲い掛かった。
男の太刀筋は、山賊たちの殺気交じりの月の妖光さえも断ち切るように、
鋭敏に弧を描く。
ここまで来ると忠義あるものが多い。
10人が瞬く間に地に伏してもなお、気後れる者はいなかった。
男は、彼らに対し、この言葉以外に掛ける言葉はなかった。
「こいっ!」
その言葉の後、止まることなく2陣3陣と男に襲い掛かっていた。

残り10人程度になったころだ。
「お前は、何者だ。」
二回りほど大きな男が手下の一歩前に出てきた。
男より大きな男は、顔を男に向けることなく、下目使いで男を見る。
「お前さんが大将か。」
明るく照らす周囲の中で、陰影をつけられた無表情で武骨な顔立ち、
頭部に毛はなく、いかにも、悪役の大将ですという風貌だ。
「見たところ、その装い、もとは坊主か?山賊になるとは見下げたものだな。」
「お、おかしら。」
男のその言葉に手下どもの表情が引きつり、慌てた声で対象に声をかける。
大将は表情を変えることなく答えた。
「ふんっ!小さな寺の坊主をしていた所でどうなるというんだ?」
大将は、その顔立ちに反することなく、低く太い声で続けた。
「周囲の村からの奉納は微々たるもの。腹の底にもたまりはしない。生きるためだ。それにこの方が楽だろう。」
その言葉に、手下どもの緊張は緩み、嘲笑の声を上げている。
その様子を見て、男は呆れた顔で言う。
「意馬心猿。己のしていることは只の欲。生きるためにしかたないとは、村の人たちの思いこそまさに。」
男の言葉に、これまで動かない大将の表情が変わる。
「そうか。お前はそんなことのためにここまで来たというわけだな。ならば、死ね!」
山賊たちは男に襲い掛かる、最終局面。
疲労はあるものの、男の刃は劣れを知らない。
手下は見事に仰向けとなり、残るは大将のみ。
「木に縁りて魚を求む。お前は何も得られはしないよ、生臭坊主。」
「ぬかせっ!」
大将は、棍棒のような大きな斧を男に振り下ろす。
大きな音が山中に響き渡り、斧は地面へと刺さる。
辺りにの木々で眠っていた鳥や獣たちも、一斉に慌ただしくなる。
大将は斧を引き抜くと、二太刀目を男に向ける。
しかし、斧が男に届く前に、男の二太刀が大将へと届く。
辺りのざわめきが収まり、仁王立ちの大将は、ゆっくりと膝を落とした。
「ど、どうして、お前は。お前は、村の人間ではないだろう。」
死に際のひとことを残し、大将は膝立ちから地面へと倒れた。
男はその言葉に回帰瞑想を始めた。
「そういえば、どこから私はどこから来たのだろう。」


”パチっ”
小さくはじける音がした。
膝や体の前面が暖かい。
男はゆっくりと目を開けた。
囲炉裏の前に男は胡坐をかいて座っていた。
「だいじょうぶですか?」
目の前には、木綿着物の女性が座っていた。
「私は、眠っていたのか?」
「半時(はんとき)ほど。」
あれは、夢だったのだろうか。
それにしては、妙に足の裏に痛みの感触がある。
知らぬ間に戻ってきたのだろうか。
「私は、どこかから戻ってきたのか?」
男は女性に尋ねる。
「ずっとここにいましたよ。」
女性は淡々と答える。
確かに、よく見れば、刀は持っていないし、さらしも巻いていない。
「どうぞ。」
女性は囲炉裏にかけてある鍋から汁をよそうと男に手渡した。
男は手に取り、ゆっくりと胃に流し込む。
胃の底の方に暖かいものが届くのを感じる。
おなかが空いていたことが解る。
女性も自分の分を器へとよそい、口へと運んでいた。
その光景を見ながら、男は考えていた。
ここはどこで、いったいどこから来たのか。
そして・・・。
男は汁をすべて飲み干し、一息つくと、意を決して尋ねることにした。
「ところで、お前はいったい誰なのだ?」
女性も器の汁を飲み干し、囲炉裏の脇に置く。
それから、無表情のままで、これまでとは違う声色で答えた。
「腹ごしらえはできたわね!」
そういうと女性は立ち上がり、さらに大きな声で言う。
「さあ!行くわよ!」
男は唖然とするばかり。
「早くしなさい!」
女性の第二声のその迫力に、男は立ち上がった。
それを見ると女性は木戸の前に行くと再び男に声をかけた。
「こちらに早く!」
男が女性のそばに来ると、女性は戸を引き開けた。
すごい風と共に雪が吹き込んできた。
男は顔をそむけた。
吹込みが弱まると、男は再び戸の方へ目線と向けた。
女性は外へ一歩踏み出していた。
「ついてきなさい!」
男は仕方なく、後ろについて外に出た。
外は猛吹雪、数メートルしか視界はなかった。
『これでは凍えて死んでしまう。』
男は両手で両脇を抱える。
何やらごわごわとした感触。
そういえば、寒さを感じない。
男は自分の手を見た。
手には起毛のスキー手袋のようなものを付けている。
ズボンや上着は幾重にも着込み、頭にはフード、顔にはゴーグルも装備している。
完ぺきな防寒だった。
しかも、背中には何やら背負っている。
相当な重さだった。
気づけば、女性の服装も変わっていた。
女性は登山リュックを背負っていた。
男は自分の背中を見る。
男も同じものを背負っていた。
男の後ろの方には、先程までいたはずの小屋はなかった。
しかし、吹雪の中、男は既にそんなことは考えてはいなかった。
暴風音の中、女性の声が聞こえる。
「あと少しで、吹雪は収まるから、離れないように、ついてきて。」
女性は一言一言を力を入れて声をかけてきた。
男は言葉を返す代わりに、親指と人差し指で丸を作り、女性へと送った。
女性はそれを見てうなずくと、ゆっくりと前進を始めた。
男は、女性の作った深雪の中の通り道を追いかけるように歩いた。
風の音以外には、自分の呼吸音しか聞こえない。
ここまで既に3日登ってきた。
体力に自信のある男でも、疲労を感じずにはいられなかった。
男はとにかく必死についていくことしかできなかった。
10分くらい歩いただろうか、女性の言う通り、吹雪はかなり収まり、視界が少し開けてきた。
二人の目の前には、雪山があり、目標の山頂がやや遠めながらも視認できた。
五号目まで登ってきたのだと、改めて実感できた。
山頂を改めて拝め、男は気を引き締め直した。

七合目まで来た。
「あと3日で頂上まで行くわよ。」
女性は男にそう声をかけた。
ここまで5日。
これまでの半分もない。
あと3日という言葉に、男は再び覇気が戻った。
しかし、そこから先は岸壁登りもあり、それまで以上に大変だった。
雪山の中で響く、ザイルを叩くハンマーの音。
ロープを一つ一つにかけながら、またザイルを打ち込み、足場を確認する。
下を見ればその高さに身震いし、上を見れば先の見えない岸壁に気が遠のく。
これまでの5日間も、普段の生活と比べれば、長く感じる1日だった。
ところが、3日間の1日は、その5日間の1日の倍の時間がある感じた。
日常の何気ない1日と比べると…いや、比較のしようがない。
とにかく目の前の永遠とも思える作業一つ一つを、ただひたすら無言で続けた。
そんな男の唯一の幸せは、氷点下50℃にも達する環境下、エリザベス女王が愛したバラの洋庭より
美しいと思わせるほどの朝日に照らされた雪原の光景と、
ルイ14世の愛したリエーブルよりもおいしいと思わせる温かいインスタントコーヒーだった。
「初めての雪山登山、よく頑張ってるわ。」
女性が男に声をかける。
これまでにはない、やさしい声だった。
男は声を出すことなく、笑顔を作る。
手に持ったコーヒーを口に運びながら、しばし雰囲気に酔いしれた。
「さあ、あと少し、2,3時間よ。」
女性の掛け声とともに、二人は立ち上がり、最後の工程へと取り掛かる。
あとは、山頂へと昇るのみ!!
男は体中に痛みとだるさがあった。
それは登山工程10日を終える以上の疲労感だった。
しかし、今はそれ以上に、高揚感に突き動かされていた。
山頂部が目の前に迫ったころには、達成感と開放感も襲っていた。
「さあ、旗を立てて。」
女性が男に登頂成功の目印を手渡すと、男はしゃがみ、祈りをささげ、ゆっくりと旗を雪の中に差し込んだ。
立ち上がった男のゴーグルは感涙で曇っていた。
「さて、では、やりますか。」
女性がそう言うと、二人は大声で空に向かって叫んだ。
「やったー!!!」
そして、両手を空へと突き出した。


「はい、そうです。その姿勢で結構です。」
男は、その声に周囲を見回した。
水泳パンツ姿の自分。
後ろには人が並び、横には、スタッフと書かれた野球帽をかぶった人が立って声をかけている。
はだしの足、その親指の先は・・・・なにもない?!
高さ20メートルはあるジャンプ台のヘリに、男は両手を空に突き出した姿で立っていた。
目の前は見果てる先まで青い空と緑の森林がつながっていた。
ジャンプ台の下には、川の流れる音がしている。
男の足首には、ゴムがついたバンドが巻かれていた。
「ちびるなよ!」
「飛べなんじゃないのか?」
後ろから男を揶揄する声が聞こえる。
ここは、どうみても、バンジージャンプ?!
「はい。では行ってください。」
男の横にいたスタッフの手が、男の背中に軽く触れた。
「あ、ちょっと、まっ・・・」
男は軽く押されただけのその手に全く抵抗できず、男はそのまま真っ逆さまに川へと向かって落ちていった。
なぜにこんなに体のあちこちが痛い?!
なぜにこんなに体がだるい?!
なぜに私はここにいる?!
男は叫び声の代わりに発していた。
「いったい、な・ん・で〜〜〜〜」

******************

「今は、どのくらいにいるのでしょうか?」
「そうだな、今は第3階層くらいか。」
白衣姿の男女が無機質な白い部屋の中で、備え付けられた機器を確認しながら話している。
いくつも並んだ機器からは、何本ものコード。
そのコードの先は、吸盤型電極部やニードルなどがついていて、部屋中央の診療台へと向かっていた。
「第三階層ですか。あと三階層ですね。」
白衣の女性が呟く。
銀縁メガネが鈍く光り、白衣の男性は白衣女性を見る。
白衣女性は慌てて続けた。
「い、いまが一番大変なところですね。」
白衣女性の言葉に、白衣男性は当然と言わんばかりに表情一つ変えない。
ひと時の間が空き、白衣男性が再び作業へと戻ると、白衣女性は少し落ち着き、診療台へと近づき、つぶやいた。
「彼は耐えられるでしょうか。」
白衣女性は、悲哀とも自愛とも取れるような目で、沢山のコードが取り付けられた、診療台の上に寝かされている男を見た。
「耐えられなければ、報酬を受け取れなくなるまでだ。」
白衣男性は、壁に取り付けられたいくつものモニターへと目を向けながら、そのつぶやきとも質問とも取れない声に答えた。
モニターには、EEGやらPDM、BP、KTなどの文字がそれぞれに書かれている。
「彼が最後までたどり着けた場合には、何になるんですか?」
白衣女性は、白衣の男が答えてくれたことに気を許し、質問を続けた。
「この被験者が成功したなら、オリンピック選手、差し詰めフルマラソンだろう。」
「体を筋力アップするだけではだめなんですか?」
「飛行機があっても、操縦方法が解らなければ飛ばないし、トラブル時に冷静さを欠けば判断を誤り墜落もする。」
「フィジカルだけを鍛えても、一流アスリートは作れないってことですか?」
「そういうことだ。」
「でも・・・。」
白衣女性は身を乗り出すように言いかけた時、白衣女性のつま先が診療台下部の収納ボックスに当たった。
収納ボックスの扉がゆっくりと開いた。
中には、診療台の上に横になる男の私物である、グレーのコートが見えた。
白衣女性は扉を閉めながら、ゆっくりと続けた。
「でも、こんなことして、本当にいいのでしょうか。」
その問いへの白衣男性の答えは、冷たい視線のみだった。
医療計測機器類の電子音が三人を包み込む。
白衣女性も作業へと戻った。
しばらくののち、白衣の男女が作業を終えると廊下へと出た。
空気音の抜けるような音とともに、LABO20と書かれたドアが自動開閉する。
「1ヶ月寝ているだけで5年分なんて。副作用はないのでしょうか?」
通路へ出たところで、白衣女性は再び白衣男性に声をかけた。
男はため息とともに答えた。
「ないわけないじゃないか。」
「それでは、彼が失敗したらどうするのでしょう?後遺症とか、でるのですよね?」
「後遺症は勿論、生き残らない可能性もある。しかし、それは彼らも承知の上。」
「それはどうですけど、ただ、でも、そう、会社の方も、給与に経費も支払って何かあれば損害も大きくないのですか?」
白衣女性は、何とか言葉を見つけながら問いを続けた。
「あの被験者が失敗したところで、どうってことはないのさ。成功するのはたったの3%。」
白衣男性はメガネをはずすと拭きながら続けた。
「会社からは、ここから歩いて出た人にしか、給与も賞与も支給しない。それが契約内容。」
「それでは、もう申し込まれる人は、少なくなっていきますよね?」
白衣男性の言葉に、白衣女性は少し安堵したように聞いた。
白衣男性は、その言葉に嘲笑しながらメガネをかけ直すと答えた。
「それでも、“食住付きで、毎月固定報酬支給。期間満了後は特別ボーナスあり”なんて甘い言葉に乗り、先の事を考えずに承諾書にサインする被験者は、今までも止まることなく、これからも留まるところを知らないのだから。」
白衣男性はそう言った後、通路の先を見た。
「君にもわかるだろう?」
白衣男性の言葉に押されるように、白衣女性も目線を通路の先へと向けた。
二人の視線の先には、両側にLABOの文字と数字が書かれたドアがずっと先まで続いていた。

セイフティネット

セイフティネット

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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