【魔術師世界の理】国営図書館司書
ツイッターで募集した「リプしてくれたフォロワーさんを自分の世界観でキャラ化する」の小説もどき化。
過去に書いた小説の世界にフォロワーさんに住んでもらいました。
国営図書館司書
この世界には魔術を扱うことができる魔術師と扱うことのできない無能者がいる。
その区別は生まれた時に決まり、魔術師が無能者になることや無能者が魔術師になる例はない。
かつて、魔術師が人口の8割を占めていた時代に
魔術師嫌いの王が魔術師を次々と滅ぼしていった。
「殺人鬼でも医者でもなんでも構わん! 魔術師はすべて殺せ!」
魔術師は次々と姿を消した。
王の命令が下されてから10年後、
生き残った魔術師が王政を廃止させる革命を起こした。
しかし、時すでに遅く、無能者にとって魔術師は恐ろしい存在となってしまっていた。
魔術師たちは身を隠すように暮らし始めた。
かつて王の済む城があった国の中心部に位置する街には国営図書館がある。
収容人数15万人の広さを持ち、世界中の様々な本が集められている。
魔術師嫌いの王により、多くの国民には魔術師が怖い存在であることが根付いてしまった。
魔術師の3つの生き方に分かれていくようになった。
恐れられるならば、すべてを飲み込もうとする過激派。
昔のように共に共存しようと歩み寄り、過激派を抑える防衛派。
そして、魔術師であることを隠し、無能者に紛れて暮らす隠遁派。
草風は隠遁派であり、国営図書館の司書を務めている。
魔術師に関わる本は王によりすべて焼き払われた。
その焼き払った灰さえも汚らわしいとして、燃えカスや灰がつまった麻袋は国営図書館の地下倉庫に隠されていた。
草風は誰もいなくなった図書館で、地下へ向かう。
誰もついていないことを確認し、倉庫に入った。
全ての麻袋の口を開き、一つの麻袋から燃えカスを手に取る。
ほとんどが燃えてしまい、本であったことがわからない紙切れを手で包み込む。
次第に手の中で淡い光が輝きはじめる。
呼応するように麻袋の中で同色の光が瞬く。
草風が手を開くと、手の中の紙切れが空中に浮き、散らばっていた光は紙切れに集まっていく。
灰が、燃えカスが、紙切れが、少しずつ形を成していく。
やがて淡い光が収束し始め、光が消えるころには一冊の本として草風の手に戻った。
草風は紙を扱う魔法を得意としている。
紙に描いたものを立体として出現させることや一部の紙から全量を復元することもできる。
こうして少しずつ魔術師に関する本を復元させている。
「スペリスト用の教法…著者は、スクロス・ローズ」
指先で空中に描くことで魔術を発動するスペリスト。
この本はスペリストが用いる文字の教法のようだ。
少し中を見てみると、無能者が著者であることが分かった。
(ローズ…確かあの第一級魔術師の名もローズだったような…)
魔術師にはランクがあり、第一級魔術師は超一流と言われる分類となる。
隠遁派である草風は正しく査定されたわけではないが、平均的な第三級魔術師にあたると感じている。
草風は復元した本を地下倉庫の棚にしまうと倉庫を後にした。
翌日、司書の仕事をしながら、空いた時間を見つけては子供たちに絵本を読み聞かせる。
草風の描いた絵本にでてくる魔術師たちは希望と光に溢れる姿をしていた。
「ししょさん、まじゅつしはこわいんじゃないの?」
小さな子供が草風に尋ね、首を傾げる。
街に住む子供たちは全員が無能者であり、王の残した影響を受け続けている。
草風は優しく微笑んで、空中に文字を描くように指を振った。
「私が魔術師だったらもう図書館には来てくれないかな?」
半分の子供たちは首を横に振り、半分の子供たちが草風から視線を外した。
「ししょさんは怖くないもん。きっとこの絵本のまじゅつしみたいにすてきなの」
首を横に振った子供の一人が草風の絵本を抱きしめた。
「怖い人もいるけど、それは無能者も同じ。魔術が使える使えないには関係ないんだよ」
次の本を読もうとしたとき、受付から呼び出しの鈴が鳴った。
子供たちに一声かけ、受付に向かう。
そこには見かけない少年と蒼い髪の少女が立っていた。
「初めてのご利用ですか」
草風が二人に声をかけると、蒼い髪の少女が振り返って小さく微笑んだ。
「地下にある本を見せてくれないか」
その後、草風が町で起こる事件に巻き込まれたのはまた別のお話。
【魔術師世界の理】国営図書館司書
こんな感じの設定でした。
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魔術師のいる世界の国営図書館司書。
かつて魔術師嫌いの王様によって、魔術に関する本はすべて焼き払われた。
魔術師であることを隠し、
国営図書館の地下倉庫に少しずつ魔術の本を復活させたり、
絵本を描き、子供たちに魔術師が怖くないことを根付かせようとしている。