向日葵の夢

向日葵の夢

これから、ちょっぴり長い作品をかいていこうと意気込んでおります^ ^
の〜んびり、チャプターを増やしていく予定です❁よろしくお願い致します♪

プロローグ

「先月20歳(ハタチ)を迎えられた牧野(まきの)選手、結婚は何歳までと考えていますか?あと、初恋の思い出は何かありますか?」

はぁ…またか。最近こんな質問ばかりで、ため息が出る。友樹(ともき)が戸惑っていると、視聴者の方が知りたがっているので、と女子アナは意地悪気に笑った。
友樹は一日中練習した後、某テレビ局でのスポーツ番組のインタビューを受けていた。
現在、テレビや雑誌の取材に引っ張りだこの友樹にとって、こんな質問は定番中の定番。だが、友樹はこのような類の質問を少々苦手としている。いくらテレビとはいえ、野球選手なのにこんな質問もされるんだ…と、自分の思い描いていた野球選手のイメージとのギャップに戸惑いを隠せないでいる。
友樹は不満に思いながらも、少々興奮ぎみの女子アナの質問に淡々と答えた。

「いや、結婚とかはまだ考えてないです。正直、そんな余裕がないというか…。初恋ですか?….すみません、忘れちゃいました。」

友樹と女子アナの温度差が大きく、現場には少し微妙な空気が流れる。友樹の面白くも何ともない回答に、ちょっと不満気な表情になる女子アナは、そんな友樹から少しでも情報を引き出そうと格闘する。

「では、好きな女性のタイプを教えて下さい!」

………もう返す言葉もありません。
友樹は何とも言えず、ただただ苦笑いを浮かべることしか出来なかった。


「では、これでインタビューは終わりです。牧野選手、ご協力本当にありがとうございました。」

スタッフさんの一言で、機材を片付けたりする音が、ガタガタと騒がしくなった。友樹も椅子から立ち、上着に付けていたピンマイクを外してもらった。ありがとうございました、と頭を下げ、アナウンサーさんやスタッフの人たちに、形ばかりの挨拶をして部屋を出た。
カツカツ…と、夜のテレビ局の廊下に響く自分の足跡を聞きながら歩く友樹の頭には、二文字の単語が焼きついて離れない。

"初恋"

インタビューでは詳しく聞かれるのが面倒だったし、わざわざ自分から話すことでもないと判断した友樹は、あえて「忘れた」と言って誤魔化した。忘れかけていた記憶が、少しずつ蘇る。

「初恋…」

ため息混じりにふと漏れた一言は、どこか力無かった。頭の中を過ぎったものをかき消すように、友樹は帰宅の足を早めた。

向日葵の夢

向日葵の夢

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-01

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