京都愛犬家殺人連鎖
変わった申し出
1-1
その日の熱海に有る、坂田獣医病院は朝から大急がしで、、開院前に数人の人が愛犬を連れて待って居た。
受付の三原真理子が自動ドアを開けると我先に受付に来た。
「すみません、順番に並んで下さい」
先頭には年老いた老人が「太郎が散歩から帰ったら元気が無くて」そう言って柴犬を抱き抱えて訴えた。
「次も」
「次も」
犬は異なるがみんな同じ症状だった。
「先生、十人程の人は犬ばかりなのですが?」
「まあ、とにかく順番に」
診察室に柴犬を抱いて老人が入って来た。
「診察台に乗せて」
助手の妻坂田良子と助手の柳田塔子そして受付の三原真理子が、この坂田獣医病院のスタッフだ。
柴犬を診て「今朝散歩しましたか?」と尋ねた。
「はい、いつもと同じ所を同じ様にですが」老人は不思議そうに答えた。
「いつも行かれる場所とかは?」
「郵便局の向こうの公園には毎日行きます」
「ああ、ツツジ公園ですよね」
「そうです」
「お薬出して置きますが、この子が吐くかも知れませんね、注射もしておきましょう」
老人が礼を述べて診察室を出て行った。
次もその次も同じ症状だったのだ。
「誰かが農薬をツツジ公園に散布したのだ」と確信した。
坂田雄一は妻の良子に「立て札を立ててあげた方が良いな」と伝えた。
「そうですね、雨も降らないみたいだから農薬流れないわね」
柳田と良子が五枚の立て札を用意して公園に立てたのだった。
時々悪戯のつもりで農薬を散布する人が、自分の庭とか畑に糞をされて嫌がらせでする人、時には看板だけ書いて立てる人と様々なのだ。
犬は色んな物を拾い匂いの種類で嗅いで色々判断する。
雄は自分の場所をマーキングしたりする。
その為犬はこの様な農薬の被害に遭う事が多かった。
「秋の北海道は最高ね、天気も良いしね」野平美優が大きく深呼吸をして言った。
静岡県警の刑事野平一平と結婚して、女満別の空港に野平一平と野平美優は新婚旅行に来ていた。
数ヶ月前の事件の被害者として、美優と一平は犯罪者の罠にかかり結ばれてしまった経緯が有る。
「久しぶりだよ、のんびり出来るのは」
九月の下旬は一番食べ物が美味しくて、景色も良いから「一平さんは責任を取って私と結婚したの、じゃないわよね」尋ねる美優。
「何回言うの?もう百回以上尋ねているよ」
「何度も聞きたいの」
「はい、誰でもSEXしていました!これでいい?」
「違うでしょう、答えが」
「じゃあ、綺麗な身体だったから」
「それも、違うでしょう」
「何て答えれば良かったのだった?」
「初めから、美優が好きだったから、直ぐ判った!でしょう」
「そうだった、そう答えるのだったね」
「今夜は阿寒湖の温泉、明日は摩周湖、釧路の朝市、釧路湿原」
予定を話しながら、レンタカーで女満別の空港を後にした。
「普通は札幌とか、旭山動物園とか、函館、小樽運河とかに行くでしょう、阿寒湖も摩周湖も有名だけれど、何故?釧路なの?」
「実はね、思い出が有るのよ」
「どんな?」
「恋人とね、釧路湿原で旅行中に迷子になったのよ」
「へー、恋人と来たのだ」
「そしてね、ようやく見付けたのだけれど死んでいたの」
「水死?」
「違うのよ、殺されていたのよ」
「殺人事件じゃない、いつ頃の話?」
「最近よ」
「そんな事件有ったか?」
「うん、私が読んだ小説に!」
「な何だ?小説の話か、脅かすなよ」
「だから、一度見たかったのよ」
女満別空港から阿寒湖のホテルまでは約二時間、丁度良い時間にホテルに到着出来る。
本当は北海道一周がしたい二人だったが、中々仕事柄三泊四日が限界だった。
二人には初めての旅行だった。
静岡と美優の実家久美浜では余りに離れていて、二人はあの出来事以来SEXはしていなかった。
それは衝撃が大きすぎたのと、一平に何か後ろめたい気持ちが有ったからだ。
何度か久美浜にも行ったし、静岡にも来たけれど食べて、飲んで遊んで終わりだった。
もう半年以上が経過していた。
今夜は新婚初夜、美優も今夜は一平さんもその気に成るかな?とかロマンチックでエッチな想像をしていたのだった。
阿寒湖の旅館にもう一組静岡のアベックが宿泊していた。
間島順平60歳、その愛人小泉欄22歳、欄のお強請りで北海道に来て、今夜で三日目の夜だった。
間島は関西の建設会社の社長、白髪の紳士で一見建設業には見えないのだった。
小泉欄は湯河原のコンパニオンだ。
もう一年近く前、間島は会社の慰安旅行で熱海に宿泊した時に欄と知り合ったのだ。
欄は元々が関西の滋賀の生まれで、水商売で流れ流れて、今はコンパニオンとして湯河原のクラブに所属していた。
元々芸者は一人でもお座敷に出るが、コンパニオンは二人一組が原則に成っている為、中々一人のお客がコンパニオンを呼ぶ事は少ないのだった。
その欄が二度目に間島に呼ばれた時、同僚の小百合と二人で間島の部屋に行ったのだ。
通常源氏名で本名は言わないのだけれど欄はそのまま使っていた。
クラブは湯河原だが仕事は熱海、湯河原、箱根が主な仕事場だった。
間島は二人を呼んだが、小百合にお金を渡して三時間自由に遊んでおいで、但しクラブには内緒だよと言ったのだ。
所謂玉代とは別に三万も貰った小百合は、喜んで遊びに出掛けた。
二人でラブホでも行くのかな?でも今まで一度しか会ってないと言っていたのに、いきなりは欄も行かないだろうと思った。
私なら5~6万別に貰ったら考えるかも、そう考えて小百合は遊びに出掛けた。
欄は間島の変な申し出に警戒心が一杯有ったのだ。
しかし、間島は何もしない、唯、世間話をして、お酒を飲んで過ごすだけだった。
通常旅館ではSEXは出来ないから、一部させる所も有るが、客と芸者、コンパニオンとの館内でのSEXは禁止に成っていた。
三時間の間にもし誘うなら早く誘わないと無理よ、と欄は思っていた。
その時は10万円とふっかっけてやろう、それでも出したら行かないと仕方ないなあ、そんな事を考えながらビールを注いでいた。
「どうして?関西から来てコンパニオンをしているの?」不意に間島が尋ねた。
「何となく気が付いたら、此処に居たって感じかな?」
「家出?」
「違いますよ、最初は大阪で働いて居て、名古屋の栄町から此処よ」
「両親は知っているの?」
「父は何処に居るか知らない、お母さんは滋賀に居るよ」
「兄弟は?」
「叔父さん探偵さんみたいね、身元調査?」
「いやー、ごめん、ごめん、そんな気持ちはないのだよ」そう言って笑って欄のグラスにビールを注いだ。
「妹が一人、この瑠璃ね、可愛いのよ、勉強も私と違って良く出来るのよ」携帯の二人の写真を見せた。
「ほうー」
「今ね高校生よ!私はね高校卒でね、勉強出来なかったから、それもビリから数えた方が早かったのよ」
二人は欄の身の上話を中心に三時間飲んでお喋りして終わった。
「只今」小百合が恐る恐る襖を開けて、二人が何かしているのかもと思ったからだった。
「もう、時間なのだ」間島は腕時計を確かめた。
「何処にも出かけないで、話をしていたの?」小百合は驚いた様に言った。
「そうよ、何か探偵さんみたいだったよ、確か、建設会社の社長さんよね」
「そうだよ、間島って云います、小泉欄さんって云ったよね、電話番号とか教えてくれないかな?」
ほらほら、きたよ、次回からホテルで会いたいって云うのだよな、助平紳士め!と心の中で思った。
「いいわよ、社長の携帯貸して、アドレスもいれてあげるから」
「そうなの、じゃあ、頼むよ、携帯は中々使いこなせなくてね」
「でもスマホじゃん」
「会社で持たされるのだよ」
「この前の時50人程社員さん居たよね、結構大きい会社なのだね」
「いや、小さい会社だよ」
「お父さんってどんな人?」
「顔も知らない、妹が生まれて離婚したらしいからね」
「そうなのだ、嫌な事聞いたね」
「社長さんありがとうね、時間だから帰るね」
「ああ、ありがとう」
二人は嬉しそうに部屋を出て行った。
間島の瞳には涙がにじみ出ていた。
コンパニオンを呼んで話をして、酒を飲んで何故か涙が出る。
一月前初めて此処熱海で慰安旅行をしたのが、一か月後またこの熱海に来て居たのだ。
変わった叔父様
1-2
熱海の郊外のペットショップに泉田公平はフリーターで働いていた。
仕事は朝早い日と夜遅い日に別れていた。
今朝は早出の日で早く出ると、店の周りの掃除、店内の動物の点検が主な仕事だった。
店外の隅に段ボールが置いてあって、何かが入っている気配がするのだ。
箱を見ると、小さな子犬が一匹入れられて、公平は店内でミルクを飲ませて箱のまま置いていた。
店長の南田達が来て「これは?」子犬を見て尋ねた。
「あの!朝来たら店の前に捨てられていたのです」
「こんな犬どうするのだ、保健所か何処かに捨てて来なさい」
「でも野良犬に成りますよ」
「だったら保健所に」
「うちは、血統書付きの高い犬の店だよ、こんな雑種、何の値打ちもない」
「でも、可愛そうじゃないですか?」
「うちの店で犬を買った客が捨てに来る事も有るのだよ」
「そんな事を?自分が飼っているのを捨てて?」
「犬の下取りなんて聞かないだろうが?」
「はい」
「獣医さんのところにもよく、捨てに来るらしい」
「一度飼ったら可愛くないのですかね」
「高級な犬を飼うと、よく見えるらしいよ」
「そんなもんですかね」
「泉田も美人の方が好きだろう?」
「そりゃ、そうですが」
「まあ、兎に角、処分して来い」
そうは云われても可哀想で、こっそり店の裏に隠す公平だった。
店には高級なチワワ、人気のトイプードル、フレンチブルドック、ポメラニアン、豆柴、と座敷犬の人気が高かった。
テレビのCMで人気の北海道犬別名アイヌ犬も人気だが、中型犬なので庭の無い家では中々飼えなかった。
箱に入れられた犬も子犬に見えたが、雑種の小型犬の様だ。
公平は夕方こっそり家に連れて帰ったが、家はマンションと云う公団住宅で動物は飼えないのだった。
公団住宅の片隅に餌を持って行って、誰かに拾って貰えたら良いのに、「家で飼えないのごめんね、餌は持って来るから」そう言って家に帰っていった。
泉田公平22歳、母と二人暮らし、母民子は熱海の旅館の仲居をしている。
父とは公平が中学の時に離婚していた。
しかし父西村公一は熱海でタクシーの運転手をしているので、時々は顔を見るのだった。
公一はギャンブルが好きで母民子から離婚を切り出したのだ。
その民子の勤めている旅館が大城屋と云って熱海では中堅の旅館だ。
この旅館に毎月宿泊するのが間島順平だった。
今夜も間島は一人で夕方やって来て今回で三回目であった。
前回二回はコンパニオンを呼んでいたが、今回は二名の宿泊に成っていた。
「いらっしゃいませ」と迎えに番頭が出たが、間島は一人だった。
「今夜はお二人と予約では、聞いていますが?」と聞くと「二時間程すれば来るでしょう」そう言うので民子が部屋に館内をした。
「お風呂でも、先に入られますか?」
「そうだね、此処は露天風呂有った?」
「はい、屋上に有ります」
間島は今夜初めて小泉欄と泊まる約束をしていたのだった。
二回はコンパニオンとして呼んだのだが、何度も電話、メールの交換でようやく納得して、小泉は今夜大城屋に来るのだ。
初めて慰安旅行で小泉欄に会ったのは熱海グランドホテルの宴会場だったから、実際に会うのは四回目に成るのだった。
二回のコンパニオンとして呼んだ時は毎回小百合とセットで、小百合は三万円を貰って遊びに出掛ける。
こんな楽で楽しいコンパニオンの仕事は無いわね。
欄は特別綺麗でもないし、まあ、愛嬌は有るかな?身体もまあまあ良い方ねと思う小百合。
今夜辺りSEXかな?そう考えていたが、欄がいつもと同じで世間話でお酒飲んで終わりだったよ、と云ったのだった。
欄はメールと電話で一晩客として一緒に泊まって貰えないだろうか?
お小遣いは10万差し上げるから、普通は近くのラブホがお決まりなのだが、欄自体お客とSEXは殆どしない。
しかし、今回は間島の再三の申し出に、一度位良いかな、お金が魅力だった。
間島は五時から露天風呂にゆっくり入って、マッサージを呼んでゆっくりして、欄が部屋に来た時はマッサージの終わりだった。
今日は普通の若者の服装で、いつものコンパニオンのスタイルではなかった。
コートを脱いで薄手のセーターにミニのスカート、普通の22歳の女の子だった。
コンパの化粧でなく薄めの感じだった。
「早かった?」
「いいや、もう終わる」そう言って間島は起き上がって、「今日は良い感じだね、娘さんらしくて」欄を見て微笑みながら言った。
「そう?化粧薄いからよ」
「今の方が可愛いよ」
「そう、ありがとう」
助平爺さん、マッサージで頑張るつもりだわ、と心で思いながら、薬も飲んでいるの?
怖い年寄りいるらしいからね、友達のコンパの子、終わらなくて困ったって言っていたよね。
10万、元とらないでよね、色々な事が頭を巡る。
「欄さん、お風呂に入ってきたら?」
「食事も今夜は一緒だからね」
いつもはコンパだから、お酒以外は飲めないのだが、今夜はお客だから食べられるのだ。
「じゃあ、お風呂入ってきます」
普通は一緒に入るだろう?
此処の露天貸し切り出来るよと喉迄でかけたが、まあいいか、一緒に入らないのに態々誘わなくても、そう思って欄は一人で大浴場に行った。
「ここの、お風呂初めてだけれど、良い感じね」
大浴場には二人の叔母さんが入っていた。
欄に「若い娘さんは肌が綺麗ね」と云われて思わず、そりゃそうだよ叔母さん幾つなのよ、と苦笑していた。
本当は髪も洗いたかったが、また、汗をかくから後でもう一度入ればいいか、そう思い早めに上がった。
叔母さんが欄を見て「カラスの行水だね」と笑ったので、でも心で間島さんが待って居るから急いでいるのよ。
部屋に戻ると机には一杯の料理が並べられて、そこに仲居の民子が生ビールを持って来た。
「お風呂上がりには、これでしょう」間島がそう言って「乾杯」「乾杯」この叔父さん気が利くね、最高に旨いよ。
「さあさあ、一杯飲んだから、食事にしましょう」そう言いながら間島は刺身から食べ出した。
「欄さん、今夜は時間有るから、カラオケ行きましょうか?」
「良いけど、外に行く?」
「館内で良いよ、湯冷めするから」
「そう」残念そうに言う、知り合いのスナックに連れて行っておこぼれを貰おうと思っていたのだ。
「そうだ、酔う前に渡しておくよ」間島は封筒を差し出した。
お金だ「ありがとう」しばらく食事が進んで、仲居の民子が次々と料理を持って来る。
「欄さんはペット飼ってないの?」
「飼っているわよ、柴犬の雑種だけどね」
「そうなの?犬好き?」
「好きよ、本当はね、チワワが欲しいのよね」
「叔父さん犬好きなの?」
「好きって程じゃないけれどね」
「そうなの、私のマンションだとね、大きい犬は飼えないからね、」
「柴犬って、そこそこ、大きいのじゃ?」
「豆柴の雑種よ」そんな話をしている時に民子が天ぷらを持って来た。
「ペット買われるのですか?」
「いや、まだそこまでは話が進んでないのだけれど、どうかしたの?」
「いえ、私の息子がね、近くのペットショップに勤めていましてね、もし買われる、ならと思いましてね」
「そうなのですか?また用事が有ればね」
ペットの話は終わって、食事の後は館内のカラオケに二人は行った。
流石に建設会社の社長さんだ。
上手だ!宴会とか飲み会が多いから、覚えてしまうのだと間島は笑った。
欄も宴会で歌うから年寄り向きの歌も歌えるから、二人でデュエットも上手で間島は上機嫌で部屋に帰った。
部屋には布団が並べて敷いて有った。
欄はさあ叔父さんとSEXか、私の相手では多分最高齢じゃないかな?
「楽しかったね、今夜は!私はもう一度お風呂に入ってから寝るよ、先に寝てもいいから、鍵持って行くから大丈夫だよ」そう言ってお風呂に行ってしまった?どうなっているの?寝ていたら起こしてするの?
それとも、朝?不思議な叔父さんだ。
今までも一度も私の身体を触った事もない?
欄は今夜の出来事、そしてこれまでの事を思い出していた。
飼えば可愛い
1-3
数年前
間島順平は庭にいた子犬を見て「何だ?その犬は?」
「あのね、学校の体育館の裏に捨てられていたのよ」一人娘の高校生が言った。
順平には目に入れても痛くない程、愛しい娘だった。
「何故、連れて帰って来たのだ?」
妻早苗が「良いじゃないですか、子犬の一匹位」
「生き物は可愛い物だよ、お父さんも若い時は飼っていたが、死ぬ時が可愛そうでな、もうそれから飼ってないよ」と遠い昔を思い出していた。
子供の頃「お父さん、この犬賢いよ、学校からずーと付いて来るのだよ」小学生の順平が言う。
「お前が、何か餌を与えたのだろう」
「違うよ、頭を撫でただけだよ、可愛いだろう」
「その大きさからすると、大きく成る犬だな、足が太いだろう」
「子犬にしては足が太いよ」
「まあ、内は建設資材を置いているから、番犬には成るかな?」
「飼っても良い?」
「残飯でもあげなさい」
「有難う、お父さん」
順平は自分の名前をもじって「ジュン」と名付けた。
予想通り大きくなって、秋田犬の雑種だった。
賢くて順平の従順なペットに成った、しかし大きく成る犬に順平が散歩させて貰っている様な光景に両親も笑った。
有る夜忍び込んだ資材強盗に鎖に繋がれていた「ジュン」は無残にも金属の棒で殴り殺されてしまったのだ。
資材は「ジュン」の命と引き替えに獲られなかったのだが、順平の悲しみは幾日も続いたのだった。
娘が拾って来た犬を捨てろとも言えずに、飼い始めたのだった。
全くの雑種で小型犬だった。
娘が大学生に成っていつの間にか、散歩に朝は順平が夜は早苗が時々娘は相手に成るだけに成っていた。
それは彼氏が出来たから、上田友和は大学の一年先輩でクラブにて仲良く成ったらしい。
ある日「内の家ね、母も僕も犬好きなのだ」
「君は?」
「私も犬は好きよ、家に飼っているわ」
「そうなの?内の犬は凄いよ、チャンピオン犬の子供だからね」
「何のチャンピオン?」
「品評会だよ」
「ゴールデンレトリバーとトイプードル」
「君のわ?」
そう言われて「。。。。」
「子供だけでも凄い値段だよ」
「私の家のフルールは雑種よ」と答える。
「君の家社長さんだから直ぐに飼えるじゃない?良い犬」
「そうだけど」
「今度ね、トイプードル子供産まれるから一匹あげようか」
「えー、ほんとうなの?」
「母に話してみるよ、多分許してくれるよ」
「そうなの?」
「そんな雑種、保健所に持って行ったらいいよ」
「どうなるの?」
「新しい飼い主探してくれるか?。。。」と言葉を濁した。
上田の家は父が大学教授で母は習字を趣味程度に教えていた。
本当は自慢なのだが、主人の体面上だった。
家族みんなが犬好きで、弟は高校生で4人家族。
大城屋で間島順平は長い風呂から上がってきた。
小泉欄はまだ寝ては居なかったが、目を閉じて寝た振りをしていた。
何をするのだろう、この叔父さんは?いきなり襲いかかる?
嫌、違うな、もう飲んでいるから役に立たない、身体を触る?しかし何もしない、欄の寝顔を見て「欄」と小さな声で言っただけだった。
何?10万も出して何もしない、一緒に食事してカラオケ歌っただけ、変わった話は犬?たったそれだけ?何?ますます判らない欄だった。
そう考えていたらいつの間にか眠って、朝に成って間島は露天風呂に行く。
「欄さんも行ったら、朝は気持いいよ」
ほら?やはり朝だったのだ
「はい、行きます」二人は屋上の露天風呂に向かった。
「それじゃ、ゆっくりね」そう言って自分は男性用に入ってしまった。
旅館に云えば貸し切りで二人入れるのに知らないの?
しばらくして朝の食事をして「欄さん、今度は熱海じゃなくて他の場所にも行ってくれないかな?」
「えー、遠くに行くと私お店休まないと、それと豆君の世話も困るわ」
「ペットホテルに預ければいいじゃない?」
「結構高いですよ」
「お金なら出してあげるから、お願いしたい」
「でも。私、叔父さんと何もしてないし、手も握ってないのに、お金貰うの悪いわ」
「そうかな?それじゃあ、次から手でも繋ごうか?」
「何もしないで、私と話して、食事して、カラオケ行って楽しいの?」
「楽しいよ、一ヶ月が待ち遠しい位だよ」
「「変わっているね、おじさん」
「変わっているかい?」
「変わっているわ?」
「そう?どう変わっている?」
「私はね、コンパしているけれど、身体は売らないのよ、叔父さんと泊まるのが初めてなのよ、信じ無いだろけれどね」
「信じているよ」
「だって、叔父さん何もしないで大金使って、今度はもっと遠い所に行こうと云うから、目的何かな?って?考えたの」
「聞かないで欲しい」間島は感慨深げにそう呟いた。
「叔父さんが、それで良いなら良いけれど」
「本当はその髪ももう少し黒い方が嬉しいのだけれど」
「でも、コンパだからね、余り、清楚には出来ないわ」
「コンパ辞めれば?」
「生活出来ないじゃん」
「そうだな」
「叔父さんの、二号さん?」
「それは困る」
「でしょう、私も結婚したいからね」
「そうだよ、結婚して子供を産んで幸せに成らなくちゃ」
「叔父さんの話している事意味不明よ、時間だし帰るね、ありがとう」
「今度はもっと高級旅館に行こう」
「考えておくわ」そう言って小泉欄は宿を後にした。
しばらくして間島も熱海を後に関西に帰っていった。
翌日小百合が「どうだった、あの歳の男性って、女遊び慣れているから、それなりに良かったでしょう」
欄はこっそりと小百合に教えていたのだった。
「なーん、にも、無かったよ、お金は貰ったけれど、食事とカラオケだけよ」
「それって?10万も貰って?」
「何故?貴女よ、私でも良いのに」
「今度はもっと遠くに行こうって」
「何で?」
「店休まないと、って言ったら、お金出すって」
「変態?」
「そうでもないわ?唯ね、髪もう少し黒くして欲しいって」
「それだけ?」
「今度は、幾ら貰えるの?」
「判らないわ、」
「じゃあ、私マメの餌買いに行くわ」そう言って昨日教えて貰った仲居の息子が勤めているペットショップに出掛けた。
名前は凄い「ワールドペット、熱海店」と云う。
何か世界中に有る様な名前ね、小泉欄は身長160センチで細身、化粧をしていなければ普通の女の子だった。
店内を見回し、これが、チワワ、15万、きゃー、高い、パグ16万、パピヨン12万、高いのね、こんなの飼うのってお金持ちの趣味よね、高ければ可愛い訳じゃない。
「お客様、どの様な犬をお探しですか?」と店長の様な男が来た。
「見ているだけよ、高いのね、桁間違えたのかと思った」そう言うと急に態度が変わって「おい、泉田お客様だ、いつまで、メソメソしているのだ」そう言って叱りつけられて、目を赤くした泉田公平が欄の所にやって来た。
「いらっしゃいませ」と言ったが涙声だった。
欄は気の毒になったが、この人だ叔母さんの息子さんはと判った。
「こんにちは」と笑顔で言うと「僕は貴女の事知らないのですが?」不思議そうに涙目で見た。
「そうだったわ、あのね、昨夜お母さんに旅館でお世話に成ったのよ」
「母に、ですか?」
「息子がペットショップで働いて居ると聞いたので来たのよ」
「それは、ありがとうございます」そう言いながらまた涙ぐむのだ。
欄は自分のハンカチを出して「使いなさいよ、何か哀しい事が?」と尋ねた。
「はい、僕が飼っていた、と言っても、昨日この店の前に捨てられていたのですが、子犬が今朝、殺されていたのです」
「えー、殺された?」
「はい、朝餌を持って行ったら死んでいたのです」
「それは、可愛そうね、」
「朝、散歩の人が自分の愛犬に吠えて、びっくりして蹴り殺したらしいのです」
「そうなの、悪い人いるわね」
そう言ってまた泣くのだった。
「そのハンカチあげるわ、私豆柴の餌欲しいの」
小泉欄は餌を買って店を後にした。
「優しい人なのね」欄は公平の事をそう思った。
お嬢様
1-4
泉田公平は許せなかった。
子犬を蹴り殺した人を、自分の住む公団を通って、ツツジ公園に散歩に行く人が多い、そして糞尿の始末もしない飼い主が多い事が許せなかった。
死なない程度に農薬を散布してやれ、それがきっかけだったのだ。
坂田獣医病院が朝から忙しかったのは公平が原因だった。
しかし、犬には罪はない、そう思った公平は一日だけでその行為は止めていた。
公平はそれより、店でハンカチを貸してくれた女性が気に成った。
名前も知らない、唯、母が一度は会っているかも知れない、一度聞いてみよう、豆柴を飼っている。
20歳過ぎの少し茶髪の女の人、綺麗に洗って袋に入れて自分の引き出しに入れていた。
公平と母民子はすれ違いが多く、民子は夜の仕事で公平は昼、公平は気に成って母に電話で尋ねてみた。
しかし沢山の客で少し茶髪の20歳過ぎの子だけでは中々判らない。
客以外にもコンパから飲み屋の女の子、芸者、デリヘルまでその対象は余りにも多かった。
「他に何か?ないのかい?」
「犬を飼っているって話していた」しばらく考えて「それなら欄ちゃんだ、コンパニオン夢の女の子だよ」
「そうなの」公平の語尾は下がった。
コンパニオンは遊ぶ女の子のイメージが公平には有ったから、失望したのだ。
「何処の女の子?ハンカチ返さないといけないんだ」
「ハンカチ借りたの?」
「ちょっとあってね」
「コンパニオン夢の確か小泉欄って子だよ」
「ありがとう」
公平は休みの日にコンパニオンクラブを訪れた。
客には丁寧だが公平には「欄ちゃんの家は教えられないな」男は高飛車に言う。
「預かり物が有りまして」
「渡して置くから」
「いえ、お礼も言いたいので」
「夕方時間が合えば会えるよ」実に愛想のない返事だった。
そうだ、母に頼んで連絡先を聞いて貰おう、公平は民子に連絡した。
「いつ来るか判らないよ、旅館から聞いて貰えば意外と教えてくれるかもね」母に期待するしかなかった。
間島は欄に次回は伊勢志摩に行かないか?と言ってきた。
熱海からだと時間もかかるから「ちょっと、遠いのですが?」と言うと「伊勢志摩には真珠島が有るから、多少髪を黒くしてくれたら真珠を買ってあげるよ」
その言葉に「判った、行きます」と声が変わっていた。
大城屋が尋ねても個人の事だから電話とか住所は教えられないと、言われて民子はいつに成る事か?と思っていたが、その夜小泉欄は応援コンパでやって来た。
「叔母さん、こんばんは」
「判らなかったよ、髪は黒いし清楚な薄化粧で判らなかったわ」
「どう?似合う?」
「私ら、年寄りにはとても良いよ、いつもより可愛いよ」
「ありがとう」
「そうだった、うちの公平が世話に成ったらしいね」
「世話だなんて、」
「連絡先聞いて欲しいと言うので、お礼でもしたいのだろう」
「そんな事良いのに」と言いながら携帯のメモを民子に渡したのた。
翌日、公平は欄に電話を掛けて一度会いたいと話した。
欄は母親の民子も知っていて安心だから「いつでも、良いよ、来週は旅行だから駄目よ」と答えた。
熱海の駅前の喫茶店で会うことに成った。
公平は以前と印象が変わって、とても夜の仕事をしている感じには見えなくなった欄に好意を持ったのだった。
「もう、落ち着きましたか?」
「はい、でも可愛そうな事をしてしまいました、」
「泉田さんの家は犬飼えないのね」
「規則で駄目なのです、でも可愛そうで、連れて帰ったのです」
「普通はどうなるの?」
「保健所が回収に来て飼い主が現れるか、欲しい人がいたら、ゆずられるけれど、殆ど薬殺じゃあないかな?」
「わー、可愛そうね」
「飼い主のマナーも悪いですよ、最近は僕が勤めている店に高級な犬を買いに来て、捨てる人もいますよ」
「可愛くないのですかね?」
「これ、お借りしたハンカチと、新しいハンカチです」そう言って公平は差し出した。
「そんなの、安物なのに」包みを開けて、「これ、高いでしょうレースのシルク、イニシャルまで入っている」そう言って喜ぶ欄。
「僕の気持ちですから」そう言って二人はペットの話、仕事の裏話で打ち解けたのだった。
翌週、欄は新幹線で名古屋駅に、間島は改札で待っていて「遠いところ、ありがとう」と笑顔で出迎えた。
「いえ、いえこれで良いなか?」そう言って間島の前で一回りして見せた。
セミロングの薄めの茶色、光線によっては黒にも見える位の感じだった。
「とても、良い感じです、約束を守らないといけませんね」
「有難うございます」
「近鉄で一本だから」窓側の席に欄を座らせて間島は楽しそうだった。
「聞いてもいい?答えたくなければ良いけれど」
「何?」
「何故?髪の色とかに?」
「本当は服も買ってあげたいし、美容院にも行って私の思う様にしたいのだけれど、そこまで無理いえないからね」
「変な髪型とか、変な服装じゃあ無ければ別に良いわよ」
「ほんとうですか?」
「まさかメイドの格好とか?」
「そんな趣味はない」
「じゃあ、いいよ!」
「そう、でもオーダーメイドは無理だから、デパート行くか?真珠が似合う服買って髪型も変えよう」
「観光は?」
「明日だね」間島は急に嬉しそうに成った。
どんな服買うの?どんな髪型?いったい何?小泉欄の頭に洪水の様に様々な空想が浮かんだ。
駅に到着すると高そうな美容院に連れて行った。
美容師と何やら話して欄を座らせて、美容師は手際よくカットから、爪も切られてネイルが、鏡の自分は何処かのお嬢様に変身していた。
次は洋服屋さんに、今度も店員と話をして、店員が服を持って来て欄は高級そうな服に文句無しに着替えるのだった。
間島が支払いに行ったので「これって?高いの?」小声で聞いて「嘘-」と思わず叫ぶ程高かった。
普段自分が買う服なら何着買えるのだろう?
じゃあ、この髪も高いのかな?お嬢様スタイルだよ、これは?
「先程何か見ていましたね?」
「貴女様の写真ですが?」
「はあー」欄は意味不明だったが、今までの一連の間島の行動は?
自分が間島の娘さんに似ている?
そんな疑問が湧いてきた。
しかし、それは言ってはいけない様な気が欄はしていた。
間島は何かの理由?死に別れ、家出、行方不明、寝たきりの病人?
世の中には三人自分に似た人が居るらしい、私がその間島さんの娘さんに似ているのだ。
だから、娘に似せようと髪型を変えたり、服装を変えたりしていたのだ。
今私が暴露すると間島の夢は一瞬に消えてしまいそうだった。
こんなにお金を使うそして身体も求めない。
自分の娘を襲う親は居ないだろう、ようやく欄は間島の行動が理解出来たのだ。
敢えてその事には触れないで、子供で今日は過ごそう、そう考えたら欄は男と女を忘れて親子として接してみよう、そう考えたのだ。
勘定を済ませて、着ていた服を紙袋に入れて「間島さん、こうしていると、親子みたいね」と欄が手を組んで言った。
間島の目に光る物が見えた当たりだ!この人は私に娘を捜していたのだと確信したのだった。
「その服に合う、真珠を見に行こう」と言った声は涙声に成っていた。
真珠の島の様に、真珠の養殖から生産、日本の真珠生産の歴史が展示されてその一角に真珠の販売コーナーが有った。
「わー、凄い一杯」
「どれが良いか?判らないだろう」
「目移りしちゃって」
欄は値段のゼロを数えて「きゃー、高い」とかこれ綺麗ねとか見とれて居たら「お嬢様には、これがぴったりですよ」と店員が持って来た。
「試されますか?」そう言って首に着けて「鏡で見て下さい」鏡の中の自分がお姫様に成った気分だった。
「これとセットにされると良いですよ」そう言ってイヤリングを持って来た。
自分のイミテーションのイヤリングを外すと、店員が着けてくれた。
「どうです?お似合いでしょう」
「は、はい」
鏡の中の自分は自分で無い、昨日までの私と今日の私は同じ人?
「似合うね、それにしなさい」間島は簡単に言って「これで」とカードを手渡した。
欄は鏡の自分に見とれていて「さあ、旅館に行こうか?」の間島の言葉で我に返った。
「はい」間島の後に付いて出て行きながら「少し待っていて、トイレに」欄は慌てて店に戻って「すみません、今買ったこれ?って、幾らなのですか?」店員に聞いた。
店員は笑いながら「セットで120万でございます」欄は腰が抜けそうに成った。
120万、120万と何回も言いながら出て来たのだった。
二人の欄
1-5
間島順平は妻早苗と娘欄の三人家族で、早苗の不妊症の為に子供が出来なかった.。
早苗が35歳の時に欄が生まれ、結婚12年目だった。
順平には可愛くて仕方が無い一人娘だった。
昨年交通事故で妻早苗と娘欄を同時に失っていた。
その失意の底から一年、慰安旅行で名前も顔も同じ小泉欄と云うコンパニオンに会ってしまったのだ。
最初は自分の目を疑った。
唯自分の娘と異なるのは派手な化粧と服装だった。
顔、背格好、年齢まで一番びっくりしたのが名前だった。
源氏名で欄と名乗っていると思っていたが本名と聞いて、順平の心は高鳴った。
慰安旅行は沢山人が居るから、一度ゆっくり話をしてみたくて、熱海に二度コンパニオンとして呼んだのだった。
そして、話をしてみると、そんなに派手な感じも無くて話も普通だった。
順平は娘欄と遊んだ場所に一緒に行きたく成って娘の様な服装髪型をすれば、どれ位似るのだろう?
それが今回の鳥羽、伊勢の旅行だった。
娘の写真を見せて髪型を変え、服装を変え、鳥羽の老舗の旅館に親子と書いて宿泊したのだった。
育った環境が全く異なる二人の欄が順平には重なって見えていた。
欄も自分が間島の娘に似ている事を感じていたから「お父さんと呼んでも良い?」尋ねた。
こんな高い真珠を買って貰える何て思ってもいなかった。
「そうだな、親子かお爺さんだな」と順平は笑ったが、嬉しかった。
娘が付き合っていた上田友和は、間島欄に子犬が生まれたらあげるよと約束をしていた。
トイプードルの子供が生まれたと連絡が有った。
友和と欄は交際をして、上田の母親も間島が建設会社の社長なので、家もまずまず釣り合うと賛成だった。
上田の父は大学の教授をしていたから体面を重んじた。
欄は「友和さんが、チャンピオン犬の子供をくれるの、飼っても良いでしょう」家族に打ち明けた。
早苗は「うちにはフレールが居るじゃない、二匹も飼えません」
「でも、友和さんが、高級犬を欄の為にくれるのよ」
「貴女が拾って来たのでしょう、最近はお父さんと私が殆ど世話をしているじゃないの」と納得しない早苗。
「今度は高級犬よ、フレールとは違うわ」
「同じよ、フレールも可愛いじゃないの」
「可愛いけれど雑種じゃないの、今度はチャンピオン犬の子供よ」
「兎に角、二匹も飼えません」
早苗に言われて、後日欄は友和に「二匹は飼えないから駄目ってお母さんが言うのよ」
「雑種の方がチャンピオン犬より、良いのか?」
「もう、三年以上飼っているしね」
「誰かその犬育ててくれる人探してあげようか?」
「可愛がってくれるかな?」
「僕の友達に好きな人いるよ、君だからチャンピオン犬あげるのだよ、他の人なら母も絶対にくれないよ!子供よりも可愛いのだからね」
友和は欄に犬を飼って貰って母親と共通の趣味で仲良く成って貰おうとしていた。
母公子は大が犬好きで友和のお嫁さんは犬の大好きな人で無いと駄目よ、と日頃から話していた。
欄が母から子犬を貰って育てる事は、友和には一石二鳥だったのだ。
暫くして「お母さん、友和さんの家に子犬貰いに行くの、フレールは犬好きの人が貰って育ててくれるのよ」
「本当なの?中々懐かないよ、フレールも大人だからね」
「一度お母さんも友和さんのお母さんに会ってくれない?」と頼み込む蘭。
暫くしてフレールを乗せて母と上田の家に子犬を貰いに行く事に成った。
「母は帰りの車で、鼻が高いお母さんね、好きに慣れないわね」と印象が悪かった様だ。
「可愛いわね、この子犬」
そう話している横を友和の車が、フレールを乗せて走り抜けて行った。
「あれ、友和さんと、フレール」と欄が言うと、早苗が「あそこ左に曲がると保健所の犬預かる所が有るよ」と言った。
「嘘―――」蘭は驚いた。
欄は急いで車線変更して、追ったが信号が赤だったが夢中だった。
「フレールが殺される」そう叫んだ時、大型トラックに激突していた。
車は大破、二人は即死だった。
順平は全く事情を知らなかった。
娘の信号無視での事故、唯不思議なのはフレールが居なくなっていた事と、子犬の死骸が車の中に有った事だった。
暫くして上田の家を順平が尋ねたがお亡くなりに成り、友和も悲しんでいますと言われただけだった。
フレールの事を聞いても何も存じません、の一言だった。
その後は身の回りの事をして貰う為に、お手伝いさんが昼間に来るだけの寂しい日々を間島順平は過ごしていた。
小泉欄はその順平に心の明かりを灯したのだった。
上機嫌の欄は旅館でも親子の様に振る舞って、順平を満足させてくれたのだった。
翌日は鳥羽の水族館に、喜ぶ欄を見て目を細める順平だったのだ。
その日名古屋駅で別れた欄は、新幹線の中でマジマジとネックレスとイヤリングを見つめるのだ。
凄いよね、一流旅館にこの服も半端な値段じゃないわね、怖さすら感じる欄だった。
熱海に着いてそのまま、泉田公平に会いに、マメの餌を買うのも有ったのでタクシーで向かった。
「こんにちは」と欄が公平に言うと、公平はびっくり顔で「こんにちは」と言った。
「今日はどうしたのですか?まるでいつもと違う感じですね」
「それは、綺麗って意味?それとも変?」
「勿論、綺麗って云う意味です、別人の様です」
「そう?ありがとう、このネックレスも似合うでしょう?この服にも」
「本物に見えますよ、イヤリングも」
「何言っているの?本物よ」
「えー、本物なのですか?」
「当たり前でしょう」
赤福餅を土産に置いて欄は帰って行った。
今までの自分より数段綺麗なのだわ、化粧も今の方が会っているのねと思った。
気分を良くした欄は、公平の母親の勤める大城屋ににも行って反応を見ようと思った。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」と番頭が出て来て「お泊まりでしょうか?」
「いいえ、仲居の泉田さんに会いたいのですが?」
「どちらさまでしょうか?」
「何言っているの?コンパの欄よ」
番頭は驚いた顔で「本当だ、欄ちゃんだ!女は怖いね、見違えて何処のお嬢様かと思いましたよ」
そう言って民子を呼びに行った。
民子は欄を見るなり「どうしたの?綺麗に成って、それ真珠?」驚きの声をあげる。
「判る?」
「そりゃ、輝きが違うからね」
「宝くじに当たったのよ」そう言って笑った。
自分の化粧、髪型服装が、その日を境に変わったのだった。
その後も順平からは日に一日は必ず電話が掛かって来て、コンパニオンを辞めて普通の仕事をしないのか?と云う日が多かった。
逆にコンパニオンの指名は日に日に増加して人気に成っていた。
泉田公平とは週に一度位お茶を飲んで話をする関係の付き合に成った。、
それは公平の母を知っているのも安心感に繋がったのかも知れない。
間島順平は次の事を考えていた。
それは欄を成るべく娘に近づけて、あの事故の真相を確かめたかったのだ。
小泉欄と会うのは楽しいのだが、順平はあの娘が信号無視で事故に遭うなんて未だに信じられなかった。
初めは諦めていたが、今小泉欄を知ってどうしても今までの疑問を解き明かしたかった。
娘欄はそんな無謀な事をする子ではない。
何かが娘を。。。?その疑問と上田の家に自分が訪問した時の態度に疑問を感じていたのだった。
丁度、その当時順平は海外に出張に出掛けていて、早苗が子犬を飼いたいと娘が話している。
友和さんのお母さんが犬好きで下さるそうなのだけれど、フレールが居るから二匹も飼えませんと言ったの、でも蘭が納得しないと言った。
順平はまた私達が世話をさせられると笑ったのだった。
釧路湿原殺人事件
1-6
釧路湿原は北海道の東部、釧路川に沿って広がる日本最大の湿原。
釧路湿原を中心にした地域で、この湿原には他の地域で既に喪失している平野の原自然がそのまま保存されて、湿原全体を支配するヨシと散在するハンノキ林、蛇行する河川が構成する美しい自然美を見せている。
湿原の場所によって、動植物の特徴的な植物が見られ、特別天然記念物タンチョウを代表に各種の鳥類の他、キタサンショウウオ、エドカオジロトンボ、等貴重な動物が生息している。
東西最大25キロ南北36キロの広大な湿地帯である。
東京の山の手線がすっぽり入ってしまう大きさだから、その広さは広大だ。
ヨシ、スゲ、ミズコケ、の湿原に分布されて、地層の1~4メートルに泥炭層が敷き詰められて、その下に泥、砂、小石、貝の地層が有る。
西が高く東側に河川、湖、沼が多い。
一平と美優は湿原の展望台に来ていた。
美優は機嫌が悪いそれは新婚初夜が上手く出来なかったからだ。
「一平さん、疲れて居るの?」
「よく判らない」
濃厚なキスもスキンシップも出来るのに肝心のSEXが不発だったから、あの日以来SEXは二人には無かったのだ。
昨夜はついに「私が変な人達に陵辱されたから、不潔だと思っているの?」と言ってしまったのだった。
二人のムードは一気に悪く成ってしまったのだった。
「あれ?何?人が倒れている」と望遠鏡を見ていた美優が叫んだ。
「何処に?」
「あそこよ」と指を差した。
でもその方向には何も見えなかった。
「おかしいな?あの方向に見えたのだけれどね、」
「どんな感じ?」
「死体よ、釧路湿原殺人事件」
「何、言っているのだ、女満別に着いた日にも同じ事言って様な」
「あれは小説、今は本物」
「でも、見えないじゃないか?」
「でも?確かに男の人が倒れていた様な?」
「年齢は?」
「判らない」
その様な話をしたが、二人はそのまま湿原を探索して満喫するのだった。
阿寒のホテルに帰った二人に佐山から電話がかかって来て
「熱海の女性が釧路湿原で殺された。悪いが明日釧路の警察に行って話を聞いてくれないか?」
「えー、殺人ですか?」
「そうだ」
電話の最中に美優が「どうしたの?」とお風呂の用意をして、これから貸し切り露天風呂に行く準備をしていた。
「事件だ!君が昼間見たのは本当だった。殺されたのは女性だ」
「男の人だったわよ」
「明日、釧路の警察に行かないと行けなく成った」
「えー、つまんないな」
「お風呂に行こう」
美優の思いを察して、貸し切り露天風呂に向かうのだった。。
お風呂で「何故?駄目になっちゃったの?元気ないから新婚旅行じゃないよ!」
あの事件以来無かったSEXに不満顔の美優。
「そうだ、あの時元気だったのは、私が縛られていたから?それともよく見えたから?」
「判らないよ」
そう言いながら美優の胸を触る一平。
「判った、貴方もあの叔父さん達と一緒で変態なのよ」
「そんな、事ないよ」と言ってキスをするがでも元気は無かった。
「駄目ね、貴方が変態かテストしましょう」
お風呂を上がると部屋で美優が、浴衣の帯を持って「これで少し私を縛ってみて」差し出す。
「そんな事」
「いいの?軽くよ」
そう言って浴衣を脱いだ。
「胸だけよ」
「ほんとう?」
浴衣の帯で乳房を軽く縛ると、それを見た一平が元気に成ったのだ。
二人は久々のSEXが出来たのだった。
美優も一平も燃えて、あの事件の後遺症が一平に有ったのだ。
「良かったね、」と美優も一平も安心した様に眠った。
翌朝はもう普通のSEXが出来た事に、美優は精神的ショックから立ち直ったのだと思う。
これで本当のあの事件が終わったのだ。
そして本当の夫婦に成れたのだとしみじみと感じた。
それは自分に対する哀れみと罪悪感で、一平が結婚したのだと思っていたから、嬉し涙が出たのだ。
「どうして?泣いているの?」
「うん、嬉しくて」そう言って一平にキスをするのだった。
その後二人は釧路の警察に向かった。
「静岡県警の野平一平です」
「釧路警察の山本です、この女性は?」
「僕の嫁さんです」
「関係者以外は困るのですが?」
「僕達新婚旅行中だったのですよ、それで昨日嫁さんが望遠鏡で死体を見たと言うので、連れてきたのです」
「そうだったのですか?兎に角所持品を見て貰えますか?」
二人が見た物は熱海と湯河原の定期券、小泉欄と書いて有った。
「これ以外、所持品は無ですか?」
「有りませんね、今司法解剖していますのでもう少し詳しい結果が出るでしょう」
「嫁さんが昨日望遠鏡で見たのは男性だったと言うのですが?」
「男性の死体は有りませんね」
「死因は?」
「水死の様に見えるのですが?」
「じゃあ、また夕方寄ります、釧路観光でもしてから来ます」
「折角のお楽しみにすみませんね」
二人は釧路の町に観光に出掛けて行った。
泉田公平は小泉欄の化粧とか髪型、服装の変化に以前にも増して恋心を抱いてしまったのだった。
欄は間島の誘いには必ず応じるから、月に一度は旅行に出掛ける。
公平にはその行動が気になり始めていた。
それは自分とは時間が有る時に近くの箱根に一緒に遊びに行ってくれる関係に成っていたからだ。
「私ね、もうすぐコンパ辞めるかも知れないわ」
「どうして?凄い人気が有ると聞いているのに」
「そうなのだけれど、お母さんが帰っておいでと言うのよ」
「それって、滋賀に帰るの?」
「少しの間帰ってまた戻って来るかも知れないし、よく判らないのよ」
「僕の事は?」
「好きよ、動物好きで優しいから」、
22歳のフリーターでは中々生活出来ないのが現状だから、それ以上の事が言えない公平だった。
それでも、映画を見に行ったり、遊園地に行ったり、食事と関係は深く成っていった。
だから「今週の土曜、日曜は旅行なの?」と言われると気に成っていた。
間島とは三度目の旅行だった。
鳥羽の後、東京に行って、その時にまた服を買ってくれた。
次回はその服を着て京都に行こうと言ったのだった。
生まれは滋賀の余呉の田舎だから、京都は近いけれど行く機会はそう多くはなかったから嬉しかった。
今回の洋服も素晴らしいお嬢様ルックだった。
土曜日の朝の熱海駅に、まさか、公平が尾行しているとは、思ってもいなかった。
可愛い服に靴までお揃いの姿に、公平は何処に誰と行くのだろう?とホームに入って地下道を新幹線に向かう。
誰も同伴者がいない?新幹線のホームに(ひかり)が到着した。
あっグリーンだ、誰か中に乗っているのだ。
しかし欄が座った席の周りに誰も居ない。
車掌が切符を調べに来たので、入場券の公平は車掌に名古屋までの切符を買ったのだった。
「自由席は後ろか前ですよ」と車掌に言われて戸惑うのだった。
何度かグリーンに見に行ったり停車すると下車してないか調べに行ったり、大急がしの公平だった。
名古屋を過ぎても降りないし誰も来ない?
一人旅?幸い車掌も来ない。
そして京都に到着した時に欄は降りたので、慌てて公平も降りたが、誰もいない。
そして改札にも誰もいない。
公平は差額を払って欄の後を追った。
この日の待ち合わせは一時半に八坂神社の前で、タクシーなら15分程だからと言われていた蘭。
少し早く着くけれど良いかな、欄は八坂神社に向かうと公平も後を追った。
間島は友和に手紙を送っていた。
娘の友達を装って、友和さんに渡してと云われた物が有るのだ。
突然の交通事故だったので、今日まで渡そうか思案したのだけれど、もう亡くなって時間が経過したので、私が持って居るのも変なので渡したいと、
八坂神社に来て欲しいと書いたのだった。
元々京都の人間だから不思議にも思わず友和は来たのだ。
そこにタクシーから娘欄が亡くなった時の服装で現れたのだった。
幽霊
1-7
間島は朱塗りの門の後ろで様子を見ていた。
上田友和がどの様な反応をするのか興味が有ったからだ。
「友和、その汚い犬を早く処分しなさいよ、何か内のワンちゃん達に変な病気が感染しそうよ」、
「判っていますよ」そう言うと友和は欄と母早苗の帰ると同時に保健所に行ったのだった。
その日の夜ニュースで事故死を知ったのだった。
「友和、間島さんとは縁がなかったのよ、それより私のあげた子犬が一緒に亡くなったのが可愛そうで、可愛そうで、今夜は眠れないわ」と言ったのだった。
赤いバックを持っているから,目立ちますと手紙に書いてあったけれどどの人なのかな?
欄が僕に渡したい物って何?子犬のお礼かな?そんな事を思っていると、その赤いバックを持った小泉欄がタクシーから降りてきた。
あっ、あの人だと思った瞬間、身体が凍り付いた。
こちらを向いた小泉欄は、あの子犬を貰いに来た時の姿そのものだったから、欄は周りをキョロキョロしている。
友和は足が動かないがようやく近づこうとした時、公平がそれを遮った。
間島はその瞬間に欄を連れてタクシーに乗ってしまった。
あれはお父さんだよ、欄の葬儀の時に一度会ったから覚えていたので、何が起こっているのか友和の頭は混乱していた。
いきなり「小泉さんとどの様な関係の方でしょうか?」公平が友和に言うが「貴方、どなたですか?いきなり、何を言っているのですか?」
「小泉さんとの関係を聞いているのです、待ち合わせをしていたのでしょう?」
「小泉さんって僕は知りません、人違いですよ」
「いいえ、貴方は今日約束をしていたでしょう?此処で?」
「私は間島さんのお友達の北村真弓さんを待っているのです、変な事言わないで下さい」
「そうなのですか?すみませんでした」公平は謝って引き下がるしかなかった。
その二人のやりとりの中、間島と欄は京都の町に消えてしまっていた。
これで上田友和から何かのアクションがあるだろう、彼の心臓は破裂しそうになっただろうと思うのだった。
結局公平は高い運賃を使ったが、何の成果も無く熱海に帰っていった。
友和は「お母さん、今日幽霊を見たよ」自宅に帰って叫ぶ様に言った。
「何、言っているの、昼間から幽霊って、勉強の影響?」
「違うよ、今日欄から預かっていると、友達の北村真弓って人に会いに八坂神社に行ったら、間島欄さんが来たのだよ」
「馬鹿な話ししないでよ、その手紙見せてみなさいよ」
ワープロで書かれた手紙を見て「悪戯よ、これは?」と一笑したのだった。
母に「それより、習字の発表会に乗せて行ってよ」
「確かに、父親も一緒だったのだけれどね」そう言って友和は車を玄関に着けて母公子の来るのを待った。
年に一度文化会館の小ホールで自分の個展を開いて、生徒達に自慢するのが目的だった。
間島が今度は「欄ちゃん、お願いが有るのだけれど、この犬を抱いて、文化会館の小ホールを散歩して欲しいのだけれど」と頼み込む。
「可愛いわね、トイプードルの子犬ね」
「欲しかったらあげるよ」
「いらないわ、私マメちゃんいるから、でも可愛いわね」
「誰かに話しかけられても、笑うだけにしてね」
「何故?悪い奴を懲らしめる為だよ」
「そうなの?」
「これが終わったら金閣寺からホテルに行こう、明日は渡月橋、嵐山、欄ちゃんの好きな物買ってあげるよ」
「パパ、ありがとう」最近は順平の事をパパと呼ぶように成っていた。
順平はそう呼ばれて嬉しかったのだった。
「此処だよ、習字の発表会しているから、ぐるりーと回って出て来て、声かける人が居なかったら、もう一度頼むよ、此処からタクシーで金閣寺まで来て」
「判ったわ、何買って貰おうかな?」そう言いながら、子犬をカゴに入れて会場に入っていった。
中には子犬を連れた客が数人居て、習字、何か全く判らないわ、そう思いながらゆっくりと歩いた。
「可愛いわねぇ、トイプードルの子犬ね、私も飼っているのよ」と上田公子が声を掛けてきた。
犬しか見ていなかった公子が、少し離れて小泉欄の姿と顔を見て、血の気が引いてそして倒れたのだった。
「奥様、奥様、大丈夫」驚いて知り合いが言った。
「上田さん」
「先生」とかみんなが口々に言って駆け寄った。
これで良いのね、そう思った欄は会場を後に金閣寺に向かったのだった。
ようやく立ち上がった公子は「此処に居た、子犬を持った女の子は?」キョロ、キョロした。
「知りませんよ」
「貴女、見た?」
「いいえ」と言うのだった。
友和の次は私の所に出たの?幽霊?
「具合悪いので帰ります」公子は会場を後に帰ってしまったのだった。
金閣寺に着いた欄に「どうだった?」
「叔母さんが一人卒倒して倒れたよ」
「そう!ありがとう、その子犬何処かに引き取って貰わないとどうするかな?」
「私の知り合いペットショップに勤めているから、今、聞いてみるわ?」
「そうなの、それは有り難い、これ血統書、読み上げたら判るよ」
「幾らで?」
「幾らでもいいよ、その犬の役目は終わったから」
欄は公平に電話を掛けたが繋がらなかった。
ペットショップに電話をすると、「10万なら、引き取りますよ」と言われて、「パパこの犬って幾ら?」と思わず聞いてしまった。
間島は笑って、「欄の小遣いにしなさい、早く、コンパ辞めて欲しいな」と付け加えて言った。
「ほんとう、貰って良いの、今日のお駄賃だよ」
「パパ大好き!」と腕を握るのだった。
上田親子の驚き方はやはり何か有るのだと間島は確信したのだった。
間島と欄は京都観光をして、欄は犬と一緒に熱海に帰っていった。
そして三ヶ月間で良いから私の自宅に住んでくれないか?と頼まれたのだった、
欄はもう間島が自分を子供の代わりに満喫したいのだと判っていたから、来月から住んであげるよ、パパの子供としてね、と言ったのだった。
唯、問題は公平の存在だった。
彼にどの様に説明しよう?本当の事を話しても多分信じ無いだろう、突然消えるか?旅行に行くか?どれが一番良いだろう?
でも間島の叔父さんの娘さんは誰かに殺されたのかも?それでその真相を探っている。
私が娘に似ているから、あの倒れた叔母さんが犯人なのかしらね、そんな事を考えながら新幹線で熱海に帰ったのだった。
その日の内に子犬を引き取って貰って欄は自宅のマンションに帰っていった。
翌日「公平、お土産買ってきたよ」と電話をしたが凄く不機嫌だった。
「北村真弓って誰なの?」と聞かれて「その人、誰?」と欄が聞き返した。
「京都に行っていただろう?」
「何故?知っているの?」
「欄さんの事が気に成って。。。。」言葉を濁した。
「えー、まさか付いて来たの?最低ね」
「でも、毎月旅行に行くから気に成って、彼氏でもと思ったから」
「そうよ、彼氏と旅行よ、そうだ来月から同棲するかもよ」
「嘘――」
「コンパ休んで田舎に帰るのよ、お母さんの調子が悪いからね」
「ほんとう?」
「そうだよ、公平の事嫌いじゃないから安心して、心配なのね」
「明日の夜デートしよう」
「ほんとう?」
「それでね、マメ預かって貰える所知らない?」
「坂田獣医さん預かってくれるよ、高いだろうけれどね」
「そうなの、聞いてみるわ、じゃあ、明日ね」
京都の上田家では母公子と友和が「出たよ」、
「出ただろう、幽霊が?」
「本当だよ、私があげた、子犬まで持って居た」
「消えただろう?」
「友和の云う通りだったよ」
「私がびっくりしていたら居なくなったよ」二人は恐怖を感じたのだった。
三ヶ月契約
1-8
翌日、コンパの仕事を休みたいと事務所に話すと、引き留められたが、間島の家に来月から三ヶ月100万で行く契約に成っていた。
夜、公平と食事に行った欄は「少しの間会えないのを我慢してくれるなら、今から行っても良いわよ」
「何処に~」
「馬鹿ね、ホテルよ」
「ほんとうなの?」
「本当よ」
「その代わり三ヶ月は会えないわよ」そう言って郊外のラブホに向かったのだ。
「僕、フリーターじぁない仕事探すから、本気で付き合って欲しいな」SEXが終わった後公平は欄にそう言った。
「それって、結婚したい?」
「そう思って貰って良いです、今直ぐじゃなくて、二年後とかですがね」
「そうね、公平優しいから、私も好きよ、動物好きな人は好きだから」欄には久しぶりのSEXだったが、相性も悪くなかったからだ。
一平と美優は釧路の市内観光でも時間が無かったので、大半が市場での買い物に成ってしまった。
夕方警察に行くと、解剖の結果睡眠薬が大量に飲まれて居た事、外傷は無、SEXも形跡無し、血液型0型身長160センチ、所持品無しだ。
服装は白のブラウスにカーディガン、紺のズボン、装飾品は無、その結果を佐山に連絡して一平達はホテルに帰った。
「何故?男の死体が無いの?」
「見間違いで美優が見た男が小泉欄さんを殺したのだろう」
「それは違うと思うわ」、
佐山から電話で「小泉欄、22歳、湯河原のコンパニオン夢の所属で、もう三ヶ月の休暇期間を過ぎている」
「定期券が湯河原~熱海、小泉欄期限は先月で切れていますね、」
「佐山さん普通期限の切れた定期券だけ持って居るって変じゃないですか?」
「それは変だね」
「それとね、美優が男の死体を見たと云うのですよ、でも死体は女性なのですよ?見間違いだろうと云うのですが、美優は間違い無いと言うのです、死体の発見場所と美優が見た場所は殆ど同じなのです、どう成っているのでしょうね?」
「また、死体が発見されるかも知れないな、まあ、新婚旅行を楽しんで来いよ、すまなかったね」佐山も遠慮しながら言うのだった。
翌月小泉欄は大阪の豊中の間島の自宅を訪ねた。
立派な門に緑が庭に茂って「でっかい家」そう言いながらチャイムを鳴らすと「どちら様ですか?」とお手伝いさんの声。
「今日から来ました、小泉欄です」
「はいはい、ご主人様から聞いていますよ」ととびらの鍵が開いて中に入った。
内玄関まで少し歩いて、キヤリーバックを持って玄関に「こんにちは」と告げた。
中から出て来た60代のお手伝いさんが「あっ、」と驚きの顔に成った。
「亡くなられたお嬢様は双子さんですか?」といきなり聞いたのだ。
「えー、叔母さん、娘さん知っているの?」
「存じませんが、毎日写真は見ていますから、まあお上がり下さい」
応接室に通された欄も三人で写った大きな写真は目に付いた。
「本当だ、この服私持っている」と叫んだのだった。
お手伝いの山田千佳子がコーヒーを持って来て「ね、私が言うのも無理ないでしょう」と言った。
「はい、私も初めて見ましたから、びっくりしています」
「生まれは何処?」
「滋賀の余呉の田舎なのです」
「雪の多いところね、私は敦賀なのよ」
「近いですね、此処のお嬢様って亡くなられたのはいつ頃なの?」
「一年程前じゃないかな?交通事故でお母様と一緒に即死だったそうよ」
「えー、即死なの?」
「赤信号にお嬢様が突っ込んで、まるで自殺だったそうよ!何でも子犬を貰いに行っての帰りで、此処のご主人は海外に出張中だったみたいで、私が此処にお世話に成ったのは事故から二ヶ月目だったかな?」
「どんな子犬?」
「それは知らないわ?何でもチャンピオン犬の子供だと聞いたわ」
「高いのでしょうね?」そう言いながら先日ペットショップで引き取って貰った値段を想い出していた。
「そうそう、向こうの部屋にもお嬢様の写真飾って有るわよ、そこにも犬が写って居るけれど、あれはどう見ても雑種だと思うけれどね」
「見ても良い?」
「良いですよ、廊下の右の部屋よ」
欄はその部屋に行った。
電気を点けると先程よりは小さいが、間島欄が犬を連れてポーズを「あれ?この服も私待って居るわ」と小声で言った。
犬は雑種の可愛い感じの犬だった。
「叔母さん、この犬、今は居ないの?」
「私が来た時、犬は居ませんでしたよ」
「あの写真の服も私持って居るのよ、それに名前も同じ欄、顔も似ているし体格も歳もでしょう?びっくりね!」
「此処のご主人、貴女に娘さんを見ているのだね、可愛そうだよね、一人娘と奥様を同時に亡くしたのだからね」
「ほんとうね」
「私が来た時は殆ど喋らなかったけれど、最近はよく話しをする様に成ったのは、貴女のお陰だったたんだね」
「娘さんの変わりか?取り敢えず三ヶ月の約束だからお願いします」
「何て呼ぼうか?」
「欄で良いですよ、それの方がパパも喜ぶでしょう」
「そうね、じゃあ、そうするね」
「手伝う事有ったら言ってね」と欄は言って笑った。
公平は三ヶ月の我慢だそして三ヶ月の間に就職を探さないと、二年後には小泉欄と結婚するのだと決めていた。
今日はマメを坂田獣医病院に預けに行く事に成っていた。
獣医も豆柴の雑種だから、場所も要らないし簡単に引き受けてくれた。
でも三ヶ月は長いなあ、そうは思ったが、兎に角職安に行って仕事を探そう、それが欄さんと結婚する最低条件だと、昨日も母民子にその事を話したのだった。
坂田獣医病院と公平が勤めているワールドペット熱海の店長とは知り合いだった。
それも子犬の売買からそれ以外の事まで、飲み友達だったが公平はその事実をまったく知らない。
その夜も熱海の料亭に二人プラス二人、それは受付の三原真理子と柳田塔子である。
真理子は坂田の愛人で塔子は店長南田邦夫の恋人だった。
餌の紹介、子犬の売買でお互いが利益を得る関係に成っていた。
偶然坂田が真理子とラブホから出て来たのに出会ってしまって、それからの付き合いなのだ。
妻の良子は南田と提携して利益を得ているから、商売上の付き合いだと理解していた。
現実はお金持ちのペット好きから、お金を巻き上げるのが四人の共同作戦だった。
「南田さん、今日お宅のバイトの泉田君が雑種の犬を三ヶ月も預かってくれと持って来たが、どう云う事だ?」
「三ヶ月は長いですね」
「良い客なのでは?お金持ちでしょうな」
「そうですね、三ヶ月も預かると、凄い値段ですね」
「それも、雑種の豆柴よ、信じられないわ」
「血統書付きの良い犬が買えるわ」
「一度調べて?、お金を儲けましょう」
「取り敢えず、病気だと言って治療費でも貰うか」
「そうね」その後四人は別れてラブホに消えていった。
そして数日後、泉田に坂田病院から電話が有って、預かっている犬が病気で治療したので二万掛かりましたと連絡が有ったのだった。
南田店長が「泉田、おまえ坂田獣医に犬を預けているらしいな?」
「何故?ご存じなのです?」
「知らないのか?坂田獣医さんに餌も卸しているし、子犬の世話、交配と色々交流が有るのだよ」
「そうだったのですか?知りませんでした、その預けている犬って雑種らしいじゃないか?」
「はい」
「飼い主、金持ちだな?」
「そんな事無いです、三ヶ月預けたら、良い犬が買えるよ、勧めて売りつけたら?」
「可愛がっているから無理ですよ、今海外に行っているから話しも出来ませんから」
「そうか、海外旅行か、三ヶ月も?豪勢だな」南田は益々、商売に成ると考えたのだった。
公平は欄からカードを預かっていて、もしマメでお金が必要なら使って、公平の事信じているからね。
そう言われて暗証番号まで教えて貰っていたから、自分は欄に信頼されているし、愛されていると信じ切っていた。
怯える親子
1-9
夜帰った間島は小泉欄が来てくれた事を大いに喜んだ。
「もう判っただろう?小泉さんが私の可愛い一人娘にそっくりだと云う事」
「はい、ようやく理解出来ました」
「もう、今私が考えて居る事を説明しておきたい、もし嫌なら帰って貰っても構わない、もう私も愛する娘と妻を同時に失って生きる気力を無くしていた、その時君に会ったのだ」
「はい」
「二人は交通事故だったのだよ、即死でね、その時私は海外に行っていて留守だったのだよ」
「大変だったのね」
「娘は慎重な子だから、信号無視で赤信号に飛び込む様な子じゃないのに、赤信号に突っ込んで大型トラックと激突したのだ」
「。。。」
「車の中には子犬の死骸も有ったのだ、それが先日君にあげた犬と同じ種類の犬なのだ」
「あの叔母さんが倒れたのは、それね」
「この家にはフレールと云う犬が居たのだ」
「隣の部屋の写真の犬ね」
「そうなのだよ、事故と同時に居なくなったのだ」
「あの叔母さんに子犬を貰ったのね」
「多分そうだと思う」
「パパの奥さんって何処の生まれなの?」
「どうして?そんな事聞くの?」
「いや、何となく気に成って、もしかして京都生まれの京都育ち?」
「何故判ったの?」
「勘よ、昼間お手伝いさんが事故の現場が此処よって、地図で教えてくれたから」
「それと、どんな関係が?」
「だって、大きい通りだもの、普通自殺でも考えないと、、、」言葉を濁した。
「私も居眠りか、子犬を見ていたか?しか。。。娘は安全運転の子だから考えられないのだよ」
「だから私で試したのね?あの叔母さんを」
「実はあの叔母さんの息子と娘は付き合っていたのだよ」
「そうなの」
「君は知らないと思うけれど、八坂神社でその息子にも君を見せたのだよ」
「そうだったの?」
「知らない男がその息子に近づいて口論していたけれどね」
「それ、公平だ!」
「公平って?」
「私の事好きでその日、熱海から尾行していたのよ、その息子さんが私の彼氏と思って話しに行ったのだわ」
「そんな事が有ったのだ」
「まさか尾行されていたとは知らなかったのです」
「欄さんに来て貰ったのは、娘の事故の真相が知りたいのですよ、協力して貰えませんか?」
「無理なら、諦めますが?」
「パパが私に近づいたのには何か有るとは思っていましたが、いいわよ!協力するわ、面白そうじゃない、あの叔母さんが倒れたのが怪しいわよ」
「そう、ありがとう、ありがとう」順平は欄の手を握って泣きながら礼を言うのだった。
娘さんの事愛していたのね!可愛そうよね、一瞬で奥さんと娘さん亡くすとはね!と欄は考えていた。
佐山は小泉欄のマンションを捜索していた。
何か?DNAの鑑定も必要だが、実家の余呉の母親にも連絡しなければ、しかし定期券だけでは確定出来ない。
それと美優が見た男性は?
しかし小泉欄がこのマンションから居なくなってもう三ヶ月以上に成っている。
洗面台から髪の毛の付いたブラシを持って佐山は帰った。
これで小泉欄と一致すれば、母親を呼んで遺体も余呉の自宅に送って貰おう、死体の顔写真が識別出来なかったのだ。
それは油をかけて燃やされていたからだ。
間島順平は欄の協力であの親子の周りに欄を出没させて、恐怖を味会わせてやろうと考えた。
身体の体型は声も似ていたから電話でも恐怖を与えられると考えて、母親公子に習字を習いたいと電話をさせてみた。
最初はお手伝いが電話に出たのだが、間島と申します是非奥様にと云ったからお手伝いが「今頃間島さんが何の用なのよ」と欄の父親だと思い電話に出た。
「先生ですか?お習字を教えて頂きたいのですが?」
「どちらの?間島さん?」
間島建設だと思っていた公子は、態度が変わってそう言った。
「お忘れですか?間島欄です」と言ったから公子が「。。。。。。」声が消えて、顔面蒼白になって受話器を切ってしまった。
着信履歴が液晶に出ている。
また、鳴ると「わーーー」公子は電話から逃げ出した。
公子は昼間から寝込んでしまった。
友和が帰って来て「友和いよいよ、幽霊が家に電話を掛けて来たよ」怯えながら言った。
「幽霊が電話を掛けないよ」
「でもね、確かに欄の声だったよ、着信履歴見てきて、間島の家からだよ」
「嘘だろう、欄は一人っ子だし、今はお手伝いさんしかいないよ」
「見てきてよ」
「判ったよ」しばらくして「間島の家からだよ」友和も怯えながら言った。
「だろう、怖いよ、動物の祟りかな?」
「誰かの悪戯だよ、一度日曜日に線香でもあげに行ってくるよ」
「そうしておくれ、成仏してないのだよ」と怯えるのだった。
次の日曜日に一応電話をかけて間島の家に行く事にしたのだった。
お手伝いさんから聞いた順平は、聞き出すチャンスだと欄と作戦を練ったのだった。
日曜に友和はやって来て、お手伝いさんは休み。
「こんにちは、ご無沙汰しています」とチャイムを鳴らすと「ワンワン」と犬の鳴き声がするので、新しく犬を飼ったのかな?
「こんにちは、上田友和ですが」
「ワンワン」
「すみません」ともう一度言うと、後ろから「いやーー、いらっしゃい」と間島順平が声を掛けた。
「ご無沙汰しています、今日は欄さんにお線香だけと、思いまして」
一度も来てないのに、と順平は思った。
「新しく犬を飼われたのですね」
「いいえ、飼っていませんよ、私一人だから世話出来ませんよ」
「でも、チャイムの向こうから鳴き声が聞こえました」
「誰も居ませんよ、私が押しましょうか?」
「。。。。」
「ほら、何も無いでしょう?」
「僕が押したら、聞こえたのですが?」
「まあ、どうぞお入り下さい」
友和を応接に招き入れて「コーヒーでも入れます」と言って順平が立ち去った。
三人で写した写真が飾られていた。
友和が眺めていると「フレール、フレール」と写真の後ろから聞こえる。
「何-」友和は青ざめた。
「返して、返して」、
「あーーー」と応接を出た。
「どうしました?」順平が青ざめた友和に言った。
「今、応接で欄さんの声が」
「ハハハ、気のせいでしょう」と笑った。
「本当に聞こえたのです」、
「折角ですから、仏壇に」そう言われて仏間に順平と友和が、仏壇の中にフレールの写真が「あれ、あれ何ですか?」驚きながら尋ねる。
「娘が亡くなった日から居なくなったのでね、一緒に供養しようかと、思ってね」
「そうですか、」
「友和さん、コーヒーが入りました」と欄の声が聞こえた。
「わー」
「どうしたのですか?」
「今、欄さんの声が聞こえたでしょう」
「えー、聞こえませんが?私は聞きたい」
「そんな、今コーヒーって」
「友和君娘と何か有ったの?」
「何も有りませんよ」
「あの日から内では正確には二人と犬が同時に消えたのですよ」
「私は、母が子犬を差し上げただけで、それ以外は知りません」
「ワンワン、ワンワン」と外から聞こえた。
今度は順平が「あっ、フレールの鳴き声だ」と言った。
「僕、僕、もう帰ります、失礼します」と慌てて、転がるように帰って行って、欄と順平は大笑いをしたのだった。
「何かをしていますよね」
「あの驚き方は普通じゃないからね」
「次、何するの?」
「友和の学校に行って、彼の友達に会って欲しい、欄のアルバムにクラブのメンバーが載っているからね」
「面白そうね」
「直ぐに消えないと尻尾掴まれるからね」
「判った」
欄は楽しそうだったが、順平は何とか娘の敵をと思っていた。
公平は南田に問い詰められて、欄の事を話してしまった。
湯河原のコンパがそんな大金を持っている事はおかしい、坂田に何かお金の匂いがしますね、と相談をしていた。
あんな雑種に大金を使って預けるには、何かもっと儲かる事が有るのだと、公平はマンションの鍵も預かっていた。
部屋の空気の入れ換えを頼まれていたから、しかし公平の行動を柳田塔子に監視させていた。
塔子が公平に近づいてマンションの鍵を盗もうとしていた。
それはあの部屋に何か金ずるが有ると思ったからだった。
公平と塔子は面識が有るから簡単に話が出来た。
スナックに誘い睡眠薬を飲ませて鍵を盗む事は造作も無い事だった。
古いマンションの鍵だから型さえ取れば直ぐにコピーが作れたのだった。
殺された二人
1-10
「一平、お楽しみ中か?」
「美優さんが怒るから、事件の話しは止めましょうよ」
「いや、これは緊急報告だ、あの遺体は小泉欄じゃない」
「そうなのですか?」
「まったく違う女の遺体だ」
「誰なのですか?」
「それが判れば、事件は解決だろうが、新婚ボケか?」
「佐山さん、結婚は良いですよ、僕は幸せです」
「アホかお前」
「美優さんは全てが良いですよ!」
そんな電話をしていると美優が髪を乾かして来て「何が全て良いの?あっ、この電話佐山の叔父さんでしょう、私の裸見ているのよ、いやらしい!」
「と云う事で切ります」
「待て、まだ話が有る」
「小泉欄は確かに北海道に行っている、それだけだ、まあ楽しめ」そう言って電話が切れた。
「一平さん、もう明日の夜は帰るのよ、今夜もね」そう言ってキスをしてくる美優だった。
美優の身体も性格も最高だった。
一平は一連の事件の犠牲には成ったが、最高の嫁さんだと思っていた。
美優にも初めてSEXした男性だったのだから、元気に成って良かったよ、一時は病気かと心配したのに、その後はお互いが満足していた。
友和の学校に欄は出没して、一層友和を恐怖に陥れたのだった。
合い鍵を手に入れた塔子は、欄のマンションに忍び込んだがめぼしい物は何も無かった。
適当に持ち帰ったのだったが、ガラクタが多かった。
何処から金を貰っているのだ。
公平もカード以外全く知らないから、南田に言われても答えられなかった。
そんな頃、欄が「この仕事終わったら北海道に連れて行ってよ」
「何故?北海道なの?」
「私、一度も行った事無いのよ、だから行きたいの」
「北海道も広いよ」
「そうね、知床、阿寒湖、摩周湖良いな」
「そうだね、秋の北海道は良いよね、決着付いたら行こうか?欄とパパで」
「うんうん」小泉欄は嬉しそうに順平の腕を握った。
「私ね、今日昼間、娘さんが亡くなった場所、ネットの地図で見ていたのだけれど、友和って云う奴、保健所に行こうとしていたのじゃないかな?」
「保健所?」
「要らない犬を預ける場所よ」
「えー、そんな所が有るの?」
「野犬とか飼えなくなった犬を預かって飼い主を捜すが建前だけれど、殆ど薬殺するのじゃないかな?」
「奥さん京都生まれの京都育ちでしょう、だから判ったのかも知れないわ、フルーレを友和が直ぐに連れて行った?それを早苗が欄さんに教えていた。欄さんはフルーレが殺されると慌てて追った、それなら話しが判るわよ」、
「欄、賢いな、私は一年判らなかったよ」
「灯台元暗しって言うじゃない、そんなものよ」
「彼奴が犬の鳴き声に怯えたのも判るな」
南田は公平に欄が三ヶ月も何をしているのか?そしてお金は誰が出しているのか?それを聞き出そうとしていた。
余程良い金脈だと思ったのだ。
預かっている犬を病気だと云って一度呼び戻して問い詰めようと計画するのだった。
「欄さん、マメの具合が悪いので、一度帰って来て欲しいの」と言ったのだった。
「判ったわ、一度公平にも会いたいしね」と公平には嬉しい言葉が聞けたのだった。
その夜欄は「昼間の話し嘘でしょう?」と公平に電話をしてきた。
それは三ヶ月間絶対に電話はしない約束だったから、公平は欄に事情を話してマメを預けている金額の事、眠らされて合い鍵を作られた事、坂田獣医と南田が仲間で公平は脅されて居る事を話したのだった。
「一体何が?」
「明日話すよ」欄は電話を切って、間島に相談をした。
「変なのが乱入してきたな?」
「でも、使えるかも知れませんよ」
「あの上田の馬鹿親子懲らしめるのに?」
「明日帰って嘘の情報流しましょうか?」二人は段取りを話し合った。
私達は北海道に観光に行って高みの見物しましょう。
翌日、欄が帰ると予想通り、熱海駅に公平は南田と塔子と三人でやって来た。
海岸で駐車をして「小泉さん、お金儲けの話し有るらしいね」
「公平から聞いたの?」
公平は車の外に番をする為に出た。
「私達にも儲けさせてくれないか?」
「私もね、実は人手が欲しかったのよ」
「そりゃ、話が早いじゃないか」
「実はね、大学教授の息子がね、大阪の会社の社長さんの娘さんを殺したのよ」
「殺人か?」
「そうよ、それでね、その息子からお金を取ろうとしているのよ」
「それで、私がコンパで客から情報仕入れたのよ」
「そいつは、何者なのだ?」
「大学教授よ」
「脅し取る訳だな」
「丁度良かったわ、手伝って貰えたら助かるわ」
「何処で、話しをするのだ」
「北海道よ、学会が有るからその時に時間作ると、息子も来るらしいわよ」
「遠いな、」
「目立たない場所じゃないと会えないでしょう」
「そうだな、大きなスキャンダルだからな、息子が殺人なら教授は首だな」
「幾ら貰うのだ?」
「五千万よ、私は顔知られてしまったから、困っていたのよ」
「塔子なら判らないな」
「勿論ですよ」
「危ないのは俺たちだから分け前は?」
「三千万でいかが?」
「よし、決まりだ」
「塔子さんが私になりすまして、お金を受け取りに行けば良いのです、南田さんは陰からガードして下さい」
お金の話しには目のない、南田は欄の話しを疑わなかった。
「何故?小泉さんが?選ばれたの?」
「それがね、歳も顔も、名前まで一緒だったのよ、これみて」と写真を見せた。
「おおー、これは間違うよな」
「だから私は幽霊役よ」
「そりゃ、殺した相手が現れたらびっくりするだろう」
「殺人の真相を知っている、黙っているから金を出せですね?」
「そう当たりです」
準備が出来たら連絡する事で別れたのだった。
上田の家には脅迫電話を欄がかけた。
フレールを殺したでしょうと、そして間島さんの娘さんと奥様が交通事故で亡くなったのはそれが原因だと言った。
「お金で解決したい、三百万、嫌なら世間に発表する。私を見て倒れただろう?」
「あれは、あなたが?」
「そうよ」
「間島さんは知っているの?」
「知らないわよ、私はコンパしていて、偶然知ったのよ」
「似ているわね」
「私もびっくりしたわよ」
「何故?知ったの?」
「ペットショップ、彼が経営しているから、偶然京都で会ったのよ」
「友和が見られたのね」
「調べるのに時間は掛かったけれどね」
「交通事故が余分だったわね」
「まあ、お金で決着つけましょうよ」
「判ったわ」
上田の家には少額だったから問題は無かったが、何度も揺すられるのではと云う恐怖が有った。
お互い目立たない場所が希望、北海道の釧路湿原で一致した。
上田公子は知り合いの人に頼んで暴力団を雇っていたのだ。
それは今回で解決を着ける為に、間島が知る前に決着をと考えていたから、気持悪い電話もこの連中だと決めつけていた。
間島と欄、上田友和と公子、殺し屋数名、南田と塔子が釧路に集まったのだ。
お互いの思惑を持って、一平と美優、間島と小泉欄は同じホテルに泊まった。
小泉欄の定期を証明代わりに塔子は持って、陰で南田が見守る。
連絡をホテルで待つ友和と公子、望遠鏡で見る美優、殺人はその時発生したのだった。
塔子を助けに出た南田を別の殺し屋が気絶させた。
塔子は顔を焼かれて身元不明にされた。
南田は彼らに船で別の場所に放置された。
塔子には大量の睡眠薬が飲まされた。
殺し屋達は二人の顔を知らなかったから、お金の受け取りに来たから殺されていた!それだけだった。
間島欄に似た女が居て気持悪いから、処分して欲しいと依頼をしていたから、小泉欄の定期券を証拠品として塔子は持参していた。
「私が欄よ!ほらこれを見れば」と定期券を見せたから殺された。
南田が助ける間もなく、口をこじ開けて大量のお茶を飲ませたのだった。
意外なニュースに驚いたのは間島と欄だった、
慌てて釧路から立ち去ったが、もう熱海に戻れない。
公平にも連絡が出来ないので、豊中の間島の家に帰るしか方法がなかった。
繋がる
1-11
「奥様を怖がらせた女は、顔を潰しておきました、
それと一緒に来ていた男はペットショップの男でした」
「それで、あの子犬を用意したのね」
「全く別の場所に死体を捨てましたから、
事件に関連は生まれませんよ、御安心を」
「ありがとう、これから安心して眠れるわ」
公子は喜んだのだった。
南田は気絶させられて車で札幌まで運ばれて睡眠薬を飲まされて、
支笏湖に捨てられた、身体にブロックの重しを着けられて沈められた。
公平は欄から連絡は無くなった、
マメをペットショップに引き取ったのだった、
それは五月蠅い、南田が行方不明に成ったから。
美優が見た日の北海道の当日の夕刊には小泉欄さんと
思われる死体が釧路湿原で焼死体にて発見されたと書かれていた、
それは、間島も欄も、公子も友和も読んでいた、
四人は慌てて北海道から消えたのだった。
坂田獣医病院から柳田塔子の家に連絡が有ったのは事件から二週間後だった、
坂田も南田と塔子は旅行に行くと聞いていたので気にしていなかったが、
流石に二週間連絡が無いのに自宅の九州の佐賀に連絡をしたのだった、
しかし母親からは何も聞いていませんし連絡も有りませんと云われた。
南田は元々一人暮らしだから、
誰も尋ねる人は居なかったが、
三原真理子が坂田に一度自宅を見てきてと、
云われてマンションに来ていた、
丁度同じ時に公平も来ていた
「貴方はどなた?」
「奥様ですか?」
「違うわよ、貴方見たこと有るわね」
「そうですか?」
「あっ、雑種の犬を三ヶ月も預けた人だ」
「ああ、坂田さんの受付の方でしたね」
「何故?貴方がここに?」
「内の店の店長なのですが?個人向けの手紙が貯まって」
「じゃあ、店にも連絡が?」
「はい」
公平は以前熱海の海岸での三人の会話は聞いて無いから判らないのだった、
でも三人とも居なくなってしまったのは事実だった。
大城屋の母民子に相談に行って
「欄さんが何かトラブルに巻き込まれているらしい、どうしよう?」と言った。
「昔ね、もう無くなったけれど、(旅館玉田)って所で事件があってね、
それを解決した刑事さんがいるのだよ、その人に相談してみたら?」
「お母さん知っているのかい?」
「その旅館に仲居で勤めて居た人知っているから、聞いて貰ってあげるよ、
同級生だと言っていたから、松本清美さん、母さん電話してあげるよ」
「ありがとう、明日休みだから静岡まで行ってくるよ」
店長は嫌な奴だから、良いのだけれど、
欄と連絡が出来ないのが不安だったのだ。
その頃一平は美優との新婚旅行から帰って
現場復帰をして少し経過していたが、
「お前、窶れたな」
「目に隈が出来ている」
とかみんなに冷やかされていた。
北海道の事件は暗唱に乗り上げていた、
初めは熱海の小泉欄の死体と云う事で静岡県警の出番だと思われていたが、
DNA検査で別人に成ってしまって、
捜査からは遠ざかっていた、
美優の見た男性の死体らしき物も、
只の間違いで落ち着いていた。
「次郎ちゃん、私よ、清美」
佐山に馴れ馴れしく電話してきた、松本清美だった、
「どうしたのだ?」
「私の友達の息子の泉田公平君が今日そちらに相談事が有って行くから、
話し聞いてあげて欲しいのよ」
「ここは捜査課だよ、人生相談は駄目だよ」
「私は何も聞いて無いけれど、何か人探しみたいよ」
「人探しは此処じゃないよ、熱海の警察に行けば」
「そんな事言わないの、次郎ちゃん、融通してよ、お願い」
「仕方が無いなあ」で電話が切れた、
午後に成って公平が訪ねて来た
「おい、新婚ボケ、一緒に聞いて、熱海の捜索願の部署紹介してくれ、
同級生に頼まれて仕方なく会うのだよ」
「はいはい、美優に佐山に虐められたと伝えます、
今年は蟹の招待は無いでしょう、な」
「それは困る、あれは旨い、」
冗談を言いながら二人は泉田公平に会った
「何処の誰が居なくなったの?」
一平が軽い聞き方をする、
「実は、結婚迄考えて居る女の子が連絡付かなくなって、困っているのです」
「そりゃ、可愛そうにね、結婚迄考えて居たら心配だよな」
「はい」
「いつから、いないの?」
「三ヶ月の約束で飼っていた犬も預かって、いまして」
「一度も連絡が無かったのか?」
「「いいえ、少し前に一度熱海に帰って来ましたよ、三週間前の金曜日」
「結婚式の少し前だな」
「関係無いだろう一平」
「それで、その結婚迄考えて居た女性の名前、身長とか特徴写真は有るの?」
「はい」
と二枚の写真をポケットから出した
「この子なのです」
「まあまあ、可愛いじゃない」
「これは、派手な感じだな?コンパニオン?」
「これ同じ人?」
「はい、その派手な感じが少し前でこちらが最近です」
「女は化け物だな、これは清楚だからな」
「ところで、名前と住所は?」
「名前は小泉欄さんです住。。。。」
「えー」一平が話しを遮った、
今まで捜索願を熱海の警察に送るつもりで聞いていたから、
「今、小泉欄と言いましたよね」
「はい」
「佐山さん、これは何でしょう?」
「捜索願じゃない、事件だ」
急に二人の目が本気顔に変わった、
「資料もってこい」
「はい」
一平が釧路湿原殺人事件の資料を持って来た。
「この定期券見て下さい、欄さんのですか?」
「はい、間違い無いです」
「他に何か変わった事は?」
「僕はペットショップに勤務しているのですが、
そこの店長が居なくなっています」
「名前は南田邦夫さんで、欄さんが帰ってから直ぐに居なくなりました、
旅行に行くと言って」
「その時欄さんと、貴方と、他には誰か居ましたか?」
「はい、坂田獣医病院の柳田塔子さんです」
「その女性は?」
「判りません」
「一平電話で確かめろ」
「はい」一平が出て行くと
「四人でどんな話しをしたのですか?」
「僕は見張り役で車の外に居たので判りません、
北海道がどうとか、話していました」
一平が帰ってきて「行方不明だそうです」
「一平釧路の事件は静岡の事件の可能性が出て来たな」
「はい」
「泉田さんまたお聞きするかも知れませんので携帯の番号を書いて下さい」
「それでは、欄の事お願いします」
と公平は帰って行った。
「あの死体の女性は柳田塔子の可能性が高い、家宅捜査だ、」
「じゃあ、美優が見た男性は南田邦夫の可能性ですね」
「そうだ」
「判らないのは、顔を焼かれたのと、定期券だな」
「それと、小泉欄の行方ですね」
「南田は死んでいるのでしょうか?」
「多分殺されているだろうな」
「殺し方がプロですよね」
「中々、殺しても顔は焼かないよ、余程恨みか、顔を見られたくないか?」
「どちらです?」
「前者の恨みだろうな」
「しかし、釧路、熱海まったく繋がりませんね」
翌日柳田塔子のマンションに二人を始めとして
捜査員が行ったが会ったのは南田と関係が有った事と
DNA鑑定のヘアーブラシを持ち帰った位だった。
数時間後一致しました、柳田塔子です、
「明日、坂田獣医に行こう」
「南田のマンションも家宅捜査だ」
翌日の新聞に大きく釧路の被害者が柳田塔子職業トリマーと発表された、
その記事で驚いたのは公子だった、
確かコンパニオンだと聞いていたのに、違うの?
でもあれから変な事は起こっていない、
南田邦夫の公開捜査も同時に行われた、
「しかし、まったく判らないな」佐山が言う
「この柳田が顔を焼かれて殺される理由と、手口がプロだと云う事、何故?」
何処に接点があるのだ
「一平、これは小泉欄を探さないと、解決しない」
「見つからなければ公開するか」
「動物?犬?が関係有るのでしょうか?」
二人の推理が広がるのだった。
捜査
1-12
小泉欄と間島順平にはこんな事件が起こるとは想像していなかった。
お金を少し払って貰いそれは欄に報酬としてあげよう。
上田親子達が妻早苗と娘を直接殺害した訳ではなかったから、謝罪の一言が聞きたかった。
それに恐怖を味会わせたかったが本音だった。
まさか、プロの殺し屋を雇って殺す。
幸い、小泉欄と自分の接点は上田親子も殺し屋達も知らない。
南田はペットのプロ、間島と南田の接点を殺し屋達に調べさせたがまったく無かったのだった。
上田公子は犬好きで、その知り合いにはこの様な連中も少なからず居たのだ。
小泉欄はお手伝いの山田千佳子の家に隠れていた。
間島の家は見張られているかも知れないから、南田と柳田が死んだと思われるので、公平にもまったく連絡が出来ない状態に成っていた。
脅かす方が今度は恐怖に陥れられていた。
間島に社会的地位が無かったら今頃は危険だったかも知れなかった。
上田公子は真柴進に「片づきましたよ、謝礼に一千万あげて下さい」
真柴は愛犬家の仲間だが,暴力団関係と交流があり公子が相談したので任せたのだった。
実行犯も真柴も欄の顔も知らなかったから、自分から小泉欄と名乗った柳田塔子が殺害されてしまったのだ。
「真柴さんの口座に明日振り込むわ」
「奥さん、困ったら何でも相談して下さいよ、大抵の事はお金で決着しますから」
「またお願いするかも知れません、小泉欄に男が居る様なので心配ですがね」
「湖に沈めた奴の他に?」
「探偵に調べて貰ったら、犬の世話をしている男がいるらしいのですよ」
「欄が飼っていた?」
「汚い雑種らしいけれど、あの南田と同じ店の従業員らしい、南田邦夫、柳田塔子が小泉欄の名前を使って私達を脅迫していたらしいけれど、一応マークはした方が良いですね」
上田は小泉欄の名前を柳田と南田が使って私達を脅迫したと決めつけていた。
お金を取りに来たのだからこれほど確かな証拠はなかった。
欄がもし行っていたら今頃はお陀仏、顔を焼いたのは間島欄に似ていると、上田親子との関連がばれる恐れが有ったから、新聞には柳田塔子の写真が掲載されたので、上田親子には有り難かった。
もし誰かが見て、友和さんとお付き合いが会った方に似てらっしゃいますねとか言われたら大変だった。
佐山と一平は柳田塔子と小泉欄の接点を探したが、欄と塔子は殆ど面識がなかった。
愛犬のマメを坂田獣医に預けたのは公平だったから、一度熱海に帰った時のみの接触だ。
南田は何処にも形跡がなかったが、熱海のラブホで塔子と南田の関係が判ったのだった。
そのラブホの監視カメラに,坂田と三原真理子が映っていたのを佐山は見逃さなかった。
公平と欄の姿も見つかっていた。
「柳田塔子は誰かと間違われて殺されたとしたら?」佐山が言う。
「当然女性ですよね、三原真理子か小泉欄のどちらかですね」
「いや、小泉欄だ」
「何故です?」
「三人が話しをしているから、その可能性が高い」
「小泉欄と柳田塔子この関係だな」
「何故会ったか?公平に尋ねてみよう」二人はペットショップに向かった。
すると店にチンピラ風の男が二人来ていて泉田公平に何か話している。
「警察だが、泉田さんは?」と聞こえる様に言うと二人は慌てて出て行った。
佐山が車のナンバーを書き留めていた。
「泉田さん彼らは何を聞きにきたのですか?」
「小泉欄さんの居場所知っているか?」
「それで?」
「知りませんと答えると、いつから会ってないと聞くから、適当に答えようとしたら、刑事さん達が来られて」
「ナンバーの紹介だと、京都の探偵社猪原の車だった」
「心当たりは?」
「京都ですか?僕、一度欄さんを尾行した事有るのですよ」
「それが、京都?」
「そうです、グリーンで京都迄行って八坂神社に行きました、欄さん私と付き合っていながら月に一度位の間隔で旅行に行くので、誰か男がいると思いまして尾行したのです」
「一平糸口が見つかりそうだ」
「八坂神社で欄さんに近づいてくる若い男がいたので、話しかけたら、別の人を待っているのに何を言うのだと叱られまして」
「その人は?」
「名前覚えていますか?」
「誰だったかな、待って下さい、スマホのメモに残っているかも」
「そんな所に書くのだ?」
「有りました、北村真弓さんです、誰かの友達の北村真弓って言っていました」
「貴方の知っている人ですか?」
「いいえ、北村さんも、知らないです」
「それで?」
「二人で口論していたら、小泉欄さんは消えてしまいました」
「一平コンパニオンクラブに行こう」
「泉田さん狙われているかも知れないから気を付けて下さい」
二人は湯河原のコンパニオンクラブ夢に向かった。
「おい、一平あれ、先程の探偵社の車だ」
「一応手配させて、何処に行くか調べさせろ」
直ちにナンバーと車種が連絡されて、尾行された。
各所に監視カメラが有るので早い。
「高速を西に向かっています」と連絡が入ったのは、コンパニオンクラブ夢で待たされている時だった。
漸く担当者が出社してきた。
先程の探偵社の二人は話しを聞かずに帰って行ったのだと佐山は思った。
「此処に、勤めて居た小泉欄さんの事で聞きたいのですが?」
40代のマネージャーが「私も困っているのですよ、人気の子だったのでね、三ヶ月休むと言っていたのですが、もう三ヶ月は過ぎていますからね」
「実家には?」
「連絡したのですが、帰っていないのです」
「一度も、ですか?」
「はい、母親の看病とか言っていたのですがね」
「小泉さんに付いて変わった事は有りましたか?」
「そうですね」暫く考えて「休む少し前から、化粧とか服装が変わって、凄く人気が出ていましたね」
「特定のお客さんがいましたか?」
「そうですね、大体気に入っても二三回呼ぶ程度でそれ以上頻繁な客は居なかったですね」
「そうですか?」
「それに、当店では二人一組でお座敷に出ますから、一人で呼ぶ客は少ないですよ、大体少なくても客二人ですね」
「相当高いでしょう」
「小泉さんを小百合さんとセットで、二回程呼んだリッチなお客さんがいましたけれどね」
「その小百合さんは?」
「小泉さんと仲が良かった、コンパですよ」
「小百合さんは?」
「もう辞めましたね、小泉さんが休んでから暫くしてね」
「そのリッチな客はどうして、小泉さんを指名したのですか?」
「ああ、数ヶ月前慰安旅行で熱海に来られて、その時偶々小泉さんが座敷に数名のコンパと一緒に行ったのがきっかけで、小泉さん関西の出身で話しが会ったので、次に来た時にも呼んで貰ったみたいですよ」
「小百合さんと、ですか?」
「はい、二回程度だったと」
「その後は?」
「それからは有りませんでしたね」
「二人の実家の住所教えてもらえますか?」
「いいですよ」
小泉欄は滋賀県の余呉、小百合は本名本田百合、愛知県岡崎の出身。
「念のために、この二回呼んだ人は?」
「確か、関西の建設会社の社長さんだったと思います」
言いながら台帳を調べて「間島建設ですね、最初は熱海グランドホテルの慰安旅行、次の二回は大城屋さんですね」
「ありがとう」そう言って二人は湯河原を後にした。
その時「探偵社が岡崎で高速を下りました」と連絡が「岡崎?」二人の声が同時に言った。
「彼らは此処で小泉欄の友達の住所を聞いたのだ」
佐山は本田百合の住所を伝えて警戒してくれる様に頼んだのだったが、本田百合はコンパを辞めて熱海のスナックに勤めていたのだった。
誘惑
1-13
間島順平は上田親子の恐ろしさを知ってしまった。
小泉欄の身代わりに柳田塔子と南田邦夫も、多分犠牲に成っただろうと身を潜めていたが、二人にはどうしても上田が許せなかった。
単なる交通事故から殺人事件に成っている事と、人の命と犬の命をどう考えているのだと怒りが込み上げていた。
欄は南田と塔子の欲の深さが招いた不幸だと思ったが、一度上田公子の一番大事な物を壊してやりたいと思っていた。
欄は自分の妹瑠璃が可愛くて、瑠璃を利用して馬鹿息子の誘惑を考え出した。
上田の弟進二と瑠璃が同級生で高校三年生、受験の最中の瑠璃は高校を卒業して就職の予定だが、余呉の田舎では仕事が無いので京都の観光施設に決まっていた。
面接の人が一発で採用を決めた位だから、芸能界でも行けそうな可愛さだった。
土日の休みに京都に呼んで受験勉強の邪魔をさせたら面白いと思ったのだった。
順平は欄に上田の可愛がっている犬を何とかしてみないか?と持ちかけていた。
「南田と塔子は間違い無く殺されているから、坂田獣医に教えると何かするかも?」
「それは面白いかも、同じ獣医仲間もいるだろうし」
「私ね、妹に手伝って貰って、上田の弟の高校生の受験の邪魔をさせよと思って妹に言ったら、お小遣い貰えるなら何でもしてあげる、だって!」
「妹さん巻き込むのは良くない、のじゃないか?」
「もう就職決まったし、京都で働くから下見だって、可愛いのよ!高校生を誘惑するのはイチコロよ」
「怖いね」
「でも、付き合っている男居ないらしいよ、馬鹿に見えるのだって」
「でも学校有るだろう」
「休みに来るらしいよ、京都のホテルに部屋欲しいのよ」
「判った、ツイン予約しておくよ、気を付けてね」
「弟の行動調べて、瑠璃来たら直ぐに行動させるわ、携帯も用意してね」
「坂田獣医には手紙送って置くわ」
順平も時々欄に会うと気が休まるのだった。
いつまでもお手伝いさんの家には難しいので、契約ホテルを借りる事にしたのだった。
今後妹が時々来ても自由に泊まれるし、間島は直ぐに手配したのだった。
数日後坂田獣医に手紙が届いた。
京都の上田公子が暴力団を雇って柳田を殺した事、南田と柳田が上田の秘密を知ったから殺されたと、可愛がっている犬に関連しているらしい、上田は三原と貴方の関係も知っているから気を付ける様にと書き加えていた。
それは、南田が坂田達にも手伝わせようと言ったから欄が知っていた。
この一文が書いてあるので、坂田は相談出来る相手が限定的になったのだった。
警察、嫁には言えなくなった。
坂田は欄の予想通り、知り合いを通じて上田公子を調べた。
人より犬が好きで、主人の博は京都の私立の大学教授、子供は大学生の友和、高校性の進二、公子は習字の先生もしている。
そして怖かったのは真柴進の存在だった。
暴力団との繋がりがある愛犬家だったから「この手紙は本当の事が書いて有るよ、真理子」
「南田さん達、何をしたのかしら?」
「でもこんな手紙が私に届くのは、彼らは私達が、南田、柳田の同類だと思っているって事だよ」
「でも殺されるような事、何も私達知らないし、怖いわ」
「どうすれば?」
「殺されない保険が必要かも」
「例えば?」
「子供より大事な犬を誘拐するとか?」
「どの様に?」
「何か方法を考えるしか助かる道は無いかも知れない」
「警察はだめ?」
「我々の関係と南田達との関係も暴露されてしまうよ」
「獣医の知り合いで誰かいないの?」
「探してみるよ」
坂田は我が身を守る為に京都の獣医かペットショップを探す事にしたのだった。
それは意外な所から見つかったのだ。
南田のペットショップは全国に数店舗在って、南田の後輩の丸山大輝が京都の店の店長をしていた。
休みに坂田は真理子を連れて店を尋ねた。
そして南田さんが多分殺されて居るだろうと話した。
そして犯人は上田と真柴だろうと、南田がなにをして殺されたのかは判らないと話したのが、この丸山の欲を引き出したのだ。、
丸山は南田の友達だから、もっと悪だったのだ。
金と女が大好きな男だったから始末が悪い、真理子に一週間手伝って欲しいと言ったのだ。
頼み込んだ関係で坂田は来週まで三原真理子を京都に滞在させる事にしたのだった。
日曜日に坂田だけが帰って行くと「上田の家に、習字を習いに行って、私の紹介のお嬢さんが習いたいと言えば教えてくれるから頼むよ」
「そうなのですか?」
「知り合いだから多分聞いてくれる、上手くいけば直ぐにでも、犬の一匹位持ち出せる」
「上手くいくと良いですね」
「今日にでも電話しとくよ、詳しい打ち合わせはその後でな!」
同じ日に小泉瑠璃は京都のホテルに姉欄と着ていた。
「此処よ」
「わー、お姉ちゃんこんな所に住んでいるの?」
「少しの間よ」
「でも豪華ホテルじゃない、余程良い男捕まえたの?」
「違うよ」
「週に何回来るの、その彼氏?毎晩SEXするの?」
「馬鹿じゃない?そんな関係の人じゃあないの、娘さんと奥さんを殺された可愛そうな人なのよ」
「そんな人が何故?」
「娘さんがね、私に似ているの」
「そんな事有るのだ、それで復讐の手伝いしているの?」
「それだけじゃないのよ、もう少しで殺されかけたのよ」そう言って新聞記事を見せた。
「これ少し前の新聞ね?釧路で柳田塔子さんが殺された?これ?」
「そうよ、私と間違われて殺されたの」
「えー、何?この死体本当はお姉ちゃん?」
「そうなのよ」
「何故?警察に言わないの?」
「証拠がないの、今私を捜しているの、だから熱海には帰れないの」
「その上田の息子を虐めるのね、私なら判らないからね」
「そうよ、瑠璃の魅力で受験を失敗させてよ」
「面白いね、高校生でしょう」
「土日は塾よ、今日は五時に終わるの、休憩して夜はまた勉強、明日は十時から夕方五時迄塾よ」
「上手く、引っかけたら十万くれるの?」
「今手間賃で五万あげるよ、上手にやったら十万あげるよ」
「まかして」
「でも身体使ったら駄目だよ、ホテルなんかに誘ったら許さないからね」
「判っているよ、そんな事、しないよ」
「じゃあ、これが進二の写真、これが親父、これ母これが兄だよ」そう言ってスマホの携帯を渡した。
「この携帯使えば判らないからね」
「OK」早速塾に出掛けた瑠璃だった。
夕方丸山は真理子と打ち合わせを目的に夕食に誘った。
それはもう女癖の悪い丸山の常習手段だった。
常連の寿司屋に行って「明日から行けるよ、井原真理子にしたから、親父は犬好きの工務店の社長にして置いたから、今週二回は行けるからチャンスは有ると思う」
「子犬だから、簡単かも」
「家の中ウロウロしているらしい」
真理子は上手くいく様な気がしていた。
瑠璃は塾の前で待って居た。
出てくる男の子が全員瑠璃を一目見てから立ち去って行くが、遅いなあと思っていたら、漸く写真の進二が出て来た。
「こんにちは」瑠璃の行動はびっくりする程積極的だった。
「は、はいどちらさまでしょうか?」可愛い瑠璃に声をかけられて驚く。
「上田進二君でしょう」
「はい、そうですが」
「お茶飲みに行こう」いきなり言われた進二はびっくりした。
「貴女、何方ですか?」
「ああ、私、工藤留美子よ、お兄さんが弟は勉強ばかりしているから、一度息抜きにお茶でも誘ってやってと言われて、頼まれたのよ」
「あの兄貴が?信じられない」
「貴方のお兄ちゃん今私の姉と付き合っているのよ、知らないの?」
「前に好きな女の人いたけれど、今はいないと思うけれど」
「貴方のお兄さんの一目惚れみたいよ、ほら?これ姉の写真」と欄の写真を見せた。
「これ、これ、お姉さん?」写真を見て驚く。
「そうよ、工藤好美って言うのよ」
進二は何度か欄に会っていたからその写真のインパクトは相当な物で「ね、だからお茶行こう」と言う言葉に納得した。
「はい」と付いて来たのだった。
愛犬の誘拐
1-14
三原真理子は寿司屋でビールを飲んで、丸山と作戦会議をしていたが、焼酎に変わってから酔いが廻って「丸山さん、私酔っちゃったみたい」とトイレに立ち上がるとよろけてしまった。
寿司屋の親父に目で合図を送る。
「送りましょう、何処のホテルですか?」
「結構です、一人で帰れます」そう言っている最中に寝てしまった。
ハンドバックにホテルのカードキーが、丸山は真理子に肩を貸す様な感じでタクシーを呼んで乗り込んだ。
駅前近くの良いホテルのダブルの部屋だった。
手回しが良いね、前日坂田と泊まったままに成っていた。
「ついたよ」返事が無かった。
丸山は薬で眠った真理子を強姦したのだった。
瑠璃は進二をお茶に誘ってしばらくして「もう帰って勉強しないと」そう言って帰ろうとした。
「良いじゃない、一日位羽根を伸ばしなさいよ」そう言っても帰るのは判っていたから「送るわ、」そう言うとわざと腕を組んだのだった。
進二がもう興奮して胸がときめいているのが手に取るように判った。
家の近くまで来て「目を瞑って」そう言うと進二の頬にキスをした。
「じゃあ、勉強頑張ってね」そう言って別れたが、進二はもう勉強の事は頭に無かった。
翌朝三原真理子はベッドに全裸で寝ていて、衣服が椅子に揃えて脱ぎ捨ててあった。
寿司屋の後の記憶が全くなかった。
誰かに此処に連れてきて貰ったのか?自分で全裸に成ったのか?全く不明だったのだ。
時々坂田とSEXの後全裸で朝まで寝る事が有ったから、気に成らなかった。
一平は美優に釧路の事件の時の事を聞いていた。
「倒れた男は一人だったよね」
「そうよ、一人で他には見えなかったけれど、もう一度同じ場所見たら誰も居なかったわね」
「男の人は草の上とか?木の上とか?どんな場所?」
美優が考えて「板かな?」
「板?」
「望遠鏡アップだったから」
「それって、船の上?」
「そうだわ、ボートの上に似ていたわ」
「二人殺されたな、もう一人は南田だ、船で移動したのか?」
「もう、寝ましょう」美優が身体を一平にすり寄せてきた。
一平は美優の身体の完全に虜に成っていた。
美優も一平が大好きだった。
円満すぎるかな?
翌日釧路の警察に柳田塔子の殺害現場から、ボートで移動して死体を運ぶ場所を探して貰う事に、監視カメラとか高速のカメラを捜査の対象にして貰ったのだった。
南田の遺体の捜索、小泉欄の失踪に焦点が絞られていた。
妹の瑠璃が京都に一泊泊まりで行ったとの報告も有ったが、就職先の下見だろう、欄が余呉に立ち寄った形跡が全くなかったから対象外だった。
その瑠璃は日曜日の夕方も進二を待って居た。
そしてお茶を飲んでメールを交換して、もう完全に進二は瑠璃の虜に成りつつあった。
「明日から学校だから会えない」そう言って、進二に抱きついた。
もう進二に瑠璃の可愛い顔と胸が触れて頭の中に残ってしまった。
「明日からはメールするね、また会おうね、家の人に言うと叱られるから内緒よ」
「兄貴にも?」
「勿論よ、一度だけお茶でもだったから、受験の邪魔をしたと叱られるじゃないの?」そう言って別れたが、瑠璃は翌日から合成写真をメールで送った。
最初は自分水着姿、翌日は合成のセクシーポーズ、その次は胸が見えそうな写真、全裸を想像する背中の写真を連続で送ったのだった。
もう進二からは好きだ、会いたい、のメールの数が日に日に多く成っていった。
「お姉ちゃん、もう一息で進二は終わりよ」
「そうなの?」
「毎日私の写真で興奮しているよ!」
「ははは」欄は大笑いをするのだった。
上田の家では公子が大騒ぎをしていた。
トイプードルのシェリーが行方不明で大騒ぎをしていた。
「習字の教室もお休みよ」
チャンピオン犬の子供同士の交配が終わったところだったから、公子の心配は最高に成っていた。
「習字教室の日も見ましたよ」
「そうよね、居たわよね」
「皆さん、愛犬家だから犬に挨拶してから、お習字の練習していましたわ」
三原真理子には犬の扱いは慣れたもので、熱海の坂田の獣医まで連れて帰ったのだった。
「この犬、妊娠しているね」坂田が言った。
「血統書無いから、判らないけれど多分凄い価値有りそうですね」
「脅迫文でも考えるか?それとも血統書頂いて子犬を売るか?」
「あの狡そうな丸山に相談してみたら?」真理子が言う。
「良い考えかも知れない」電話で丸山に相談すると、取り敢えず子犬が生まれるまでには血統書を手に入れるとの返事だった。
暫くして坂田は自分の身を守る為に独自で脅迫文を書いてしまったのだった。
それは南田の死体が支笏湖から発見され、それは釣り人の針に偶然掛かった。
一平は釧路と支笏湖を結ぶ何かが無いか、美優の証言からルート上の監視カメラの解析に北海道警に頼むのだった。
坂田は自分の事が上田に知られていると思っていたから、文面が自分には手を出すなと書いていた。
公子は「これは?誰なの?私の可愛いシェリーを誘拐したのわ!」と憎しみで読んでいた。
公子は進二の成績が落ちている事にまったく気が付かなかった。
毎日の様に会いたいのメールに今は学校だから行けない。
これでも見て私を思って欲しいと、過激なヌードの合成写真を送りつけるのだった。
翌月に公子は誘拐犯をあの習字の日に来ていた人の誰かでは?
そして一人一人消していった。
井原真理子?誰だった?二度しか来てない。
確かにその後は習字の教室は休んでいたが、連絡先に電話をしてみると出鱈目だった。
公子の怒りは頂点に達した。
真柴に直ぐに相談して、私のシェリーを誘拐した女がいるの、手を出すなと言っているけれど許せない、探し出してと頼んだのだった。
丸山は公子に言った事と真理子に言った事を変えていた。
凄い犬好きで子犬を高く買う女だから、一度様子を見て、奥様の子犬が生まれたら売り先にいかがかなと?
工務店の社長の娘と言う事にして習字を教えては?
「そうね、私の子犬を高く買ってくれて、可愛がってくれる人が一番よ、気が合うと良いわね」
そう言って真理子に習字を習いに来させたのだった。
公子から丸山に「貴方から紹介された、あの女がうちのシェリーを誘拐したらしいのよ」
「えー、そうなのですか?内の店にきて良い子犬が欲しい、お金は幾らでもと言うので奥様を紹介したのです」
「そうなの?でも連絡先は繋がらないわよ」
公子は丸山が真理子と組んで誘拐をしたと考えた。
そして真柴に二人からシェリーを取り戻して、始末して、許せないと怒りを露わにしたのだった。
丸山は坂田に連絡をしたが丁度留守で真理子が電話にでた。
丸山は真理子の身体を思い出してもう一度SEXをと考えたのだった。
「見つかりそうだ、一度相談しよう」
「南田さんも死んでいたし、私怖いわ」
「今度の土曜日に浜松に用事が有るのだ、夕方に会おう」
「判ったわ」
「坂田には内緒にして置いた方が良い、坂田先生は気が弱いから」
「そうね、そうするわ」
丸山は監視されていた。
真柴は店の店員を抱き込んで丸山の行動を逐一連絡させていた。
日頃から店では店員の評番が悪く、丸山は敵が多かった。
シェリーは何処に
1-15
丸山が土曜日に浜松に出掛けて、そしてホテルも予約していると情報が入った。
真柴はプロの連中に連絡していた。
丸山は新幹線の中で連中に拉致されたのだった。
浜松のホテルで丸山の名前でチェックインをして、来訪者を待っていた。
丸山の携帯は連絡不能に成っていた。
携帯に連絡出来なかったが、真理子は約束のホテルに来て、部屋に居る事をフロントで確認した。
話しが話しなので、部屋の方が安心かな?でも二人きりに成るのは怖いし、ロビーで待つ事にして、フロントにお客様がロビーでお待ちですと伝えてくれる様に頼んだ。
暫くして「丸山さんと待ち合わせの方ですか?」と男が小声で囁いた。
「はい」
「尾行されている様なので、外で会いましょう」
「そうなのですか?」と周りを見渡した怖かったのだ。
「私が送りますので」
「はい」
真理子は男に付いてホテルを出ると、黒のワンボックスカーが停めて有るが、中がまるで見えないシートが貼られていた。
「これに、乗って」と扉を開けると同時に引きずり込まれた。
「あー」中には二人の男が引きずり込むと、車は直ぐに走り出した。
暫くして浜名湖の辺に止まった。
「今から聞く事に正確に答えたら解放する、言わなければ殺す」
怯えながら「は、はい」と真理子は答えた。
「おい、コーヒーでも飲ましてあげなさい」
「はい」
紙コップに入れたコーヒーを差し出したが、真理子は飲まなかった。
「何か毒でも入っていると?」もう一人がコップに入れて飲み出した。
真理子も安心した様に飲んだ。
「上田の奥様の犬を誘拐したのは、お前か?」
暫くして「はい」と答えた。
「何処に?隠した」
「あの?丸山さんは?」
「無事だ、丸山と共謀して誘拐したのは知っている、理由は?」
咄嗟に「南田さんの復讐です」と答えてしまった。
「あの、ペットショップの男か?」
「はい」
真理子は喉が渇いてコーヒーを一気に飲み干した。
「奥様の犬は?」
「ペットショップ熱海」そう言うと大きく欠伸をした。
「眠く成って来たか?」
「薬?」驚く。
「コップに入っていたのだよ、おやすみ」
真理子は持ち物、衣服を脱がされ全裸にされた。
「丸山はもうすぐ着くか?」
辺りが暗くなって丸山も全裸にされて乗用車のリクライニングシートを倒しで抱き合わせて、寒いだろう?練炭を車に置いて林に停車したのだった。
翌日ワールドペット熱海店に殺し屋達が行ったが、丁度佐山と一平が公平に会いに来ていて、殺し屋達は即消えたのだった。
「小泉欄は何処に消えたのでしょうね?」
「殺されたとは思えんが?」
「公平に犬の世話だけさせているけれど、あの男も真面目な男だな、連絡のない恋人の犬の世話をするなんてね」
その時携帯が鳴って、浜松の林で若い女と男の自殺体が発見されたと連絡が入った。
「本田百合は後だ」
「欄でしょうかね?」
「男は?」
「急ごう」
「公平に監視を付けよう」
「何故?」
「南田、小泉、柳田が殺されたなら、三人と最後に会っている泉田公平は狙われる」
熱海の警察に連絡がされて公平に監視が付いた。
「あそこのペットショップの方ですか?」
殺し屋がワールドペット熱海から出て来たバイトに尋ねた。
「はい」
「変な事を聞きますが、店員が個人的に犬を飼っていませんか?」
「はい、飼っていますよ、小さい犬を大事そうに世話していますよ」
「ありがとう」
バイトと別れた殺し屋達は「間違い無い、犬はあそこだ」と確信したが「警察が居ますね」
「様子を見なければ」
「真柴さんに連絡はします」
何故、警察が?南田の死体が上がったからだな、困ったな!と思った。
持ち物も何も無かったが丸山には前科が有ったから、直ぐに身元が判ったのだった。
「女は誰ですかね?」
「小泉欄では無い」
「この二人が恋人には見えないですね」
「そうだな、無理矢理睡眠薬を飲まされて、二酸化炭素中毒死ですよね」
「プロの殺し屋だな、この二人は関係無い者同士でしょうね」
夕方になって「女は妊娠していました」と報告された。
「誰の子供かが決め手になるかもですね」
「ワールドペットの店長が二人も殺されるのは?」
「全員、ペット関係者ですね、この女性も?」と考え込んだのだった。
翌日「一平、思い出した、練炭で亡くなった女、坂田獣医の受付の三原真理子だ」
「坂田と不倫の?」
「顔がよく判らなかったが、間違い無い」
「坂田獣医に行こう、本田百合にも会おう」と行こうとした時「お腹の子供は丸山の子供でした」と報告が有った。
「えー、どうなっている?」
「真理子と坂田獣医は不倫関係」
「丸山と真理子は子供迄作る関係」
「会うのは中止で、三人の行動を捜査しよう」
刑事が五班に別れて、調査を開始した。
「佐山さん、理解不能の事件ですね」
「坂田が丸山と真理子の関係を知って二人を殺していたら簡単なのだが、無理だろう?反対に殺される」
「ですよね、丸山の方が相当悪ですからね」
丸山と真理子が会ったのが殆ど捜査では発見出来なかった。
南田の後輩が丸山だと云う事と、坂田獣医は新人の助手加藤美代に色々教えていたから、アリバイは完璧だった、
「坂田に連絡して来て貰いますか?」
「真理子の家族にはもう連絡しました」
夕方坂田獣医に連絡をしたら、もう声に成らない驚き様で警察に向かうと言った。
夜の診察時間の終了後に「三原さんが亡くなったらしい、警察に行く」坂田は出かけた。
「えー、柳田さんの次に三原さんも?」良子は驚き「一緒に行きましょうか?」と尋ねる。
「いや、私一人で」と言って車で出掛けた。
真理子との関係が有ったから、しかし夜の道路は坂田の恐怖心に火を点けていた。
見えない物が見えて、もう錯乱状態に成って、高速で中央分離帯に激突死をしてしまったのだった。
「来ませんね、坂田獣医」
「もう随分時間が経過している?」
佐山と一平に事故が判ったのは午前〇時を過ぎていた。
公子は「私のシェリーの居場所は判っているのでしょう」
「はい」
「貰いに行くわよ」
「でも警察が?」
「何故よ、私が被害者じゃないの、盗まれた可愛い子を取り戻しに行って何がいけないのよ」そう言って怒る。
「はあ、ごもっともですな」真柴も公子の勢いに負けたのだった。
考えて見れば飼い主が行けば直ぐ判るからその方が良いか、翌日新幹線で習字の弟子で南頼子と二人で向かったのだった。
熱海駅からワールドペット熱海店に電話を南が掛けた。
「そちらに預けている、犬を今から受け取りに行きますから、準備お願いします」
「はい」とは答えたが、預かっている犬はいない?
「どの犬か、売れたのか?」
「知りません?」
「あれじゃ?」と公平の犬を指さした。
「そうだ、公平君の世話している犬の飼い主が帰ってきたのだ」
「泉田もうすぐ来る時間だな」
「それでも、携帯で教えてやろう、喜ぶぞ」
「ほんとうだ、長い間世話していたからね」
公平に「マメの飼い主がもうすぐ、マメを引き取りに来ると、今、電話が有ったよ」
「えー、小泉さんが?」
公平は喜びながら自転車のペダルを踏むのだった。
公平には常に刑事が交代で居て、今日の担当は婦警の堤美登里だった。
狙われているのかな?堤も三日に一度の当番に成っていたから、仕方なく着いていた。
フリーターの青年を狙う人っているのかな?
公平が到着する少し前に上田公子は店に来て「早く、私の可愛いシェリーちゃんを返して下さい!」
「もうすぐ世話している者が参りますのでお待ちを」
「自分の可愛いシェリーちゃんを京都から迎えに来たのよ」と息巻いている。
「何か変ね?」
「おかしい?」
「仕方ない、連れて来い」言われて店員がマメを抱っこして持って来た。
待ちかねた公子が「おおー可愛いシェリー」と言って抱いている店員に近づいて、マメを見て力が抜けて南に寄りかかった。
尾行の尾行
1-16
「貴方達何考えているの?私を馬鹿にしているの、誰がこんな小汚い犬を貰いに来ると思っているの?」
「でも、他には居ませんが?」
そこに公平が入って来て「小泉さんは?」キョロキョロ見た。
「人違いみたいです」公平は肩を落とすのだった。
「此処に、丸山って人が居たでしょう?」
「居ませんが」
「どうなっているのよ、店間違えたのかしら」公子は怒って待たせて有ったタクシーで帰っていった。
側で聞いていた堤婦警が県警に電話を掛けて着た。
一平が丁度居て「あの、私泉田公平を監視している堤と申しますが、私の勘違いかも知れませんが、先程泉田さんの犬を貰いに来た叔母さんが、丸山がこの店に居たでしょうと言ったので、もしかしてあの殺された丸山と関係が有るかと思いまして」
「そこの店員さんに気が付いた事聞いて下さい」
「京都から来たと言っていました」
「判った」
電話を切って一平が佐山に話した。
「怪しいな?」
「名前も何も判りませんよ」
「タクシー会社に連絡して乗せた運転手を捜せ」
「どの新幹線で帰るか?」
「ひかりは16時まで有りませんね」
時刻表を見て「朝は11時過ぎに熱海に来た様だ」
「あっ、美優、熱海に行っていますよ、日帰り温泉に昼から友達と行くって、もう着いているのじゃないかな」
「美優ちゃん危なくないか?」
「大丈夫でしょう、叔母さんを探す事位、服装、堤婦警に聞いて下さい」
「よし」一平は美優の携帯に電話した。
「美優、一平ちゃんです」
「何?今、熱海駅の改札よ」
「事件の捜査で例の連続殺人に関係の有る人物かも知れない女が、今、その辺りに居るらしい、探してくれない?京都から来ている」
「服装は?」
佐山がメモを渡す「高そうなコートを着た、小太りの眼鏡をかけた叔母さんと紺のスーツの女性だ」
「探してみるね、朋ちゃんと話すね」
「頼むよ」
美優は改札を出ると、高木朋子が手を振っていた。
「あのね、一平ちゃんがね、人探ししてくれと言ってきたの、温泉行けないかも」
「別に温泉はいつでも行けるからいいよ、どんな人?」
「連続殺人に関係ある人が此処に居るのだって」と小声で言ってそして感じを説明した。
「その人なら今、商店街の方に行ったわよ、電車が無いから、乗り換えるのは嫌だとか、凄く機嫌悪かった!もしかしてその人?」
「温泉に行って時間を潰すのかも知れないわ」
「そうよ」
「私達が行く温泉?」
「行ってみよう」
「ご主人に言わなくても良いの?」
「まだ見付けてないのに」
「そうか」
「居なかったら、判らなかったって言うわ」そう言って二人は日帰り温泉に行くのだった。
高木朋子も主婦でまだ新婚、美優と年齢も変わらない、高木の主人は久美浜の高校の先輩だった。
偶然に小田原に住んでいるので仲良く成って、時々四人で時間が合った時には遊びに行く仲だった。
「お腹空いたから、先に食べよう」そう言って定食を食べる二人が、向こうの方を見て「美優、あの二人似てない?」と指を差した。
バスローブ姿の二人、小太りに眼鏡、金持ち顔が見える。
「名前か何か知っているの?」
「何も判らない、でも顔は嫌いなタイプね」
「17時前の(ひかり)で帰るわね」
「私達もお風呂に入ろう」
「16時過ぎでも大丈夫よ、あの人達なら」
暫くして湯船に「いつ見てもスタイルも胸も綺麗ね、美優は素晴らしい」
「そう」
「最近は色気が出て来たしね」
「一平ちゃんが好きだからね」と笑った。
「仲が良いのね」
「そうかな?仲良いかな?」
「警察は時間不規則でしょう」
「そうよね、それが嫌よ」
[あそこに先程の二人入っているよ」
「サウナね」
「昔ね、ガマガエルってあだ名の怖い叔母さんが居たのよ、似ているよ」
「面白いあだ名ね」と二人は笑っていた。
お風呂を上がると携帯に何度も一平から着信があった。
「ごめんね、お風呂入っていた」
「見つかったか?」
「それらしき人とお風呂入っていたよ」
「名前とか、調べられないか?」
「難しいな、もしこの二人だったらどうするの?」
「京都?から来た様だ」
「えー、京都迄行って良いの?」
「危ないよ!」
「大丈夫よ、警察で旅費出して貰ってよ」と話している美優。
その時大きな声が聞こえる。
「貴方、熱海まで温泉に来た訳じゃないのよ、可愛いシェリーが何故?間違いでは承知しないわ、証人始末してしまってどうするのよ」
わおー、この叔母さんだ、慌ててその場を去ったが南が立ち去る美優を変な目で見ていた。
「先生、今誰と電話していらっしゃったの?」
「真柴さんよ」
「今、あの人に聞かれたかも知れないわよ」
「えー、でも判らないでしょう、話しの内容まで」
「それなら良いのですが」
その後時間に成って、新幹線乗り場に移動した。
「奥様、あの二人先程の人ですよ」
「偶然だろう、グリーン車には乗らないだろう」予想通り高木が気付いて移動していった。
「電車に乗るわよ、私達も」一平に電話をする。
「えー、二人で?」
「一人より二人が安心でしょう」そこで電話が切れた。
電車に乗り込んだ高木と美優はグリーン車の隣の7号車に座った。
「ワクワク、するわね」
「ほんとうね、サスペンスドラマみたいね」
「取り敢えずメールは送っておくから、何処に座っているか見てきて」
「判ったわ」朋子が確かめに行った。
その行動が二人に自分達を尾行していると確定させてしまった。
「10号車の8番のAB」
「判ったわ、送っておくわ」
二人の行動を今度は公子達が警戒し始めたのだった。
(真柴さんとの話し聞かれたかも、若い女が二人尾行しているみたいなの)とメールを送った。
一平も美優の安全の為に、松本千登勢刑事を新幹線に間に合う様に行かせたのだった。
美優にはその事を一平は言わなかった。
美優達の行動の妨げをしないで、守って欲しいと云われて乗っていた。
美優がトイレに行った時、南が携帯で習字の話しをしているのを聞いた。
この人習字の先生?名古屋駅が近づいて、美優は彼女らが乗り換えないか?注意していたのだった。
名古屋駅で真柴に頼まれた五人が乗り込んで来たのだ。
尾行しているのが何者か?を調べるのが目的で、上田の奥様を無事に自宅に届けるのが役目だった。
三島千代子、岩田悦子と三人の男、富田、垣内、早瀬、京都駅に到着すると三島と岩田が二人の前でゆっくりと降りた。
三人の男が上田と南を自宅に送ったのだった。
「駄目だ、探偵失敗ね」
「そうね、見失ったね」
「帰りますか?」
「仕方ないわね」と上りの(ひかり)に乗った。
「家に帰ったら10時だね」
「私、11時よ」
「ごめんね」
「でも、スリルが合って楽しかった」
二人に付いて松本刑事も、疲れたと思っていた。
三島と岩田の二人が美優達を今度は尾行しょうと、ベンチで待って居た。
上りの(ひかり)に三人と二人が乗り込んだ。
そして殺し屋が数人乗り込んだのだった。
「静岡で乗り換えだわ」高木が言った。
「お腹空いたね、緊張して食べてなかった」
「何か買って来るわ、売り子さんいるかな?」そう言って美優が探しに行く。
暫くして弁当を買って帰ってきて小声で「京都駅で、私達の降りる時ゆっくりしていた叔母さん二人いたでしょう?」
「見失った原因ね」
「その人達、私達の車両に乗っているよ」
「えー」
「やはり、ガマガエル叔母さん、怪しいわね」
「今度は私達を尾行している?」
「そうかも知れないわ?」
「怖いね、」
「もし、静岡で降りたら、今夜私の家に泊まった方が良いわよ」
「そうね、怖いからそうさせてもらうわ」今度は美優たちが怯えるのだった。
刑事が犠牲に
1-17
その夜、一平と佐山は熱海のスナック(ひとみ)に本田百合を尋ねていた。
「コンパニオンクラブ夢で仲良しだった、小泉欄さんの事でお聞きしたいのですが?」
「欄まだ、見つからないの?」
「はい」
「先日クラブの支配人に小泉さんと、貴女を指名して二回程一緒に、座敷に行かれたとお聞きしたのですが?」
「ああ、覚えているわ、確か大城屋さんだったかな、二回共、私、最初は行ってないのだけれど、大阪の会社の慰安旅行の宴会に欄と数人が行ったのね」
「はい」
「その後一月後位かな、一人でその社長さんが、欄を指名して行ったのよ、コンパは二人一組だから、欄が行こうと云ったから」
「二回共ですね」
「そうです、一人で二人も呼ぶと高いのに、そのお客さん変なのですよ」
「何が?」
「私は小遣い、貰って遊びに行けって云うのよ」
「欄さんと何か?」
「私もそうだと、思ったのね、欄も警戒していたわ、警察の方に言うのも変な話しなのだけれど、欄って身体売る子じゃあ無いのよね」
「今夜は聞かなかった事にしますよ」
「二回共何もしないで、酒飲んで、カラオケ、世間話で終わり、だったのよ」
「何ですか?それ」
「そうだなあ、百合さん居ても関係無いじゃないですかね」
「不思議でしょう、それからは来なくなったわ、欄が個人的に会っていたか?判りませんがね、でもそれからはまったく、話しもしませんでしたよ、欄」
「佐山さん、不思議な話しですね」
「幾ら位?一晩」
「私の小遣いもだから10万は超えるでしょうね」
「「大城屋にも行ってみますか?」
「そうだな、欄さんから連絡有ったら、教えて下さい」
「はい、怖い事件に巻き込まれて無ければ良いのですが」
「ありがとう」二人はスナックを出た。
「間島建設でしたよね、確か」
「何だろう?」
「一度大阪に行くか」
二人は大城屋に行って、事情を話すと「その方の担当は民子さんだ、呼びます」
暫くして「泉田民子ですが、何でしょうか?」
「泉田?」
「もしかして、息子さんは公平さん?」
「清美の友達だったのですか?」
「松本清美さんです、息子が世話に成っています」
「今夜は小泉欄さんの事で間島建設の社長の話を聞きに来ました」
「コンパニオン呼んで、一人を遊びに行かせて、欄ちゃんと遊んで帰る人ね、二回程かな、変わっていましたよ、二人でも一度泊まりましたよ」
「先程百合さんにも聞きました、元小百合さん」
「欄ちゃんの仲良しね、その百合ちゃんが言っていましたけれど、コンパ休んでお小遣いあげるからもっと遠くの高級旅館に行かないか?と言って誘われた、私なら即OKなのにね、って笑っていましたよ」
「間島さんは、欄さんと外に飲みに行くとかは?」
「無かったですね、館内だけです」
「欄ちゃん、お小遣い沢山貰ったけれど、手も握らないのよって話していましたね」
「ありがとう、ございました」
「また、何か有りましたら」
二人は熱海を後にした。
「坂田は即死、自殺の車は盗難車、柳田、南田、丸山、三原、坂田この事件関係で五人死にましたよ」
「ほんとうだ、大事件だな」
二人は大阪に行く事を決めたのだった。
静岡駅に到着すると「一平ちゃん、今静岡着いたよ、今晩朋子泊めてあげるからね」
「そうなの」と一平の残念そうな声だった。
やはり二人と一緒に叔母さん達が静岡で降りたから、二人は急いでタクシーに乗った。
松本刑事が付いてタクシーに、二人の叔母さんもタクシーに、殺し屋達も同じ方向に行くタクシーに、殺し屋が気づいて、「前の車を追い抜いてくれ」と指示した。
そこに救急車が来て、美優達二人の車が信号を曲がったが後の車は止まってしまった。
「誰も来なく成ったわ」後ろを見て言った。
美優が一平に「家に到着、早く帰ってね」
「ごくろうさま」と言った。
一平に松本刑事が「美優さん見失いました、すみません」と電話してきた。
「もう、大丈夫自宅に帰ったと連絡が有ったから、ご苦労さんでした、そのまま帰宅して下さい」
「それでは、失礼します」と松本刑事は電話を切って自分のマンションに向かわせた。
殺し屋達はこのタクシーを尾行していた。
叔母さん二人は諦めて駅前のホテルに戻ったのだった。
松本刑事はマンションに到着して、ほっとため息をついた。
その時殺し屋の一人が後ろから襲いかかった。
いきなり首を絞めて口を塞がれて、後の二人が身体を押さえた。
マンションの裏手に引きずり込まれて、首を締め上げられ気絶した。
公園が近くに有ったからそこに連れ込まれる。
もう一人が車を持って来ていた。
松本刑事を乗せて「予想、通り刑事です、」
「あの二人は刑事に尾行されていたのだな」
真柴に電話で「あの二人の女は奥様を揺すった仲間です、尾行していた女刑事は捕らえました」
「南田達にまだいたのか?奥様の犬が見つからない訳だな」
「この、刑事どの様に?」
「奥様達も見ているかも知れない、報告は明日だろう、殺せ」
松本刑事はそのまま、絞め殺されて、全裸で山の上から転がされて谷に消えた。
身元が直ぐに判らない様に何も身に着けないのだった。
翌日公子に仲間が居ると報告がされて、尾行していた二人の女だと話した。
「その、女から、シェリーちゃんを取り戻して、お願いします」と泣きながら言ったのだった。
静岡に住んでいる女、歳は20代半ば、一人は美人、ショートボブの綺麗な黒髪、もう一人は細身で長身髪はセミロングの薄茶、真柴の人探しが始まった。
松本刑事が自宅に帰らずに失踪した事は翌日には判った。
『これから、自宅に』だったから、静岡のタクシー会社を調査すると、夕方該当の車が見つかった。
非番の運転手の自宅を佐山と一平が訪ねた。
「あの人刑事さんだったのですね」
「はい、自宅のマンションに送りましたよ」
「何か変わった事は?」
「前のタクシーを尾行して欲しいと言われました」
「それは、私の妻の護衛をしていたのです」
「そうだったのですか?」
「他には?」
「緊急車両で、見失ってしまいまして、それから直ぐにマンションに」
「そうですか?」
「ありがとう、ございました」と言って家を出ようとしたら
「刑事さん、これ関係有るか判りませんが、私の前に割り込んだタクシーが有りました、そのタクシーも緊急車両で止まりましたけど」
「それだ」佐山が言った。
もう一度タクシー会社を調べて該当車を探そう。
瑠璃は上田進二に電話、メールで日に二度程、勉強をしようと思う頃に邪魔をしていたのだった。
塾の担任も学校の担任もそろそろ気が付く頃に成っていたのだ。
間島順平は欄と週に一度の食事を楽しんでいた。
「坂田獣医さんも事故で亡くなって、今は奥さんの良子さんが、助手と二人でしているみたいですね」
「あの事故は三原さんの遺体が発見された時だったな」
「間島さん、私達とんでもない事件の中にいるのでは?」
「しかし、警察に公子が犯人とは言えないなあ」
「唯の犬馬鹿ですからね」
「もう関わるのは辞めよう、危険だから、妹ももう手を引かせた方が良いよ」
「はい、そうします」
二人は本当の親子の様に付き合っていた。
翌日にそれらしきタクシーが見つかった。
佐山と一平は運転手に面談して「その三人はプロの殺し屋だな」
顔はサングラス、帽子を被った男とか、タクシーの運転手でも殆ど顔を覚えていなかったのだった。
佐山が「緊急自動車が美優さん達を助けて、松本刑事が犠牲に成った可能性が高いなあ」
「まだ、美優と高木さん狙われますね」
「警護を強化だな」
その夜、久々に一平は早く帰った。
「お帰り、待っていたのよ」
「えー、ご無沙汰だから?」
「馬鹿!そうじゃなくて、先日の尾行の話しよ」
「松本。。。」と言い出して美優には内緒だった。
「あの二人ね、京都の人でね、愛犬家でね、書道の先生か何か?習字の関係ね」
一平がいきなり、美優にキスをした。
「よくやった、流石美優探偵」
「そう?」
「それだけ判れば、絞れる」
そう言いながら抱き上げて、風呂場に行くのだった。
手違い
1-18
「佐山さん、美優がね」
「朝から元気だな」
「重要な情報を手に入れていたのですよ」
「どんな事?」
「先日の尾行の二人ですけれど、京都在住の愛犬家で習字の先生」
「何?それは凄い情報だ、松本刑事が消されたから間違い無く、その二人は事件の関係者だ」
京都府警に調査依頼を届けた。
「明後日から関西に出張だ」
美優と高木には毎日二人の刑事が護衛に付いていた。
真柴も探していたが中々見付けられなかった。
午後に成って、京都府警から該当者は一人、大学教授夫人で書道家の上田公子との回答が有ったのだ。
写真が殆ど無くて判り難かった。
「美優さん、一緒に行くか?反応を見る為に、俺達だけなら、上手に逃げるだろうが美優さんを見たら反応するだろう、唯、危険だが」
真柴は手下を使って美容室に電話で、お客の中で黒髪のショートボブの美人で電話を掛けていた。
タクシーの向かった方角の店から順に、もう毎日の様に公子からの電話で困っていた。
殺人のプロが先走って真理子を殺したのが原因だから仕方が無かった。
美優は月に一度は美容室に行く、ショートは伸びると駄目だからと、一平が喜ぶのも有った。
「京都に一緒に?」
大喜びで、佐山の叔父さんと一緒が気に成るけれど、綺麗にしてこようと思った。
予約をすると夕方5時か明日の朝11時のどちらかと言われて、明日に行く事にするのだった。
真柴の手下が順番に電話を掛けていたら「野平さんの事かな?その方なら明日11時予約されていますよ」と言われて、真柴に連絡がいった。
「可能性が高そうですね」と公子に言うと「南頼子に見に行かせるから準備をして待って、この前の失敗は駄目よ」
「はい、必ず」
シェリーを早く連れ戻したい、もうすぐ子供が生まれるからそれだけだった。
警察が監視しているから、上手に誘導して離せと指示がされていた。
護衛だとは考えて無かった。
人違いなら諦めよう、真柴達は美優の誘拐計画を進めたのだった。
今回は公子の所に連れて行く事にしていた。
この前の失敗は真柴にはショックだったから、殺し屋以外に富田、垣内、早瀬、三島、岩田、そこに美容師の経験の有る吉崎典子が加わって、自分の知り合いの美容師、金沢守も連れて来ていた。
9時に店に三島が入って
「まだなの?」
「すみません、うちは予約制なので」と言うと同時に、サングラスに帽子の殺し屋達が入って来て、当て身で気絶させて、奥で開店準備の美容師も首を絞めて気絶させた。
目隠しに粘着テープで縛られ、口もタオルで猿轡をして、店の休憩室に放り込んだ。
次々と来た従業員を同じ方法で捕らえられた。
六人は気絶したまま、そこに吉崎、金沢、三島、岩田が入り込んで制服に着替えた。
店の外に南と富田、早瀬、垣内が、予約で来た客に「美容師が交通事故で今日は着ていません、すみません」と断ったのだった。
駐車場に二台のワンボックス車がその中に、南と早瀬が、もう一台に富田と垣内が殺し屋達と乗っていた。
外からはまったく中が見えない、殺し屋達は松本刑事の手帳と携帯を持っていた。
店の中では大きなマスクをした三島と岩田が、店内の人達はプロでないから、計画通りに進めなければいけなかった。
殺し屋達が出来るだけ遠くに警察を誘導しなければ誘拐が出来ないから、「時間だ、」そう言って一台が駐車場を出た。
近くの路地に車を止める。
美優が美容院の駐車場にやって来て、直ぐに刑事が横に停車した。
南から(間違い無いわ、この女よ)とメールが届いた。
美優が車から降りて美容室に入ると、「いらっしゃいませ、私、吉崎と申します」
「あれ?いつもの美容師さんは?」
吉崎が「急に熱を出しまして」
「困ったわ、あゆみさんが良かったのだけれど」
「この金沢守も上手ですよ、特にボブは得意ですよ」
「そうなの?明日行かないと成らないから、いいわ、腕を見せてもらうわ」
「じゃあ、シャンプー台に」と座らせた。
仰向けに成って「それでは失礼します」と吉崎が顔にタオルをかける。
何、この匂いと思ったら、身体を三島と岩田が押さえた。
タオルの上から麻酔ガスのマスクが、やがて美優は気を失った。
外では車から松本刑事の手帳を刑事の車の前に落とした。
「あれ、警察手帳?」
刑事が車から降りて拾った。
「大変だ、松本刑事があの車に」
「追いかけよう」車は急いで発進した。
「余り近づくな、松本刑事が危ない」
「判りました」
もう二人の頭に美優は無かった。
「行ったわ」
「可愛い顔して、悪い事するのね、奥様の犬を盗むなんて」
「京都迄の長旅よ」
「少しの間は起きないでしょう」
「で、縛って、タオル咥えさせましょう」
美優はワンボックスに乗せられて、南、三島、吉崎、早瀬、が一緒に乗って出発した。
岩田は店の客を装って「みなさん、どうされたの?」そう言って粘着テープを外して消え去った。
店員が直ぐに警察に電話をした。
警察官が駆けつけた駐車場には美優の車が残っていた。
話を聞いた一平が「美優が危ない」と叫んだが、佐山が「今度は、直ぐには殺されないだろう」と慰めた。
警護の刑事が叱られたのは当然だった。
結局二台とも逃げられて、一台はナンバープレートをはめ込んでいて、全く判らなかった。
「佐山は明日京都に行こう」沈む一平に言った。
「本当に大丈夫でしょうかね」
「美優さんを殺すなら、こんな手の込んだ事はしないだろう、プロに任せれば、先日の尾行に関係が有る」
「そうでしょうか?」
「間違い無い」と佐山は断言した。
それは一平を安心させる為でも有った。
夜に成って美優は地下室に放り込まれた。
「明日まで寝てなさい」
薬を注射されて、眠ったままで起きたのは数分間だった。
上田の奥様が今日は来られないから、明日ゆっくりと尋問するだろう、真柴の事務所の地下の部屋だった。
朝早く佐山と一平が新幹線で京都に向かった。
京都府警の協力も得て、早速上田公子の家を訪れたのだった。
「静岡県警の佐山です」
「同じく野平です」
「静岡の警察が私に何の用かしら?」と高飛車な公子。
「熱海のワールドペットに行かれましたね」
「そうだったかしら?」と知らない素振りで話す。
「何を目的で、そんなに遠くまで?」
「人違いじゃ有りませんか?私が何をする為に熱海に」
「貴女を見た人が居るのですが?」
「人違いでしょう?」
「そうですか?仕方ないですね、また来ます」
一平が「えー」っ、小声で言った。
「それでは失礼します」と佐山は出て行ってしまった。
一平も仕方なく付いて行った。
「何故?もっと、聞かないのですが?」
「一平先程の奥さん、今から出掛ける処だよ、多分美優さんの処だ」
「えー」
「服装と態度が今、出掛けると示していたよ」
「そうなのですか?」
「直ぐに出てくるから」
暫く待っていると、佐山の予想通り南が車で迎えに来て、京都府警の刑事の運転で尾行が始まった。
真柴は美優を地下から出していた。
それは持ち物の中に、一平の名刺を見付けたからだった。
美優は目隠しをされて、京都の公園で解き放され。、
「危なかった、よく調べて誘拐をしろ」
美優は殆ど眠らされていたから、顔を覚えているのは美容院の二人位だった。
尾行して到着したのは「ここは?」
「真柴と云う、愛犬家の事務所ですね」
「怪しいな」外で暫く待機していると
「一平ちゃん、今、何処にいるの?」と美優が電話してきた。
「美優!無事か?」
「訳判らないのだけれど、今、京都みたい」
「えー、京都?俺も今、京都だ、迎えに行くから待っていて」
「銀閣寺って、近くみたいよ」
「よし、急いで行く」
「どうなっているの?」と一平が言う。
「何か手違いが起こったな」と佐山が言ったのだった。
長いキス
1-19
「何故?居ないのよ、あの子」と大きな声で公子が怒った.
「奥様、もう少しで大変な事に成る処でした」
「どういう事なの?」
「誰も顔を見られていないから良かったけれど」
「良くないわ、今から聞き出そうと思っていたのに」
「あの女は犬を盗んだ一味ではないですよ」
「えー、それはどう言う事?」
「あの女は刑事の嫁さんですよ」
「えー、刑事の?」
「直ぐに眠らせたから助かったけれど、顔を見られていたら殺すしかなかったですよ」
「先程、静岡の刑事が家に来て私が熱海のペットショップに行ったかと聞いたのは?それ?」
「奥様、危なかったですね」南が言う。
「南田の店に行ったのは失敗だったわね」
「でも関連は判りませんよ、もうシェリーちゃんを諦めなければいけないかも知れませんね」真柴が言うと「えー、そんな寂しい事、もうすぐ子供も産まれるのよ」と泣き出すのだった。
すると急に怒り出して「じゃあ、誰が?誰が犯人よ、間島の社長?」
「間島の妻と娘の復讐?」
「逆恨みしているの?汚い犬を私に押しつけて?」
「一度間島を調べて見ます」
「脅迫してきた連中がもう一人か二人いるのよね」
シェリーを何処に連れて行ったか?一番気に成る公子だった。
銀閣寺で一平と美優は何も言わないで抱き合った。
周りの人達がドラマの撮影かと思う程だった。
佐山は近くで見ていたが、二人の気持ちが判るだけに目頭が熱く成った。
二人は長いキスをして、漸く落ち着いて車の中で美優は話し出した。
「いつもの美容院に昨日予約していて、11時行ったら、私の専属のあゆみさんが居なかったのね、金沢って男の美容師が上手だと女の人が言ったので、お願いして、シャンプー台に座ってタオルを顔に、すると変な匂いがして起き上がろうとしたら、三人に押さえられて麻酔ガスを、途中車で眠って居て、地下室みたいな場所に入れられる前に注射をされて朝まで眠って居て、気が付いたら目隠しされていて、公園で車から降ろされたの、自分で目隠しを外したら白い車が走り去っていたわ?」
「怖かったね」
「でも何も無かったわよ?不思議なのよ」
「多分人違いに気が付いたのだよ」佐山が言う。
「人違い?」
「何かを聞きたい人が居たのだよ、何かが判らないけれど、美優さんがそれを知っている人に間違われた」
「何故?」
「バックも携帯も有るだろう、バックの中に何か身分の判る物、入っている?」「そうね、運転免許証位ですが?」
「見せて貰っていい?」
佐山が言うので美優が差し出した。
免許証の中を見て「これだ!」と一平の名刺を取りだした。
「これが?」
「そうだよ、これが美優さんの命を守ったのだよ」
「ほんとに」
「この名刺で人違いに気が付いたのだよ、野平美優、野平一平だろう、誰が見ても夫婦だろう」
「そうだったの?嬉しい」
美優がまた一平にキスをした。
「おいおい、もう許してくれ」
「名刺入れて置いて良かったわ」と美優が笑った。
三人は駅迄送って貰って大阪の間島建設に行く事にした。
間島は警察と聞いて、自宅に呼ぶ事にしたのだった。
会社で変な噂が出るのを恐れたから、そして話しの内容次第では?と思った。
夕方三人はタクシーで間島の自宅を訪れた。
「大きな家ね」と美優が言った。
「建設会社の社長だからね、建物は得意」と一平が笑う。
お手伝いの山田千佳子が三人を応接間に案内した。
広い応接間を見渡して二人の目が一点で止まった。
次の瞬間一平と佐山がお互いの顔を見て「ああー」と発した。
「どうしたの?」と美優が変な二人を見た。
そこに間島順平が入って来た。
「わざわざ、自宅まで来て頂いてすみません」
「静岡県警の佐山です」
「同じく野平です、これ妻の美優です」と会釈をした。
「静岡の警察は中々面白いですな、夫婦同伴で来られるとわ」と笑った。
「違いますよ、私は悪者に誘拐されて京都に来ましたの」と怒って美優が言った。
「すみません、余計な事を」と一平が美優を叱った。
「今日お伺いしましたのは、あの方の事ですが?」と佐山が写真を指さした。
間島が不思議そうに「妻と娘がどうかしましたか?」
「えー、娘さんですか?」と一平が驚いた様に言った。
間島が「娘に用事が有っても、居ませんよ」と哀しげに言う。
そこにお手伝いの千佳子がお茶を持って来た。
「すみませんが、妻を別の場所にお願い出来ませんか?」と一平が言う。
間島が不思議そうにみると「捜査の秘密は家族にも教えてはいけないのですよ」と佐山が言った。
「そうでしたか、千佳子さん、奥さんを娘の部屋にでも案内して下さい」
千佳子に連れられて美優は出て行った。
「娘さんは何処に?」
「欄ですか?もう随分前に亡くなりましたよ」
「欄さん?」
「そうですが?」
「病気で?」
「交通事故です、即死でした」
二人は間島が小泉欄に何故会ったか?何故何もしなかったか?
総ての謎が解けたのだった。
「小泉欄さんってご存じですよね」
「はい、知っています」
「すみませんでした、判りましたので失礼します」
これ以上聞く事がなかったのだった。
三人は間島の家を後にしたのだった。
「娘さんの部屋にも大きな写真が飾って有ったわ」
「そうなんだ」
「犬を持った写真だったわ」
「犬?」と佐山が言った。
「この家なら良い犬を飼っていただろうな」と一平が言うと「可愛いけれど、汚い雑種の犬よ」
一瞬犬で、もしかしてあの上田公子と関係が有るのかと考えたが、雑種では関係がないなと佐山は思った。
お手伝いの山田千佳子が追いかけて来て
「小泉欄さんもこの家に何日かいらっしゃったのですよ」
「そうだったんですか」
「ご主人も喜ばれていらっしゃいました、もう来られなくなって随分経ちます」「いつから、こちらで」
「奥様と娘さんが亡くなられてから、暫くしてからです」
「えー、二人一緒に亡くなった?」
「その様に聞いています」
それだけ話すと千佳子は家に戻っていった。
「事故は何処で起こったのだろう?」と佐山がぽつりと呟いた。
「戻って聞いて来ましょうか?」と一平が言ったら「京都じゃない?」と美優が言う。
「何故?京都?」
「部屋に写真が何枚か有って、京都の写真が多かったから」
「それでは決められないよ」と一平が言う。
「じゃあ、私が聞いてくるわ」
そう言って美優が走って間島の家に行った。
「困った探偵さんだ、また誘拐されますよ」と笑った。
暫くして勝ち誇った顔で戻って来て
「ほら、お手伝いさんが、京都だと聞いておりますが、と言ったよ」
「負けました」
「恐れ入ったか」
「お前達お似合いの夫婦だよ」と佐山が笑ったのだった。
三人はその日に静岡に帰って行った。
「小泉欄さんと瓜二つはびっくりしましたね」
「小泉さんは何処に行ったのでしょうね」
「意外と間島さんが隠して居るかもしれませんよ」と美優が言ったら「名探偵かも知れない」と佐山が煽てるように言うのだった。
その時メールで上田公子の家族の写真と職業が届いた。
念のために佐山が京都府警に頼んでいた。
子供は大学生と高校性だから関係無いだろう、と気にしていなかったが、一応「一平が、下の高校性勉強出来るのだ、上は普通の大学生だな、遊んでいる時期だな」と言って見ている。
「美優が見せて、写真」と言って一平の携帯を取り上げた。
「捜査機密だ」
「写真位いいじゃないの」そう言いながら見るのだった。
「この子、見た子やね」と兄の友和の写真を見た。
「何で?知っているの?」
「だって、先程の家の京都の写真に一杯写っていたから」
「何だって?」周りがびっくりする程大きな声だった。
シェリーの子供
1-20
「一平これは、変な処で繋がったな」
「そうですね、びっくりしましたね」
「美優さんは本当に名探偵だよ、これは参りましたな」と佐山が笑う.
「京都府警に交通事故の詳しい資料を至急送って貰え」
「はい」
「交通事故に友和が関係していて、それを知った親父の間島が復讐をしたが相手が一枚上手だったとか?名探偵美優の推理でした」と笑った。
「おい、お前の嫁さん刑事より鋭いかも知れないぞ」
「ほんと!」喜ぶ美優。
「今の推理なら一連の事件が繋がる、小泉欄の失踪は間島が隠して居たら、小泉欄を上田親子が見たら?」
調子に乗って「成るほど、佐山君大した推理だな、美優探偵はそこに小泉欄が誰かに喋ったと思うが如何かな?」と腕を組みながら言う。
「おいおい、調子に乗るな」と一平が笑う。
「いや、その通りかも知れない」と佐山が真剣な顔で言った。
「でも事件の元は何だろう?」と一平が言う。
「そんなの、ワンちゃんに決まっているじゃないの、一平ちゃん判らないの?」
美優は微笑みながら言った。
「何故?」
「態々、熱海のペットショップに行く?あの叔母さんが、尾行失敗したけれど」「そうだな、美優さんの推理の通りだろう」
「私の誘拐もあの叔母さんよ、間違い無いと思うわ」
「それは同感です」と小さく言った。
その時メールが着て(今朝、山で見つかった女性の遺体が松本刑事でした)
「佐山さん、松本刑事が見つかりました」と哀しげにメールを見せたのだった。
「柳田、南田、三原、坂田、松本、丸山この事件で6人目の犠牲者か?」
佐山が言ったら「7人目は間島さん?」
「えー、怖い事言うなよ、美優ちゃん」一平が茶化す。
「いや、警護を依頼した方が良いかもしれない」と佐山が言った。
「叔母さん何を探しているのかな?」
「犬よ」美優が言う。
「そうだろうな、熱海のペットショップに行くからな」一平が言うと「身代金目的のワンちゃん誘拐事件だって」と美優が笑った。
三人で話しているといつの間にか静岡に到着した。
「明日、事件の資料で判るだろう、おやすみ、美優さん大変だったからゆっくり休んで」と佐山が言って、タクシーで帰って行った。
「一平ちゃん、そこでビールでも飲んで帰ろう」と飲食店街に行くのだった。
その後の二人は仲良く酔っ払って抱き合って寝て、朝、電話の音で目が覚めた。
「間島さんが居ないらしい」と佐山の声。
「警護に行ったのでは?」
「遅かった様だ」
「新幹線から電話しましたよ」
「その時はもう居なかった様だ」
「行きます」
「一平ちゃんもう行くの?」と美優が裸の胸を寄せてくる。
「駄目よ、お仕事」
「間島さん、誘拐されたの?」
「判らない」
間島は佐山達の話しを聞いて欄が恋しくなって、小泉のホテルに居たのだ。
そこに携帯でお手伝いの千佳子が「変な人が家の周りに居ますよ」と電話をくれたのだ。
会社には用事が有れば携帯にと言って、連絡を一部の人にしていた。
真柴が間島を捜していたのだ。
昨日佐山達が自宅に行ってなかったら、多分連れて行かれていただろうと怖くなった。
翌日、坂田獣医でシェリーが子供を産んだ。
二匹の可愛い子犬だった。
良子はこの犬は主人が誰かに預かったのだと思っていたが、子供が生まれても誰も来ない、血統書は無いけれど見れば素晴らしい犬だと一目で判るのだ。
子犬がまたとても良いから、これは相当高い雄との交配の子供だと判ったのだった。
美優がその日熱海の坂田獣医を訪れた。
それは自分でも事件の人の、その後を見て見たかったから、ワールドペットにも行く予定だった。
「こんにちは、私、静岡でペット関係の雑誌の編集をしている、野平と申しますが」
「どの様な事でしょうか?」
「何かペットの事で記事に成りそうな事でも無いかと思いまして」
良子は若くて綺麗な女の子だからと警戒する事も無く「貴女の雑誌に尋ね犬とか?飼い主を捜すとかのページ無いの?」
「どの様な事でしょう?」
「実は、私の主人も獣医だったのですが、先日交通事故で他界してしまって」
「それはお気の毒さまです」
「その主人が預かって来た犬に子供が産まれたのですが、誰も引き取りに来られないのです、良い犬だと思うのでもし雑誌に載せて頂けるならお願い出来ませんか?」
「どんな犬ですか?写真撮らせて貰って良いですか?」
「どうぞ、写真が無かったら判りませんからね」
そう言いながら携帯のカメラで数十枚、子犬も撮影したのだ。
「お願いね、私も早く飼い主にと思っているのです」
美優は「判りました」と言って獣医を後にした。
この犬が原因だったら凄い事だわ、そんな事は無いだろう、そう思いながらワールドペットに向かった。
今度は刑事の妻だと言って話した。
泉田公平が居て「この犬が小泉さんの犬?」と美優が聞いた。
「そうです、欄さんどうしたのでしょうね」
「大丈夫よ、もうすぐに会えるわ」と慰めるのだった。
美優は「この前、この犬を見に来た叔母さん、どんな犬探していた?」
公平が店の人達に聞いた。
「可愛いシェリーちゃんを京都から迎えに来たと言っていたそうですよ」
「ありがとう」美優は重大な事を聞いたと思った。
先程の犬が本当にシェリーなら、とタクシーで急いで戻ったが、急患の為診療は休みの張り紙が、仕方なく熱海を後にした。
夕方事件の有った美容室に向かった。
それは事件の事と髪を整えに行ったのだった。
「先日は大変でしたね」
「そうでしたわ、私が狙われていたって思いませんでした」
「店の者も怪我もなくて良かったです」
「先日の事なのですが、美容師さんとか、名前とか顔は判るのですか?」
「多いですからね、有名な人は自分から売り込んでネットに掲載していますね」「先日ね、此処にいた、金沢と吉崎と名乗っていたのですが、調べる方法有りますか?」
「中々難しいですね、でも一応探してみましょう」
「金沢守は男性で30歳前後、吉崎は30歳後半ですかね、お願いします」
「丁度あゆみさん、空いたみたいです、どうぞ」
美優は恐々シャンプー台に座ったのだった。
夜一平が帰ってきて「おお、美優綺麗に成ったね」と褒めたのだった。
翌日公子に進二の塾の担当から電話が有り、最近成績が落ちてこのままだと目標の大学は全く無理だ。
最近は女性に夢中で勉強が全く駄目だと連絡が有った。
公子は怒りを進二ではなく進二を駄目にした女に向かった。
進二から携帯を取り上げて調べた。
そしてこの女の素性を調べる様に指示した。
進二が「お兄さんの紹介の女の子だよ」と言った。
さらに「お兄さんが以前付き合っていた、女の人にそっくりの人で、今お兄さん付き合っているでしょう」と言う。
友和に尋ねたが全く知らなかった。
「その女の人の妹さんだよ、名前は工藤留美子さん、お姉さんは工藤好美さん」
携帯に写真が一杯有った。
南が恥ずかしく成る様な写真も多数、その中に一枚間島欄に似た写真が有った。
「奥様、これは?」と見せたのだった。
「間島の娘じゃないの?あの子に妹はいないわよ、一人っ子よ」
「この携帯でこの子呼び出しましょうか?」
「来るか?今までの3~4回しか会ってないと進二が言っているからね」
「メールと写真はもの凄く多いですがね」
「女子高生が喜ぶのは?」
「判りませんね、でもお金が一番じゃ」
「じゃあ、その方法で捕らえて、その可愛い顔ズタズタにして、進二を勉強出来なくしたお返しをしてやれ」
「奥様、これで見ると間島欄に似た女が居ますね」
「私が発表会で見た女ね、その女も捕まえ無ければ」
公子は間島が自分の娘に似た女を捜して自分達を脅かして、シェリーちゃんも誘拐したのだと思い始めていた。
妹
1-21
美優は先日の坂田獣医に電話をした。
「昨日お邪魔しました雑誌の野平ですが、今そこに居るワンちゃんの名前シェリーちゃんと言うのでは?」
「それは判りませんが?」
「反応するか?呼んで貰えませんか?」
「お待ち下さい」
暫くして「反応しました、飼い主見つかったのですね」
「はい、見つかりましたが、もう少しの間預かって下さい」
「判りました」
美優は自分の携帯番号を教えて何か有れば電話を下さいと言った。
美優は誰かが誘拐をして身代金を取ろうとしたのだ。
そして逆に殺されたか?
それとも犬の失踪と殺人は別の事件なのか?
あの叔母さんは犬を探しに熱海まで来ただけなのか?
一平に教えて警察にまかせるか?
誰かが坂田獣医に預けて死んだ?
あの、交通事故の事判ったのかしら?
「一平さん、京都の交通事故の事何か判ったの?」
「警察の機密を教えられない、けれど、普通の信号無視の事故で処理されているね」
「そうなの?何か有ると思ったのだけれどね」
「気持悪い写真なら一杯来ているけれどね」
「事故の写真?」
「そうだよ、交通事故は痛ましいね」
「私にも見られるの?」
「駄目だよ、部外者だから」
「じゃあ、こちらも教えてあげない」
「何を?」
「重大ニュース」
「妊娠か?」
「何言っているの?まだ作らないの」
「警察に来てチョコットなら」
「そう、行っても良い?」
「直ぐなら誰も居ないから」
「行くわ」美優は急いで車で県警に向かった。
「一平ちゃん」玄関に居たから声がでた。
「これだから、そこの部屋で見て、」
「トイレじゃないの」
「そう、そこが安全」
美優は仕方無く資料を持ってトイレに美優が入った。
美優は携帯で次々写真に写して資料を一平に返した。
「ありがとう」
「気持悪かった?」
「全然」
「嘘」
「帰るね」美優は微笑んで帰っていった。
家に帰った美優は携帯で撮影した写真を大きくして一枚一枚丁寧に見ていった。
その写真の一枚に小さな籠の様な物が写って居た。
これは何かな?コピーをして更に拡大した。
美優はペットショップのサイトを開いて籠の様な物を探した。
根気の仕事で、執念で見つけた時もう外は暗く成っていた。
「有った、これだ」子犬を入れる籠だった。
美優は子犬を貰って帰る途中に事故に遭った。
でも何故?子犬と事故?シェリーの誘拐?
そして沢山の殺人?バラバラだな、子供より可愛い犬か?判らなかった。
南頼子は一か八かでメールを送った。
それには(お母さんは凄い愛犬家で、今度産まれたチャンピオン犬の子供を僕が留美子さんに差し上げてと言ったら許してくれた。トイプードルで百万円するよ、今度の日曜日に会って渡したい、塾の前に16時に来てくれないか)と、中々未読状態だったが、ようやく読んだ様だ。
南はこれで、後は結果を待つだけだと考えていた。
瑠璃は完全に進二はもう自分の虜になっていると確信していた。
本当に犬貰えるかも、貰ったら直ぐに売ってお金に出来る。
進二には興味が無かったが、お金には大きな魅力を感じていた。
姉に言うと反対される可能性が有る。
瑠璃は貰いに行きますと送ったのだった。
「奥様成功です、瑠璃は来ます」
「これで、姉も呼べるな、シェリーちゃんの居場所が判る」と喜んだのだった。
欄から瑠璃に「もう、相手にしてないでしょうね、危険だから、近づかないでね」
「判っているよ、もう連絡していないよ」と瑠璃は答えていた。
真柴は間島の捜索を止めていた。
もう間島はいらないと公子が言ったからだった。
日曜日に何処か大きい声を出しても構わない場所探して、進二を駄目にした女にお仕置きをそして姉も連れてきて、シェリーちゃんを取り返すのよ、と興奮していた。
暫くして「撮影所借りましたよ」と真柴から連絡が来た。
「何を撮影するのよ?」
「小さな撮影所ですが、色々な作品で声をあげたりするから不思議じゃあないでしょう」
「成るほどそれは面白い」
「女の口を割らせますよ」
「姉妹を許せないわ、シェリーちゃんがどの様に成っているか心配よ、もう可愛い子犬も産まれているのよ」そう言うとまた泣くのだった。
翌日美優は判らないから、揺さぶりをしてやろうと考えた。
「奥様にお見せしたい、写真が有るのですが?」といきなり上田の家に電話を掛けた南が電話に出て「貴女どなたなの?」
「名前はシェリーとでも呼んで」
「えー、貴女は誰よ、シェリーちゃんを知っている人ね」
「そうよ、メールアドレス言うから書き留めて」南は慌てて紙に書いた。
「今のアドレスに、写真を受け取れる携帯のアドレスから空メールを送りなさい」
「はい」
「そうしたら面白い写真送ってあげるから」
「はい、判りました」南は低姿勢に成った。
もし怒ってシェリーちゃんを殺されでもしたら、自分の命が無いから慌てた。
公子は今日は撮影所の下見に行っている。
南は自分の携帯から空メールを送った。
すると交通事故の写真と籠の写真が送られてきたのだ。
南は腰を抜かす程驚いたのだった。
間島欄の事故の話しは知っていたから、公子が午後遅く成って意気揚々と帰って来た。
南が青い顔して「奥様大変です」
「どうしたのよ」
「シェリーと名乗る女からメールが届きまして」
「何故シェリーちゃんを使うのよ」と怒った。
「その女が預かっているらしいです」
「何―――」と大声を上げた。
「何故判るのだ」
「これ見て下さい」と携帯の写真を見せると、公子の顔色が変わった。
「両方の事を知っている意味ね」
「他にも写真有るそうです」
そう話している時にメールが届いて「可愛い子犬が二匹写っています」と公子に見せた。
今度は公子が泣き出した。
「シェリーちゃんの子供、子供よ、良い子産んでいる、流石よ」と泣き止まないのだった。
これは「留美子の姉が送っているのよ、妹を捕まえたら立場が逆転よ、シェリーちゃんを取り戻すわ」今度は怒るのだった。
「その写真頂戴、今夜は抱いて眠るわ」そう言った。
南も呆れていた、あの人の価値観は何なの?
美優はまた坂田獣医に電話をして、動画を送って欲しいと頼んだのだった、
今頃あの奥様気が狂っているかもね、そう思っていたら思わず笑ってしまった。
美優は朝8時から夜12時までの間、いつでもメールを見られるようにしてないと、受け取ったらお礼のメールを忘れない事、シェリーちゃんを殺すよと脅かしのメールも送ったのだった。
それを見た公子が「何を生意気な」とまた怒りを露わにした。
するとまたメールが届いて子犬の動画だった。
「奥様これが、届きました」と見せたら「可愛いじゃないの、動いているわ、早くお礼のメールをしなさい」と変わるのだ。
今度は飽きるほど繰り返してみるのだった。
日曜日進二の塾の前に、これから撮影します、の看板が立てられたのは15時半だった。
こんな場所で何の撮影だろう?と塾に出入りする人も興味津々だった。
16時少し前に瑠璃は来た。
そこにワンボックスの車が近づいて、二人が車から降りて瑠璃を車に連れ込んだ。
「きゃー、」
「助けて-」と叫んだが誰も反応が無かった。
走り去る車を見て「上手な演技だった」
「リアルよ」
「凄いわ」
「何処にカメラ有るのだろうね」と口々に言う。
富田と岩田が看板を、にこにこしながら片づけて去っていった。
タオルで猿轡をされて粘着テープで手を縛られて、瑠璃は車の中に恐怖の顔でいた。
横には手提げの鞄が有った。
お姉ちゃんの忠告を聞くべきだったと後悔が頭の中を巡った。
美優の奮闘
1-22
撮影所に真柴をはじめ、公子、南、吉崎、三島が待っていた。
瑠璃の到着を待っていたのだ。
美容師の吉崎を公子が呼んだのだ。
裸にしてリンチも良いが、女の髪は命だから、脅しに使おうとしていたのだ、
中央には散髪屋の椅子が置かれて、横には散髪屋で使う道具が置いて有った。
女子高生を脅すには充分だった。
問題はシェリーちゃんを取り戻すのが第一の目的だから、必死だ。
暫くして車が到着した。
車から引きずり降ろされて、猿轡が外されて「私をどうするのよ」
「まずはお姉さんを呼んで貰おうか」
「何故よ?」と言うと三島が平手打ちをした。
「逆らうと傷がつくよ」
「立ち話も大変だろう、腰掛けさせてやれ」と真柴が言う粘着テープを外して散髪椅子に座らせて縄で身体を縛り付けた。
「綺麗な長い髪をしているね、此処は散髪屋だからな」
「そんな、事止めて下さい」
「お前の考えひとつだ」
カット用クロスを首に巻いて、電気バリカンのスイッチを入れた。
「判ったわ、呼ぶわ」
「そうか、何番だ?」
「バックに携帯が二個入っている、白の方を下さい」
手を動かせる様にした。
「どう言えばいいのですか?」
「お姉さんはこの顔か?」と進二の携帯の写真を見せた。
「そうです」
「何処に居るのだ、姉は」
「。。。。」
吉崎が髪を持って挟みで切った。
「止めて」
「美容師だから綺麗にも出来るが逆らうと坊主にする」
「ホテルみずたです」
「すぐ近くじゃないか」
「電話でホテルの前に直ぐに出てくる様に言え」
「。。。」
すると「奥様、メールです」と南が言った。
シェリーの後ろ姿だった。
「妹は預かったと返信してやれ」
「はい」
その間にまた髪を切った。
「電話します」と瑠璃は怯えるのだった。
美優は何だ?これ妹って?何よ?
(妹?居ないわよ)と送ったのだ。
「奥様、妹いないと帰って来ました」
「もうすぐ、気が動転するよ」と笑った。
「お姉ちゃん、助けに来て」と瑠璃が泣いた。
「何言っているの?」
「お姉ちゃんの忠告聞かなくて進二の親達に捕まって坊主にされそうなの」
「馬鹿じゃないの、何処にいるの?」
「判らない、ホテルの前に向かえに行くって、出て来てよ」携帯を切った。
小泉欄は間島に成り行きを連絡した。
坊主ではすまない、殺されると欄は思った。
自分も行けば危ない、しかし妹を助けに行かなければ、間島は決断した。
名刺の刑事に電話で「佐山さんおねがいします、間島です小泉欄さんと妹さんが殺されそうです、助けて下さい」
「えー、何処です」
「ホテルみずたです」
「判りました、私も京都に至急向かいます、間島さん今は?」
話しながらメモを一平に渡した。
「大阪の会社です、私も京都に行きます」
「一平行くぞ」
「18時11分の(ひかり)です」
静岡から四人の刑事が向かう事に成った。
京都府警がホテルみずたに急行したが、欄は出た後だった。
一平が自宅に「京都に出張だ、今夜は帰れない」
「どうしたの?」
「間島さんから、欄さんと妹さんが殺されると電話が有ったのだ」
「判ったわ、気を付けて」
美優はメールの意味が理解出来たのだった。
(シェリーが死んでもいいの?)
「奥様こんなメールが」
「まだ出て来てないの、ホテルから」
吉崎に切れと指示瑠璃の髪がまた切られた。
「妹が死んでも良いのかと送れ」
「はい」
「シェリーが先に死ぬ、子犬から殺そうかって、来ています」
「それは駄目、駄目」
「判った、妹は殺さないと送れ」
「はい」
また髪を切れと指示した。
そこに富田と垣内が欄を連れてきた。
それを見た公子が、間島が変わって脅迫しているのかと思った。
「欄姉ちゃん助けて」と泣き出した髪は相当切られていた。
「何しているの?妹を離して」
「五月蠅い、縛って黙らせろ」
欄を縄で縛って猿轡をした。
「奥様、姉妹に指一本でも触れたら、子犬から殺す」と「駄目よ、駄目よ、何もしないと伝えて」公子は犬が心配で、心配で仕方が無いから「間島と話しをさせろ」と欄に言った。
欄が首を振ると、吉崎が瑠璃の髪を切った。
「助けてーお姉ちゃん」と瑠璃が泣きわめくので、欄は頷いた。
猿轡が外されて携帯で間島にかけた。
「間島さん、上田の奥様が話し有るそうです」
「判った、代わって」
公子は携帯を受け取ると「貴方ね、奥さんと娘さんが亡くなった事を根に持って私の。」
「奥様、動画が送られて来ました」
それはシェリーが子犬に母乳を飲ませる姿だった。
「泣き落としなの」
「何の話ですか?」
「今、動画を送ったでしょう」
美優が南に『奥様、馬鹿じゃないの?間島さんも欄さんも関係無いわよ』
公子は間違いに漸く気が付いた。
別人だ!でも此処の事を知っている何????
間島の電話を切った。
そして「落ち着きましょう、シェリーが危ないから、この二人には触らない様に」と言って頭を抱えてしまった。
美優は坂田獣医に電話で事情を話して、似た犬の画像を下さいと言った。
具合の悪いとか子犬が死んだ写真とか、何でも良いから下さいと頼んだ。
一平達が到着して彼らを捕まえるまで、二人の命を守らなければと必死だった。
20時には京都に着く、それまで頑張らないと、二人の命は美優に託されているのだった。
そんな事はまるで知らない一平と佐山は
「何処に連れ去られたか、判らないらしい」
「一足違いで小泉欄さんが連れ去られたらしい」
「結局小泉欄さんと妹さんが何故?捕らわれたのですかね?」
「判らん、」
その時、間島が電話をしてきた。
「今、上田の奥さんと話ししたのですが、犬を返せとか意味不明の理由でした」「それで小泉姉妹は?」
「よく判りませんが、無事ですね、別の誰かに話すか?メールでしょうね」
「誰でしょうね?」
「だから、今の処は安全みたいです」で電話は切れた。
「誰でしょうね?」
「そうだな、まるで我々が行く迄時間を稼いでくれている様だな」
「本当ですね、助かりますね」
「意外と美優さん、だったり?」
「うちの嫁さんは、今頃一杯飲んでいますよ、僕が帰らないから」と笑うのだった。
美優は必死だった。
「奥様、20時迄何もしない事よ」と着ています。
「この写真付きで」と見せると「わーあ」と青ざめて
「後少しだから、何もしないでね」子犬の死体の写真だった。
真柴は緊急的に殺し屋五人が必要になるかも知れないと近辺に待機させていた。
今の公子はもう普通の状態では無いから、自分の脱出と暗殺の両方を考えて、密かに呼び寄せた。
泣き止まない瑠璃に苛つく公子が「もっと切ってやれ、五月蠅い」と叫んだ。
吉崎が髪を持ってハサミでばっさりと切った。
「わー、止めて」
「泣き止まないと本当に坊主よ」と吉崎に言われて、我慢する瑠璃だった。
佐山と一平達には長い二時間だ。
「大丈夫でしょうか?」
「判らん、しかし京都に着いても何処を探せば良いか判らんし、な」
「そうですね、今夜中に見付けなければ、多分二人は殺されるな」
「沢山の殺しも総て彼女ですかね?」
「違うだろう、そこまで出来ないだろう、彼女も危ないかも知れない」
「えー、本当ですか?」
「みんな、最後は自分が可愛いものだ」
新幹線は名古屋駅を発車したのだった。
「妹を虐めるのはもう止めて」
欄が公子に懇願した
「お前が身代わりになるのか?」
そう言われて黙ってしまったが、欄を瑠璃と交代させろと命じた。
今度は欄を散髪椅子に座らせて、縛ってカットクロスを巻いて「姉が妹の代わりだ」と笑う公子に「こんな、動画が届きました」と見せた。
シェリーの動き廻る姿だった。
「可愛い、可愛いシェリー」と言いながら見ると直ぐにメールで
(これ以上姉妹を傷つけると、歩けなく成るよ、シェリーちゃんがね)
「わー、怖い、吉崎此処は誰かに見られている駄目、触ったら」と叫ぶのだった。
殺し屋五人が来て、真柴はトイレに行く振りをして消え去って行った。
一人の殺し屋を残して消えたが、誰も気が付かなかった。
救出
1-23
「佐山さん、京都に着いたら、何処から探しますかね?」
「先日の真柴の事務所が怪しいと思うが、な」
「美優が連れて行かれた可能性の高い処ですよね」
「先日もあの上田の奥さんが行っただろう」
「京都府警に待機と駅に迎えに来て貰ってとお願いしますか?」
「そうだな、殺人鬼が居るから、完全な体制を頼んだ方が良いだろうな」
『はい、急ぎます』
「米原か」と佐山が独り言の様に言った。
「米原辺りね」美優も独り言を言った。
そして連続で子犬とシェリーの写真を送った。
「奥様、これ見て下さい、一杯ですよ」
写真を見た公子が「おおおーー、可愛い、可愛い、会いたいね」と携帯にキスをする。
欄は呆れて見ている。
瑠璃はまだ小さく泣いている。
(今から、届けてあげるわ、姉妹と交換よ)
「奥様メールです」南が見せる。
「えー、届けてくれるの、わー会えるのね」
「危なくないですか?」
「犬を持って来たら、捕まえて殺せば良いじゃないか、私をこんなに苦しめて生きてられると思うの、ねえ真柴さん」
「真柴さん居ませんが?」
「何処に行ったの?」
「トイレです」殺し屋が言った。
(私は、行きませんから犬を別の者に届けさせますからね^^)
「奥様、聞こえていますよ、ほら」とメールを見せる。
公子は周りとみんなの顔を見て「誰なの、教えているのわ」と叫き「怖いわ」と言うのだった。
(何処に届ければ良いの?)
「奥様、これ」と南がメールを見せる。
「仕方ないわね、教えないとシェリーちゃんにも子供にも会えないしね」
「危なくないでしょうか?警察かも?」
(お金も百万用意しておけ、子犬はその時だ)
「これ、見て下さい」
「うーん、賢い奴だ、子供はまだ、返さないのだ、百万の金位で」
「教えますか?場所」
「当たり前じゃないの、何処の警察が犬を誘拐して身代金を取るのよ、貴女馬鹿じゃないの」と南に怒る。
「百万明日渡すから、子供も明日返してと送りなさい、丁寧によ、怒らすと怖いわ」
(明日、百万渡すから子犬も直ぐに返して下さい)
(判った、明日は私が子犬を持って行くわ)
「これ返事です」メールを見せるのだった。
「佐山さん、到着しますね」
車内にアナウンスが流れる、その時いっぺいの携帯に(静岡県警の諸君ご苦労様、場所はアールケイスタジオだ、至急、姉妹の救出に向かいたまえ)
「何ですか?これ?」と佐山にメールを見せた。
「念の為だ、二カ所に別れよう、本体の京都府警と二人は真柴事務所に、俺と一平と京都府警数人でこのスタジオに行こう」
もう到着ホームに電車は滑り込んで居た。
「すみません、警察です、先に行かせて下さい」
「一平、場所を府警に確認させておけ」
「知らない、アドレスですよ、悪戯かも?」
「かまわん、確かめないといかんだろう」
人をかき分けて階段を走り降りる。
駅前には数台のパトカーが非常灯を廻しながら待機していた。
「よし行こう、お願いします」そう言って車は駅を後にした。
「途中から音も総て消して近づけ、人質が危ないから」
数台のパトカーが合流して走る。
途中から二台に成って一台は覆面パトで佐山と一平、警察官が五人でスタジオに
「もうすぐ着きます」と警官が言った。
(もう、到着するから、姉妹を帰す準備をしたか)
(はい、いつでも)
二人は縄も解かれて待たされていた。
「佐山さん、此処ですよ」
「人の気配がするな」
「殺し屋が居るから、拳銃を用意して」
「はい」全員が拳銃を持って身構えた。
「よし、行くぞ」と扉を開いた。
「警察だ、大人しくしろ」、
「手を上げて、集まれ」みんなが移動始める。
「奥様、言ったでしょう、危ないって」と南が話した時、上田公子は大きく倒れた。
「奥様――」
左の胸に鋭いナイフが突き刺さっていた。
一面に血が流れ出て「きゃー」
「わー」とか騒ぐ、佐山が公子に駆け寄ったが、既に息が無くなっていた。
「救急車を二台、を」と佐山が言う。
「応援を送って貰え、全員逮捕だ」騒ぎの中、殺し屋は姿を消していた。
真柴は事務所に居て警察が乱入してくると「何か?有りましたか?」
「此処に、小泉姉妹を捕らえているだろう」
「自由にお探し下さい、何の事だか理解出来ませんな」と悠然としていたのだった。
その時佐山達から連絡が入って救出したと連絡が入って、警察は引き上げた。
「あの公子が居なければ中々、殺人事件の解決は難しいだろう」
そこに公子を殺した男が帰ってきた。
「ご苦労だった」
「どうも」
「しかし、金の出す処が減ってしまったな」
公子の家から犬の血統書とか、我々と関わりが有る物を持ち帰る様に指示した。
美優が南にメールを送ったが返事が無かった。
終わったのだと確信して、疲れたわ、と大きく背伸びをした。
(静岡県警の諸君、救出ご苦労だった、気を付けて帰りたまえ)
「佐山さんまた、メールが着ましたよ、救出ご苦労だって、何故判るのですかね?」
「怖い世界だな」
「スパイが居たのですかね」
「間島さんに、小泉さん達が行く病院教えてあげなさい」
上田公子が死んで真相が闇の中になるかも知れないと佐山は考えた。
一応京都府警に取り調べは任せて、佐山達は翌日静岡に帰る事に成った。
南田、柳田、三原、松本、丸山殺しの関係自供が有ればまた捜査をする。
今回は形上、上田公子が小泉欄姉妹を誘拐監禁、上田公子が殺害された事件に成ったのだった。
翌日朝から二人は小泉姉妹の病院に行った。
午後から警察の取り調べが有るらしいので、病室には綺麗にショートカットになった瑠璃と欄。
そして間島が午後の取り調べに一緒に行く為に二人を迎えに来ていた。
「元気に成って良かったね」
「ありがとうございました」
「でも変でしたよ、私達が危なくなったら、あの上田にメールが届いて、助かるのですよ、私も坊主にされる寸前でした」
「それって?」
「私が捕らえられてから、直ぐに始まりましたよ、メールの交渉が」
「どうやら、上田の愛犬を誘拐している人じゃないでしょうか?」
「シェリーちゃんがと言って、泣き喚きでしたから」
間島が横から「もう判ってらっしゃると思いますが、娘の欄が原因なのです、欄と上田の息子友和は大学のサークルで知り合って付き合っていたのです、犬好きの女性なら交際を許すと言われた友和は娘に聞いたら娘も高校の時拾った犬を飼っていましたから、まあ嫌いじゃなかったと思いますよ、ある日子犬を貰って欲しいと友和から申し出が有ったのですが、二匹も飼えないと私が怒ったから、
友和が友達に内の飼っていた犬を譲るから、貰ってくれと強引に言われ、娘も友和と付き合いがしたかったので、申し出を受け入れて、京都まで妻と貰いに行ったのだそうです、私は丁度海外に出張中の出来事なのですが」
二人は黙って聞いていた。
「その帰りに、私の想像ですが?妻と娘の車の横を友和が内の飼っていたフレールって云うのですが、それを連れて車で走り去った、妻は京都生まれの京都育ちだから、友和が曲がった先に、犬を処分する施設が有る事を知っていたのです、
その事を娘に話したから慌てて後を追ったのだと思います」
「それで、赤信号に突っ込んだ」
「そうです多分、その後海外から帰った私は何も判らなかったし、二人を失って失意の底の毎日でした、会社の慰安旅行で、この欄さんと知り合って、不審に思っていた事故の真相を探ろうとしました。
欄さんが急にお金を持っている事に、南田達が不審に思って近づいてきたのです。上田公子はお金で解決する予定だと思っていたら、いきなり南田さんと柳田さんが殺されて怖くなって逃げていました」
「公子は事件の真相が暴露されて、継続で揺すられると思ったのですね」
「小泉欄さんがあまりにも娘に似ていた事が、恐怖を煽ったのだと思います、
柳田さんを欄さんだと思って顔を潰したのがその証拠でしょうね、それが別人だったと気が付くまでは相当時間が有ったと思いますね」
その時電話が府警から掛かって「今の話しの裏付けが、有りましたよ、友和が母親に言われて直ぐに間島さんの犬を処分しに行ったと、まさかその後あの様な惨事が起こるとは思いもしなかったと言ったそうです」
「どんな犬でも飼えば可愛いのに、本当の犬好きでは有りませんね、上田さんは」
「じゃあ、行きましょうか」
「我々もまだ事件が残っていますので、一旦静岡に帰りますが、また、協力をお願いするかも知れません」
一平と佐山は午後の新幹線で帰っていった。
狙う
1-24
新幹線の中で一平が「誰が公子の犬を誘拐して、姉妹を救ったのでしょうね」
「誘拐した人はもうこの世に居ないのかも知れないぞ」
「じゃあ、メールの写真とかは?」
「事件の真相を我々よりも早く知った人がいたのだ」
「警察より早く事件の真相を知って、姉妹を助けて逮捕させたのですか?」
「それしか考えられない、正確な場所、時間、それが判らないと出来ない芸当だとは思わないか?」
「間島さんの話で南田さんと柳田さんの事件は判りましたね」
「府警が真柴達を逮捕出来るかだな」
「そうですね、あの現場に居たら、逮捕出来たのですが、」
「後は残った者たちの自供待ちだな」
そう言ってから、一眠りするよと佐山は言うのだった。
県警に帰ると、京都府警から取り調べで、南頼子がメール交渉でやられましたと言っていたと、また資料を送ると云ってきた.
まだ真柴を捕まえる材料に苦労している様だった。
殺人関係に捕まった連中は関与が少なかったから、断片的には判っても決定打がなかった。
「美優待って居ますので、今日はこれで帰ります」
「名探偵に宜しくな」
「また調子に乗りますから、褒めたら駄目ですよ」そう言いながら帰っていった。
真柴があれは誰なのだ?
あの一連のメールで上田のお奥さんを殺人まで追いやった奴は?
犬の事を知っている?あの姉妹を知っている?
奥さんの犬を飼える場所?ペットショップ?獣医?
「この血統書の犬を探して金にするか、ついでに、あのメール野郎もぶっ殺してやる」と怒りを露わにするのだった。
一平が自宅に戻って「只今、美優!寂しかった?」
「いいえ、面白かったわ、ニュースで見たけれどあの叔母さん殺されたのね」
「そうなのだよ、僕達が踏み込んだと同時位に殺されたと思うな、」
「事件は終わってないのね」
「殺人者達は一人も捕まってないと思う」
「何人位の人が殺人しているの?」
「4~5人かな?」
「怖いわね」
「今度は何をするだろう?」
「恨みを晴らすかな?」
「誰の?」
「公子を殺した奴の」
「殺人者が殺したのだよ」
「それは口封じでしょう、本当は殺したく無かった」
「そうか、流石に名探偵だな、それでその恨む奴は誰?」と一平が言うと美優は自分を指さして笑った.
「面白い、冗談」そう言いながらお風呂に誘うのだった。
美優も佐山も同じ事を考えて居た。
次に狙われるのは泉田、多分もうすぐ小泉欄が帰って来る。、
でも悪いが囮に成って貰おうかと佐山は考えたのだった。
「美優何を考えているの?」
そう言いながら抱き寄せ、そしてキスをしていた。
翌日から真柴は殺人者に小泉欄を見張らせてい。、
自分の手下達に罪は軽いし、総て公子に命令されて仕方なく行ったと言えと面会の弁護士に話させていた。
それは殆ど当たりだったから、進二は大学受験を諦めて、父親も大学教授を退職、友和も大学を中退した。
南の携帯のメールの記録が静岡県警にも送られてきて、佐山と一平は凄い駆け引きだなと見ていた。
「佐山さんこのアドレス、僕に来たのと同じですね」
「そうだろう、我々の行動も知っていたのだよ、新幹線の時間まで計算されている」
「でも、凄い事しますね」
「お前は凄いの、貰ったよ」と笑ったのだった。
佐山にはこのメールが誰なのか判ったから、しかしそれは誰にも言えない。
勿論本人にも、殺人者達が知れば家を吹き飛ばすかも知れないから当分秘密だ。
いや永遠に秘密の方が一平も幸せかも知れない。
「ところで、帰ったら美優さんに、次に殺人者が狙うのは誰って聞いてみて」
「もう聞きましたよ、そうしたら自分を指さしましたよ」
やはりなと佐山は思った。
「いや、今晩だよ、もう一度聞いてみて」
「何故?」
「多分俺が思っている人の名前を云うと思うがな」
「それは誰です」
「まあ、お楽しみにしておこう」と笑ったが、佐山は本当に凄いと思っていた。
彼女の働きが無かったら今頃、三人死んでいた可能性も有ったから、感心してしまった。
夜、一平が「美優名探偵に次に殺人者達が狙う人を聞いて見てと言うのよ」
「昨日の答えじゃないとね、泉田公平よ多分ね、もうすぐ小泉欄さんが帰ってくるから」
一平にキスをした。
不意だったので一平が驚いた。
「今のが、答えよ」
「判った、今夜もSEXしたいのだね」
「馬鹿じゃないの」と笑った。
翌朝「どうだった?」
「それがね、笑いますよ泉田公平よ、チューしてそれが答えよ、だって言うのですよ」
「流石だな、そこまで読んでいたか」
その後の捜査会議で佐山は、24時間泉田公平を監視警護しましょうと発言した。
理由は小泉欄が泉田公平に迷惑をかけたから、今まで以上に愛情が湧く、そしてまめマメと云う欄の愛犬を世話していたから、欄は公平と結婚までいくだろう。
殺人者達は、公子の愛犬を誰かが隠して飼っていると思っている。
例の交渉メールの主が泉田だと思うから殺しに来るから、そこを逮捕するのだ。
数日後予想通り小泉欄は熱海に戻ってきた。
本田百合に連絡をして今夜お店に行くと言った。
それは公平と食事をしてから行くと言う事だった。
欄は公平の勤めるペットショップに向かった。
刑事が警護して、殺人者も尾行していた。
「ごめんね、公平君」そう言って欄は抱きついた。
周りのみんなも事情は知っていたから、拍手をするのだった。
「マメ、元気だった」と欄が抱き上げると、喜び一杯に表情に表した。
「どんなに、高い犬もマメの愛情は表現出来ないわよね」そう言って頭を撫でるのだった。
「公平さん電話で話した様に、今夜私の友達の店にも行こう」
「その予定にしています」
静岡県警に京都府警から、監視をしていた真柴が熱海に向かったと連絡が入った。
佐山は多分公平を捕まえて、公子の犬の所在を聞こうとするだろうと考えていた。
但し聞く為に欄に何をするか判らないのが心配だった。
夕方公平の勤務が終わるまで待って二人は食事に行った。
熱海の商店街の料理屋さんに、此処からなら歩いて百合の店に行けるから、殺し屋達はもう既に百合の店を調べていた。
それは、熱海に帰れば必ず会うだろう事を、山城屋の母の事も調べていたのだ。
真柴は今夜の宿を山城屋に予約をしていた。
それは山城屋と昔関係が有ったから、暴力団関係の繋がりだったから、断れなかった。
五階の上に屋上が有ってその横に露天風呂と部屋が有るのだ。
特別なお客しか泊まらないのだが、真柴はその部屋を要求していた。
仲居の民子もあれは物置?旅館の持ち主の家と思っていたのだ。
百合はスナックを代わっていて、(スナック赤い鳥)に勤めて居た。
開店は8時だが今夜に限って早くから来ていた。
欄が早く行くかもと言ったからだった。
久しぶりに会えるうれしさも有って早く来たのだ。
店主が来るのはいつも10時頃で夜は遅くまで営業するのだ。
芸者とかコンパとかと一緒に来る客も多い歓楽街だから、客足は遅いのだった。
まだ、8時前なのにもう扉が開いた。
欄早いと思ったら危険な匂いの男が二人だった。
「あの、まだなのですが?」
「ビール位有るだろう」
そう言われて百合は恐る恐るビールを出した。
ふたりは「お前も一杯飲め」と言われて仕方なくグラスを差し出した。
「乾杯だ」
「乾杯」と小声で言った。
一口飲んで置くと「もう一本持って来い」と言うのでまた持って行く。
「グラスを空けて、もう一杯注ごう」
もう一人は飲まないのだった。
百合が一杯を飲み干して「さあ、注ごう」と言う言葉が遠くに聞こえた。
即効で意識を失った。
駆け引き
1-25
夜に成って北海道警から、漸く車を発見したと連絡が入った。
高速道路の監視カメラと支笏湖周辺のカメラ、そして釧路から向かう車が一致したと連絡が入った。
これで柳田塔子と南田が釧路で同時刻に殺されて支笏湖に運ばれて沈められたのが実証された。
美優にも美容室から金沢守が横浜の美容室で働いて居るとネットに掲載されていると連絡が入ったのだった。
「美優ちゃん、今夜捕り物が有りそうで帰れないかも?」一平が電話してきた。「気を付けてね、殺し屋にはね」
「何故、知っているの?」
「妻の勤めですから」
電話を切って佐山に「美優が今夜は殺し屋との対決、気を付けてって言われました、何故?判ったのかな?」
佐山は笑いながら「行くぞ、熱海に」と刑事達と出発した。
美優は泉田公平の安否を知りたかった。
携帯に電話を「野平刑事の妻の美優です、以前ペットショップでお会いした」
「ああ、美人の奥さんですよね」
「ありがとう、今何処なの?」
「今、熱海で小泉欄さんと食事をしています、久しぶりで嬉しくて」
「そうなの?良かったわね」
「奥さんの言葉の通りでした」
「あのね、誰かに例の京都の叔母さん」
「はい、殺された愛犬家ですね」
「そうよ、その犬の居場所を尋ねられたら、私の携帯番号を教えてあげて」
「何故?」
「私が、居場所知っているから」
「そうなのですか?」
「そうよ、但し私が野平の妻だとは言わないで、犬を預けた人の番号だと、
教えて」
「誰が聞くのですか?」
「もうすぐ、聞きに来るわ、これは欄さんにも秘密よ、今後も言わないでね、危ないから」
「はい」
「命が掛かっているから、絶対に言ったら駄目よ、愛犬家の叔母さんの様に成るから、欄さんも貴方も」
「はい、判りました、誰にも言いません」
美優はこれだけ脅かしておけば、公平の性格から誰にも言わないと確信していた。
美優は坂田獣医に電話をして、シェリーの話しを説明した。
持ち主が亡くなった経緯を、今夜騒動が起こりますが、大丈夫ですから、厳重に戸締まりをして下さいと伝えた。
公平は欄に誰からと聞かれたが「お客様、の犬の事」と誤魔化した。
暫くして「もう、百合の店開いているかな?行きましょうか?」
「はい」欄は公平と今夜は朝まで過ごすつもりだった。
「ここよ(スナック赤い鳥)」欄がそう言って扉を開けた。
客が二人座っていたが百合の姿が見えなかった。
公平が入ると「百合-」と欄が呼んだ。
男が「今、煙草を買いに行っていますよ」
「そうなの?公平さん座ろう」と欄がカウンターの止まり木に腰をかけた。
男が急に立ち上がって扉の鍵をかけた。
「何?」
「貴方達は?」欄が叫ぶ。
「このビールを飲め」グラスを差し出す。
「嫌、」
「そこを覗いてみろ」とカウンターの後ろを指さす
「百合!」倒れていた。
「あの様に成りたくなければ、飲むのだ」
欄は百合が殺されていると思った。
「止めてくれ」と公平が言うと「お前は用事が有る」と男が公平の腕を後ろにして捕まえる。
「早く飲まなければ、腕をへし折る」そう言われて、渋々飲む欄だった。
暫くすると欄がカウンターに倒れた。
「何を飲ませた」
「毒だ、数時間以内に解毒薬を飲ませなければ死ぬ」
「さあ、一緒に彼女を抱えて行こう」
欄を両脇から抱えて、スナックを出た路地に車が有って、男が乗っていた。
欄を連れ込んで、公平を押し込む。
「早くしないと、死ぬぞ」
「助けて下さい」と公平が拝むように言う。
車は大城屋に向かった。
「この女は酔っ払いだ、判ったな」
「はい」
この一連の行動は公平のガードの刑事が見ていた。
そして佐山に連絡がされていた。
「大城屋に行ったらしい」
「大城屋って公平の母親の勤め先ですよ」一平が言う。
「後何分で到着する?」
「30分程は」
「急げ、母親も危ない」
「熱海の待機の刑事達にも、突撃の体制をさせて」
「人質を使った捜査なので、早くても遅くても駄目なのだ」
電話で「小泉欄と泉田公平が今、大城屋に入りました、小泉は酔っ払っている様です」
「薬か?」
「誘拐、監禁が成立するまで、早まるな」
「はい」
『真柴が泊まっているか確認したか?』
「泊まっていないらしいです」
電話を切って「真柴がいない?」
「何処に行った?」
大城屋の宿泊には入っていなくて特別扱いだったのだ。
意識の無い小泉欄と公平と殺人者二名は屋上に上がっていった。
一人は車で待機をしていた。
屋上の部屋に公平達が入ると民子が縛られて猿轡状態でいた。
「母さん」民子は公平を見てびっくり顔に成った。
民子の側に欄が転がされて「お前の言葉で、二人は死ぬ」
「お前の巧みなメールで上田の奥様も死んだ、間抜け面のお前がよくも、あんな事が出来るな」
「何の話しでしょうか?」
「惚けるのも上手だな、」
「意味が判りません」
「それより、早くしないと、お前の好きな女が死んでしまうぞ」
「助けて下さい、早く解毒薬を」と泣くと、民子が怪訝な顔で見る。
「上田の奥さんから盗んだ犬は何処だ?」
「何の事ですか?何も知りません」
「お前の母親にもこの薬飲んで貰おうか?」
「そんな、僕は何も知りません」
「お前しか犬を飼って脅迫出来ないのだよ」
恐怖で公平は美優の話を忘れていた。
美優は遅いなあ、もう掛かって来る時間なのに、焦りだしていた。
その時だった携帯が鳴って「お前は誰なのだ」と真柴が言った。
「貴方勘違いしているわよ、泉田さんは関係無いわよ」
「犬はお前が持って居るのか?」
「いいえ、安全な場所に預けて有るわ?」
「そうか、判ったそこから、犬の写真を撮影して送ったのだな」
「その通りだわよ、そこのみんなと交換しましょうか?」
「そんな条件飲めるか、お前を殺したいのだよ」
「私は犬とは一緒よ、貴方が殺した人の妹だもの」
「妹?殺した?」
「誰だ、柳田、南田、丸山、三原、刑事の?」
「沢山殺したのね、三原の妹よ、お姉さんの勤めて居た所で働いて居るのよ、
判った」
「何、坂田獣医か今から行く、待っていろ」自分で切ってしまった。
「お前達こいつらを見張って、俺が帰ったら連れて行こう」
公平も縛られて猿轡で転がされていた。
「取り敢えずは人質だからな、三原の妹は頭良いから、裏が有るかも知れない」
でも坂田獣医なら充分考えられると真柴は思った。
それは事実だったのだが、こっそりと裏口から真柴は待機の車に乗って「坂田獣医の家に行け」と言ったのだった。
一平の携帯に(静岡県警の諸君、坂田獣医の家に向かいたまえ、健闘を祈る)
とメールをした。
「佐山さん、またあのメールですよ、ほら」と見せた読んだ佐山が「よし、坂田獣医宅に急げ」と言った。
「大城屋もう、すぐそこですよ」と一平が不思議そうに言うのだった。
「犬を奪ったら、殺せ」
「はい」
獣医の家に到着すると締まっている扉を叩いた。
「壊しましょうか?」
「壊せ」
入り口を壊すのに道具を探す殺人者、車の工具でたたき壊そうとトランクを開けて頭を突っ込んだ時、上から佐山が締めた。
「痛い-」と大声を出した。
「人は痛くなくても自分は痛いか」刑事達に取り押さえられた。
真柴が「どうしたのだ」と言いながら車に近づいて来たのを一平が、後ろから襲いかかって、捜査員が真柴を取り押さえた。
「罠、だったのか」
「何が、だ」
「三原の妹に負けるなんて」
「三原の妹?」
「そうだ、上田の奥さんも俺も騙された」、
すると獣医の坂田良子がシェリーを抱いて「この人ですか?」
「あっ、此処に居たのだ」
「この人が主人を交通事故に!」と叫んだ。
「ワンワン」とシェリーが吠えた。
「真柴、犬にも嫌われる愛犬家だな」と佐山が笑った。
迷犬イチ
1-26
「突撃してくれ」と佐山が山城屋に居た刑事達に言った.
館内にいる客に鍵をかけて、絶対に外に出ない様に、従業員と警察が手分けをして廻ったのだ。
相手は殺し屋だそれも四人、他の客に迷惑がと言うより危険が及ぶからだ。
数十人の警官と刑事が各階に待機。
エレベーターにも数人が階段を少しずつ上がって行く。
人質三人の安全が第一だ。
その時フロントに電話が「特別室だが、飲み物が無い、適当に数本ビールを持って来てくれ」と連絡が有った。
「どうします?」
「此処の制服貸して下さい」二人が着替えてその後に数人が続いた。
「中の様子を見てきましょうか?」
「そうだな」
「全く判らないから、飛び込んで人質が殺されたら」
「相手が多すぎますね」
取り敢えず見てきます、そう言って二人がビールを持って入った。
「そこに、置いて帰れ」
「はい、判りました」
中を見回した時、刑事の頭に拳銃が突きつけられた。
「お前、警察だな」
もう一人も二人がナイフを突きつけていた。
二人の刑事は縛られて風呂場に連れて行かれた。
しばらくして一平達が到着して合流した、
「今、飲み物をと言うので刑事が中の様子を見る為に持って行ったのですが帰りません」
「捕まったな」
「一平、真柴の携帯に掛かってきたら、今は話せんと、言わせろ、三原の妹が姉を殺した訳を聞きたいとでも言って」
車に戻った一平は真柴の携帯を持って「今から、三原の妹がお前と話ししたらしい、一言、今は話せんと言ってやれ」
「どうしてだ、」
「何故殺したか聞きたがっている」
そう言っていた時に携帯が鳴った。
「いくぞ」
「今は話せん」
直ぐに切った。
大きい声だったが、携帯が遠かったので相手には小声で聞こえた。
一平は「言わせましたよ、誰からの電話ですか?」
「屋上の殺し屋だ」
「えー、刑事が行ったから、真柴の安否を確かめたのだ」
今の携帯にメールで「こちらも、警官で一杯だ、上手に逃れと送れ、喋れないと」
「はい」
(真柴さん人質はどうしますか?)
「佐山さんこれ」と見せた。
「もう要らない、三原の妹と犬は手に入れた、この警官達を尾引寄せて逃げればいいと送れ」
(判りました)
「人質を使いましょう」
「寝ている三人は駄目だ、警官を使おう」
捕まえた警官を先頭に四人が部屋を出た。
四人の警官と一人の刑事が居るだけだった。
七人で此処に来たのだと殺し屋達は思った。
露天風呂を背に刑事を盾に前に進む、前方にはエレベーターが扉を開けて待って居る。
その時露天風呂から数人の刑事が背後から襲いかかった。
一人が階段を刑事と一緒に転がった。
もう一人は露天風呂に引きずり込まれた。
二人は隙をみてエレベーターに乗った。
何故か二階のボタンを押したが、そこで停まって電気も消えた。
「ネズミが二匹捕まりました」
「疲れるまで待ちましょう」
「そうだ、拳銃持って居たからな」
佐山と一平が笑い会った。
公平達三人は薬を飲まされていたので、救急車が三人を運んだ。
同じ頃、百合もオーナーのママが見つけて救急車で病院に運ばれた。
殺し屋三人は警察の病院に一人はトランクに挟まれて、階段から落ちて骨折、露天風呂の石に肩を当てて脱臼、後の二人は二日目哀れな姿でエレベーターから、警察に連行された。
「二日間食べなくても出る物は出るのですね」と一平が笑った。
取り調べで真柴は観念したのか、事件を喋りだした。
友和の事件で揺すられて、二人を殺した事。
間島欄に似ているから顔を潰せと言われたが、我々は間島欄の顔を知らなかった。
まさか柳田が南田と来たとは思わなかったと自供した。
三原がシェリーの誘拐をしたので、それを丸山が手伝ったので殺した。
刑事の奥さんを間違えて拉致して失敗だった。
警護の刑事もそれで殺す事に成ってしまった。
三原の妹に翻弄されて上田が狂ってしまったので、我々の身の安全の為に殺した。
唯、三原真理子に妹は居ないよと真柴に言ったら「あれは誰だ」と狂った様に叫いたのだった。
間島は泉田公平に自分の会社に就職しないか?
そして小泉欄と結婚して、近くに住んでくれないだろうかと持ちかけた。
いつまでもフリーターでは欄と結婚出来ないと思っていた公平は「はい」と返事をした。
妹の瑠璃も京都で就職をする。
シェリーは坂田獣医がそのまま飼う事に「主人の形見ですね」そう言って引き取った。
一平が「佐山さんの最後のメール作戦、何処かで見た様な感じでしたね」
「そうか?」
「京都の時と似ていましたよ」
「この事件で何人が犠牲に成ったのだ」
「南田、柳田、三原、丸山、坂田、松本刑事、そして上田公子」
『七人か、凄いですね』
「もう少しで殺されかけた、小泉欄、瑠璃、泉田親子、そしてお前の美優さんもだ」
「でも最後は糞まみれでしたよ」
「笑えない事件だった」
「静岡県警の諸君は誰だったのでしょうね?」
「判らんが、彼女が居なければ解決してない事件だっただろう」
「何故、彼女なのです?」
「女文だからだよ」佐山は少し慌てた。
「じゃあ、今日はこれで帰ります」
一平は嬉しそうに帰って行った。
後ろ姿を見て、今夜は美優さんにサービスしてくれよと心で呟いていた。
一平が家に帰ると「ほら、ほら可愛いでしょう」
「どうしたの?」
「坂田獣医さんから二匹頂いたのよ、お礼に」
「何故?お前にお礼?」
「ひ、み、つ」
「それに、一匹しかいないじゃないの?」
「ほら、此処に居るわよ」
(こんばんは、ご無沙汰しています、新田由佳里です、可愛い子犬頂きました)の動画
「義理の姉の所か」
「この犬幾らすると思う?」
「判らん」
「百万以上だって」
「うえー、この子犬が、タケー」
「そうよ、本当はもっと高いかも?」
「価値が判らないよ」
「私には判るわ、この子犬の方が一平よりは上だって事が」
「何―」と追いかける一平に逃げる美優、
檻に入った子犬が二人を目で追って「ワン、ワン」と鳴いた。
二人は抱き合ってキスをした。
「ご苦労様でした」
「ありがとう」と一平が言った。
それは総てを知っていたのだろうか?
それは美優にはどちらでも良い事だった。
一平がお風呂に入って、後から美優が入って行く、幸せな一時が今夜は続く予定だった。
携帯が鳴って「一平事件だ、直ぐに来てくれ」
「何ですか?今から何ですよ、良いのは」
「殺人事件だ、今度は何処ですか?」
「三島で他殺体だそうだ、頼むぞ」
「美優ちゃん,そう云う事で、出掛けます」
「そうなの?内容教えてね、我慢するから」
「また、探偵するのか?」
「私は名探偵美優です」
「犬の名前決まったの?」
「イチ」
「何、それ?」
「ペイだと屁見たいじゃん」
「それ、俺の名前じゃないか」そう言いながら出掛ける一平だった。
完
2014、07、21
京都愛犬家殺人連鎖