卒業試験。

ある学校のようなところで、学生達が受験勉強のような事をさせられていました。
 「ああ、勉強は辛いよ。遊びたい」
 「おまえ、遊んでばかりいたら、将来が台無しになるぞ。試験の成績で将来が決まるんだ」
 「おれは遊びたいんだ」
「人生を棒に振りたいのか?」
「それは困る」
 「じゃあ、勉強しなきゃ」
  しかし彼は勉強をしませんでした。
 「これで彼の人生は終わりだな」

 そして卒業試験の日がやってきました。
 「やったあ、僕は主席だ」
 「僕は次席だ」
 「俺はビリだ畜生」
 「主席の生徒は貴族階級で期間は500年だ」
 「すげー」
 「次席の生徒は貴族で期間は450年だ」
 「それも凄いな」
 「ビリは奴隷で、5000年だ」
 「げげっ!5000年?」
 「勉強しなかった報いだ」
 そして卒業式の日がやってきました。
 「この晴れの日に、諸君を送る出せる事を喜ばしく思います」
 「先生、僕は留年したいです」
 「それは駄目だ。日にちが来れば、自動的に卒業だ」
 そして生徒達は巣立って行きました。
 
 さて、あるところで貴族と奴隷達がお互いの身分に相応しい生活をしていました。
 貴族たちは奴隷から重税を搾り取り、贅沢の限りを尽くし、面白おかしく暮らしていました。
 奴隷達は虐待され、泣いて暮らしました。
 坊弱無人な貴族たちは必要以上に奴隷を嬲り、苦しめた。
 年貢を必要以上に取り立て、食べきれない農産物は焼き捨てた。 
 どんなに美食しても太る事も、病気になる事も無かった。健康そのものでした。
 しかし奴隷達は、少しでも美味しい物を食べると、すぐ病気になりました。
 不味いものだけを、少量食べました。
 そして苦しい重労働に耐えました。
 やがて奴隷達は暴動を起こしたが、すぐに鎮圧されました。
 奴隷は貴族に掠り傷ひとつ付けられなかった。
 叛乱は決して成功しない。
 寺院で貴族が請願をすると、どんな厚かましい願いもかなえられました。 
 しかし奴隷が自分の幸福を願うと天罰が下りました。
 かといって、寺院で御祈りをしないと、更に罰が当たる。
 奴隷達は報われない事を知りながら、自分達ではなく、貴族の幸福を祈りました。
 奴隷達は、奴隷の長老に質問しました。
 「長老様。 何故わたしたちは、こんな目に会わなければならないのですか? 理不尽です」
 長老はそれに答えました。
 「人間の霊魂は不滅なのだ。お前たちは昔別の世界で生きていた。
 お前たちはそこで信仰が足りなかった。善行も足りなかった。そこで偉大な神はお前たちの霊魂を救う為に、お前たちを前世に相応しい身分に生まれ変わらせたのだ」
 「そんなの証明できません」
 「信じようと、信じまいと、それが真実だからな」
 「そんな?信じられない?」
 
 病死自然死する奴隷は勿論、自殺者も後を断たなかったが、 死ぬ事は何の解決にもならなかった。
 年季が明けるまでは何回死んでも、同じ身分に生まれ変わってくるのである。 
 めでたくなし、めでたくなし。
 THE、END。

卒業試験。

卒業試験。

  • 小説
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  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-03-29

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