好きならば-5-
誤解ってすごく怖いなと思ったのはこの瞬間。
-空回り- side natsuho
「愛がないってあれ、違うかもしれない」そう言われ私は唖然とした。
思わず聞き返してしまったがその行動は自分でも正確な判断だと思う。
「どういうこと...?」「今まで、女と付き合わなかったのはめんどくさいと思ってたから。
でもさ、夏帆と居て分かったんだよね。夏帆みたいな女、探せばいくらでもいるって...だから、愛を教えてくれるのは夏帆じゃなくても
いい」「...っ」そりゃそうだ。孝悠先輩の高校にだって、探せば`愛を教えたい`っていう女の子はいくらでもいるだろう。
その教える相手が孝悠先輩なら、なお更そうだ。
「だから、終わろう?」「夏帆は、俺にじゃなくても、あ-ゆう笑顔向けられるんでしょ?なら他の奴と付きあってなよ。
俺と付きあってもいい事なんてなんもねぇよ」「だ..だから、あの笑ったのはただ学祭頑張ろうねって..」
全て言い終わる前に孝悠先輩が口を挟んだ。
「でも、自然な笑顔で、作り笑顔じゃなかったよ?自覚ないだけだよそれ」「..っ」
思わず言葉に詰まる。違う...本当に違うんだってば...私が好きなのは孝悠先輩に出会ってから、孝悠先輩だけで...
笑顔を向けた相手の、結城くんには全く気がないんだよ..?誤解してるよ。
「本当に違うの!!私は..」「別れたくないって?俺が何か誤解してるって?」
私は正直にコクンと頷いた。その瞬間、首筋にピリッという、痛みが走った。
「っ..」「最後に俺のものだったって跡ね。んじゃ」どう考えても一方的すぎるでしょ!!
てか、最後にって...別れるってこと?私、嫌だって言ったよ?通じなかったの?ねぇ..孝悠先輩...行かないでよ。
私だけの孝悠先輩でいてよ....
side kouyu
なに言ってんだよ。俺..愛がないってのは、ただ、なんか他の奴にあ-ゆう笑顔を向ける夏帆が嫌で、正直に言うと
嫉妬心で...最低なことを言って..挙句の果て、`俺の跡`を勝手に付けた。
なんとなく...なんとなくだが、1度距離を置いて、本当の自分の夏帆に向けての意思を考え直そうって..そう思った。
だから、距離を置こうって言おうとしたがあの状況からして、「別れよう」って直球で言ってしまった。
本当、自分の言ったこと、一言一言が全て後悔だ。
side subaru
数十分後、蓮田が俺等のいるファミレスに来た。少し涙目だったが、そこは全然きにならなかった。
「夏帆っ!荻野孝悠とどうだったん?」「ん..別れた」
その言葉に何にも知らない俺と天野でさえも目を見開いた。
「あ..そ。まぁ別れて正解だよ。ふられたんでしょ?」
何言ってんだよ!今井は..別れて正解な恋愛ってどんなだよ!!
「ん..私みたいな人、探せばいくらでもいるって..そりゃそうだよねぇ..だって相手が孝悠先輩なら..納得だよ」
「ねぇ、夏帆さ..結城と付き合ってみれば?」一瞬、沈黙の嵐だった。
いや、まて..何故にいきなり俺が出てくるんだよ!!蓮田なら大いに結構というか、むしろ大歓迎だが...
「いやいや...なんで結城くん?」「だって...御似合いだよ?どう見てもカップルにしか見えないし。あの2人の顔的に」
ねぇ?天野!とそう言って上手く天野にふった。天野もなぁ!といいながらそれにノってるし...
俺からすりゃ、御前等のがカップルにしか見えねぇよ。
「蓮田、付き合ってみる?」冗談半分でそう聞いた。「え..?」
「どうする?お試しでもいいけど、元彼離れできるチャンスかもよ?」
自分でも思うほど鬱陶しい言い方をしたなって思った。でも、答えは意外に
「お...お試しなら...」という答えだった。
心底嬉しかった。これからの目標が、今までは「勉強」だったものの、今日からは「恋」
だな、と感じていた。
好きならば-5-