詩篇18 紺色の夜に
紺色の夜に、黄色い真ん丸な月。
この部屋も紺色で、草の陰だけが黒く尖る。
紺色の世界は透明で、べったりと湿っている。
黄色い生地に紺色のリボンが付いた上履き入れを思い出す。
お母さんが作ってくれたその色を、
今の今まで理解できなかった。
紺色と黄色が合うから夜に月があるんじゃなくて、
夜に月があるから紺色と黄色を組み合わせるんじゃないかって、
ほろほろと思ったりもした。全てが紺色の、世界。
紺色の世界でわたしは、
泣き、
あらゆる水気を顔のいろんなところから放出し、
痙攣。いろんなところが、水気と痙攣。
水でふやけた顔と手は、
きれいな紺色になれません。
お腹の真ん中から、込み上げる。突然。
紺色の床に、黄色いものがたくさんたくさん。
顔の全部から、水気がもうやめてくださいと云いながら、
たくさんたくさんたくさん。
黄色い真ん丸はきれいなのに、
黄色い水は汚らしくて。
汚くて汚くて、背徳的で。
謝って、ごめんなさいって、謝って、
また、痙攣。
怖くなって、喉を閉じて、わたし自身を閉じて、
わたしはこの世界でたったのひとつ。
汚らわしいひとつ。
水気が止まらなくて、
お願いですからどうかもうやめにしてくださいと云う言葉は、
死んで、
汚い黄色を映し出して、
恥を刷り込まれた。
お腹も喉も顔も、全部が、
泣いて、
紺色はすごくきれいで、
滲む真ん丸な月は、
落ちて、
見つからないように隠して、羞恥を隠して、
裸足で逃げた。
きれいなきれいな、
夜。
詩篇18 紺色の夜に