ボーイフレンド(仮)版権小説「西園寺生徒会長と恋のオペレーション」(生徒会長は誰にでもやさしい編)

ボーイフレンド(仮)版権小説「西園寺生徒会長と恋のオペレーション」(生徒会長は誰にでもやさしい編)

2015/5/23~5/31に開催されたボーイフレンド(仮)イベント カレと私の恋のオペレーション」スピンオフとして書いた版権小説「生徒会長は誰にでもやさしい編(すでに如月斗真とフラグが立っている場合)です。
「共通前置き」部分は、「生徒会長は鬼畜なご主人様」編と共通の、主人公視点です。

共通前置き

 まだ五月後半だというのに、うっそうと下草が生え茂る森を抜けて進む。ペイント弾が入ったピストル、その他サバイバルグッズが入っているらしいリュックが重い。
 左前の草むらががさがさっと揺れた。慌ててピストルの引き金を引くが、スカ、スカ、と軽い音しかしない。
 北城くんが「何か動いたらすぐに撃て」とか言うから、頑張って撃っていたら、気が付くと弾切れだ。
 それより。
 一緒に歩いていたはずの斗真も、北城くんも居ない。ほかのチームメンバーも。
 すぐ隣でがさっと音がして、びっくりして振り向くと、見たことのない生き物が飛んでいった。
「もしかして迷子……?」
 あえて口に出して言ってみたが、当然返事は来ない。ただ、うちのチームには明神くんが準備した専用アプリが渡されている。サバイバルベストからスマホを引っ張り出し、アプリを起動すると、ゴールキャンプの場所と自分の位置とが表示された。チームメイトの位置も表示されるはずが、初めに説明を受けた時にすぐ近くにたくさん見えていた赤い点が見えない。敵チームのメンバーは表示されないから、もしかすると近くに誰かいるかもしれないけれど……。
 斗真に最初に教えられた通り、一応ピストルを構えつつそろそろ歩く。まだゲームの終わりまでは十分時間があるし、ゴールへの方向は間違っていない。このまま歩けば問題ないだろう。ただ、後ろは任せるとか言われてたのに、後で怒られそうな……。
 少し上り坂で、陽射しが強くなってきた。ベストが暑く、履きなれないサバイバルブーツが少し蒸れる。
「ほんとに、この学校はイベント多すぎよね……」
 つい先日は校内レクリエーションとかで学校内をかなりうろうろした。しかも生徒会長と。すごろくゲームでペアになって、一緒に校内回って。フリースローとかして。いろいろと話せちゃったな。
「今日は生徒会長はどうしてるのかなぁ……」
 生徒会は大抵進行チームとかで本部に控えてたりするよね。
「早く逢いたいなぁ……」
 あの魅惑的な笑顔で、お帰りなさいとか言われてみたい。
 ぼけっと先日のことを思い出していると、突然すぐ後ろで物音がして、振り向こうとすると後ろから体が何かにぶつかり、口が塞がれた。必死で振りほどこうとするが、左右から絡まる腕でがっちりと押さえられている。足が竦むが、ふわっと漂よってきた香りが誰かを思い出させ、恐怖心が揺らいだ。
「私を呼びましたか?」
 この複雑な花の香り。西園寺先輩だ。
「フフ、いい顔ですね」
 ようやく口を覆っていた手は外され、大きく息をつく。
「西園寺先輩、どうして」
「口のきき方がなっていないですよ。あなたはもう私の捕虜なのですから」
 左ほおに何か固いものが当たったと思うと、太いサバイバルナイフが当てられていた。安心したのも束の間、少し血の気が引く。
「先輩……」
「ご主人様とお呼びなさい。さもないと」
 ナイフの腹が軽くほおを撫でる。あれ、この感触。
「そんな脅しには屈しませんよ。それ、プラスチックです」
 この前、クラスの男子が持ってきていて、真山先生に没収されていたもの。これなら怖くない。
「あら、もうばれてしましたか。もう少しあなたの恐怖に歪んだ顔を見ていたかったのですが。ただ、あなたはまだ捕虜のままですよ」
 体に巻き付く腕がより強くなる。こんな人気のない森で、後ろから抱きしめられている状況がよく理解できない。腕についたチーム分けの腕章は、確かに私のチームとは違う。
「このまま来ていただきましょうか」
 この人だけは敵に回してはいけない、って誰かに言われたのは覚えているけれど……まさか本当に敵として……。

生徒会長は誰にでもやさしい編(すでに如月斗真とフラグが立っている場合)

「先輩、ついていきますが……できれば離していただけませんか」
「フフ、すみませんね。ついあなたを驚かせてみたくなって」
 西園寺先輩はすっと私から離れ、おどけた感じで両手を上げた。
「本当にびっくりしましたよ。でもチームの皆と離れて困っていたので助かりました」
 慌てて一礼する。
「荷物、渡してください。急いで帰りましょう。そろそろ雨になるそうですし」
「え、でも……」
 私が戸惑っているうちに、先輩はまたすっと後ろに回り、すっとリュックに手をかけた。
「ほら、大丈夫ですよ。もう驚かせたりしませんから」
 先輩に言われるままリュックを渡す。
「ついでに、手も渡していただけます?」
「手?」
 首をかしげている間に、すっと左手を取られた。
「では行きましょうか」
 驚いているうちに手を引かれ、歩く。歩きやすい道を歩いてくれているようで、一人で歩いていたよりも随分と歩きやすい。
「でも、どうして先輩がこんなところに?」
「如月くんから、あなたが行方不明になった、と本部に連絡がありましてね。本部の幾人かで近くを見回っていたのですよ」
「え? そんな、申し訳ありません。皆を待たせてしまった上、探してもらっていたなんて」
「いえいえ、集合時間はまだ随分と先なのですが、実はあっという間に決着がついてしまいまして。もう皆様解散しましたよ」
「あ……」
 まさかそんなに早く終わるなんて。気が付くと誰も居ないはずだ。つい軽くため息ついてしまう。
「まぁ、せっかくですから、のんびりと帰りましょうか。この季節は珍しい花が見られますし。案内しますよ」
「でも、いいのですか?」
「大丈夫ですよ。もう本部も解散の準備はほぼ終わっていましたから。忘れないうちに連絡を入れておきますので少々お待ちくださいね」
 先輩は私の手を離し、スマホを取り出してさっと電話をかけはじめた。先輩の今日の姿は、陸軍大佐のような深い緑色の詰襟。金ボタンと金の襟章が木漏れ日に光っている。銃を持って森の中を駆け回るより、本部で指示を出しているのが似合っている格好だ。こんな姿で迎えに来てくださるとは。
「大丈夫ですよ。撤収も完了したようです」
「先輩……ありがとうございます。いろいろと」
「サバイバルゲームを企画したつもりでしたが、森で迷った白雪姫をお城へお送りする役柄とは、私も予想外でしたよ」
「今日の先輩は王子様というより大佐様ですね」
「フフ、詰襟ですとなんだか引き締まった感じがして良いですね。ただ実は首元が少し窮屈なのですよ。あなたの前なら緩めてもよろしいでしょうか」
 先輩の長くて細い指が触れるのを見ていると、深緑の制服の襟元の赤が、そこだけ花が咲いたようだった。第一ボタンまで開けると、白い襟シャツとわずかに肌がのぞく。
「おやおや、そんなに見つめないでいただけますか?」
「あ、失礼しました」
 慌てて顔を背けるが、軽く顎を掴まれ、元に戻された。少しかがんだ先輩と目が合う。
「冗談ですよ。好きなだけ見てください。あなたにならいくらでも、ね。ただどちらかと言えば花を愛でるほうが好みなのですが」
 先輩の指が、顎から首元へと下り、首元を少しくすぐられる。そのまままた手が降りて、今度は手を握られる。
「ただ、今日はそろそろ行きましょうか。如月くんが首を長くして待っているそうですよ」
「え、斗真が」
 迷った上に、生徒会長に送ってもらったなんて、後で怒られそうだ。
「フフ、あなたの王子は心配性ですね。せめてお城までの道すがら、私にお供させていただけますか」
 先輩に手を引かれ、まだ明るい森の中を歩く。私の速度に合わせて歩いてくれる先輩から、今後生徒会が主催予定のイベントの話を聞いていると、あっという間に校舎が見えてきた。壁にもたれて、少しイライラしているかのように腕を組んでいる斗真の姿も見える。
「ほら、お待ちかねですよ。行ってらっしゃい」
 西園寺先輩はすっと私の手を離し、背中を少し押してくれた。
「ありがとうございます、先輩」
「私こそ、いろいろと楽しませていただきましたよ。次のイベント、期待していてくださいね」
 私は先輩に一礼して駆け出した。ちょっとドキドキしたが、また生徒会長に翻弄されるのも悪くないと思った。

ボーイフレンド(仮)版権小説「西園寺生徒会長と恋のオペレーション」(生徒会長は誰にでもやさしい編)

ボーイフレンド(仮)版権小説「西園寺生徒会長と恋のオペレーション」(生徒会長は誰にでもやさしい編)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-26

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
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