イキザマ


 生きているうちに、心臓に一本、一本
 針が生えてくる

 そうやって僕らは強くなっていく

 何かを守るために
 自分を守るために

 現実を生きることは戦うことだ

 どれだけの人を傷つけ
 どれだけの人に傷つけられ

 その度に針は鋭く尖り、そして増えていく


 しかし針は、同時に僕らを刺している

 僕らが血を見るほど、心臓の深くへ

 僕らは強くなればなるほどに
 自分の血を流すことになるのだ


 果たしてその血は、本当に戦うための血だったのだろうか
 人を傷つけ
 人に傷つけられ
 そのために流す血なのだろうか


 僕らの心臓には血が通う

 生きることは戦うことだ
 けれど戦う相手は僕ら自身だ

 その血は生きるための血だ
 僕らだけのものだ


 現実でも 夢でも
 過去でも 未来でさえも
 僕ららしく生き切っていく

 針は消えた
 僕らの心臓にはどくどくと
 生きるための血が 流れ続けている

イキザマ

イキザマ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-24

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