4、ボウイが絆?

4、夢はまだ?

4、夢はまだ?



 家に着いた裕一は母が用意した食事もそこそこにすませ、二階の自分の部屋に行くと明かりもつけずにベッドに潜り込んだ。


今日は珍しく父も遅いらしい。母は話し相手がなくて当然おもしろくない。もちろん長年の主婦の経験から夫の為とか、子供の為とかいう思いがほとんどの場合感謝されないのはわかっている。

子供にいたってはその思いのほとんどが母親の自己満足とおせっかいから出るものだくらいにしか考えていないのだから。


それでも一日待ってやっと訪れた息子との時間があまりにあっけなく通り過ぎてしまった事に腹立たしさと寂しさが渦を巻く。結局家族の思惑はすれ違う事が多いものだとあきらめるしかない。
 

裕一は真っ暗な部屋の中で自分を見つめていた。近頃どこか人生に本気になれない自分に苛立ちとやるせなさが交錯する。


「俺――平和ボケか?」


男の三十二歳。それは人生の中でどのあたりなのだろうか。世間ではまだ若いとも言う。でも、自分ではそう若いとも思えない。焦るわけじゃないけどそろそろ夢の端っこくらいはつかんでみたい。


(その為に何をすればいいんだ?あの夢は今どこにある?――俺の中にあるのか――ある!少なくとも夢の根っこはまだ残っている。確かに目を凝らして見ないともうかすんでいる気もするけれど忘れたわけじゃない。そうだ、俺の中に残っている。)
裕一は思いを確かめる様に手の平を強く胸に押し当てた。
         

4、ボウイが絆?

4、ボウイが絆?

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-23

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