我が家のカレー

包丁の剣(つるぎ)、右手に握り、まな板の楯を携えて、
棘の道のキッチンロードへ、僕は足を踏み入れた。
最初の敵はキャロット星人。
見た目は遅くに帰宅した、父ちゃんみたいな顔色の、赤い色した派手なやつ。
いきなり飛び出す秘密兵器。
ピャウラーだっけな?なんだかとっても言いにくい、機能重視の単純兵器。
左手気をつけ、器用に滑らし、鮮やかに舞い散る薄い皮。
攻撃受けるは、指爪赤く、ただ染めるだけの地味地味攻撃。
休みの父ちゃん並だって。

次に来たのはゴツゴツ星人。
ボツボツ素肌も隠せない、薄茶の化粧が流行遅れ。
母ちゃん、ボディコンってカッコして、
鏡の前でポーズ決めても、見ている人は、鏡の中の自分だけ。
形はすでに芋並みだから。
いくら扇子を振りかざしても、服のセンスは問われるよ。
ジャガイモの皮と同じように、母ちゃん自慢の厚化粧、
綺麗さっぱり剥ぎ取るよ。

やってきたぞ、手強い奴が。
丸い形でとんがり頭。どこまで剥いても同じ顔。
軟いくせして筋多い、ちびまる子ちゃんの友達星人。
気配を見せずに近づいて、目に向け染み入るチクチクアタック。
涙をどれだけ流しても、容赦も加減も全くない。
婆ちゃんいつも言っている、「じいさんったら・(てん)・(てん)・(てん)」
爺ちゃん泣きそな顔してた。今なら気持ち、分かる気がする。

出てきた親玉並みの奴。キチンとチキンとキッチンと星人。
二本足で立ってても、羽しかないなら手は出せず、
次に打つ手は何もなく、匂いつけるが精一杯。
親子丼なら主役でも、場所が違えばエキストラ。
たまには松阪牛くらい、派手なカッコをしなよ爺ちゃん。

切られた兵士が逃げていく、これで終わりハッピーエンド。
なんて世の中甘くなく、ブロンドのUFO鍋が浮き上がる。
赤褐色の輝きが、姉ちゃんの髪にひけ取らず、
怪しく鈍い光を放ち、姉ちゃんの首輪にひけ取らず、
ドウだ、ドウだと詰めてくる。
丸いメッキの鍋肌が、姉ちゃんの顔と重なり合って、僕の闘志に油を注ぐ。
リーサルウエポンしゃもじを出して、一気に炒めて仕上げに掛かる。
抵抗するのは友達星人、断末魔の汁、撒き散らす。
そうはさせじと水攻撃。
UFO鍋に水注ぎ、相手を水の奥へと沈めてく。
加えてまろやか隠し味。
賞味期限に気をつけて、白い煙幕張っていく。

しばしのひと時、体力回復。
最後に出てくるキューブマン。
色は表現し図らいけれど、味の決め手のにくい奴。
いい匂いがする部屋の中、茶色に染まった鍋の中。
そばに来るのは犬のシロ。
こいつの名前は僕の一言。
「茶色い毛なのにシロにしろ。」
みんなが揃って親父ギャグ。

時には甘く、時には辛く、複雑なのに単純で、
濃厚なのに飽きなくて、色んな具材、色、形。
調和の取れたまろやかな鍋。
憎みながらも憎めずに、理想に生きたい華麗な我が家。
我が家のカレーが僕の自慢。

我が家のカレー

我が家のカレー

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-22

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