字融落下 ―時間が死んだ日―

 今日がそのまま止まってしまった。
 時間が鼓動の音をゆるめていって、皆が気づかないうちに息をひきとった。

 僕だけはそれに気付いていて、でもそれが何を意味するのかはまだわからない。
 皆は何時ものように過ごしていて、鳥も雲も流れてゆく。

 時間が死んだことに気付いたのはしばらくしてからだった。
 皆は何時ものように過ごしているが、意識してみてみると、僕の視界から外れるとループすることに気付いた。

 これに気付いたのは同じ日である。

 今日が終わらないのだ。朝も夜もくる。しかし、やって来るのは今日だった。

 日々が寄せ集めのデジャヴで出来ていた。
 時間の死は生物の寿命さえも奪っていった。

 ゆったりと流れる今日。
 きっと明日も既視感のある日常なのだろうが、なにも問題はないのだ。

 生きているし、食料は尽きない。皆も同じように生きている(恐らく皆も気付いているのかもしれない)。

 ただ今日を生きている。



 ある時、人が死んだ。

 何をしたのかは分からないが、寿命の変わりとなる死の概念があるようだ。

 ただ僕は今日を生きている。

字融落下 ―時間が死んだ日―

 私が書き遺して、私が読み解く。

 ――溶け出した行間。空想の中に落ちてゆく――。

 そして私に伝える。きっと、もうすぐ。

字融落下 ―時間が死んだ日―

短い時間で読める。ちょっと不気味な掌編シリーズ『字融落下』。 青年、または成人向け。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-19

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