心の闇

消えてほしい

嫌いとか、憎いという言葉を使いたくないほど、この世からも自分の記憶からも消え去ればいいと思う人間がいる。

自分のこれまでの人生で、ここまで愚かで醜悪で自分勝手な言動を繰り返す人間は見たことがなかった。

普通なら、プライベートでも仕事の場でも、そうした不愉快な人間がいたら、遠ざかれば済むこと、死んだも同じことだ。

その人間は、自分の近しい人が長年関わってきて、これからもお互いが生きている限り関わりが絶えることがないだろう・・・というのが、面倒な状況を生んだ。

嫌でもその人間の現況が情報として入ってくる。


日々暮らしていく中で、大変に不愉快な存在が常に頭から離れないのは、かなり精神を汚す。

その人間に相応しい、惨めなみっともない事件の当事者となって、刃傷沙汰でも起こして服役すればいいのになどという期待過多の想像をした。


心の中に抱えるのはもてあまして、直接利害関係の無い、遠くに住んでいる人を探してメール交換をして、心情を吐露したりもした。

闇を書きなぐる為だけのブログを開設して、しばらくの期間経験した出来事、その人間の愚かな言動のあれこれを記事にしたりもした。


何をしても心は晴れない。

7年も経ったある春の朝、急に「許そう」という言葉が頭に浮かんだ。

その人間を ではない。

自分の事を許そうと思った。

他人のことは変えられないけれど、自分の心の持ち用はいくらかはコントロールできる。

長年どす黒い感情を持ち続けた自分を許そうと思ったのだ。


普通の、何の信仰も持たない自分なので、そう考えたからと言って全て吹っ切って昇華されるはずはない。

それでも少し気が楽になった。

心の闇

心の闇

消えておしまい この忌まわしいしみ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-19

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