いつでも傍に
7/17ワンライお題2.気が付くといつもそばにいる人
気が付くといつもそばにいる人
「かなでーっ!!」
遠くから奏の名前を呼びながら駆けてくる。
「どうしたの?響、明日は…」
「ふふふーん…はい!」
響が勢いよく差し出したのは「頑張って、奏!」と書かれた小さいお守りのようなものだった。
奏は明日、スイーツコンテストがある。前の年のようにピアノのコンクールとは被らなかったのだが…
「…本当は行きたいんだけどね…先週、奏が応援してくれたお陰で私はコンクールで金賞取れたんだから、いつも以上に応援したかったのに…」
「いいのよ。サッカー部の助っ人、引き受けたからにはしっかりやらなきゃ許さないんだから」
「うん、頑張るよ。…会場には行けないけど、ずっと応援してるからね!」
「もう!試合に集中」なさいね!」
「あはは、当たり前だよー。そのサッカーの練習行ってくる!じゃあまたね、奏!」
「じゃあね、響」
手を振る奏は、遠ざかる響を見つめながら少しうつむいた。
*****
「響は今頑張ってる。私も頑張らなきゃ…!」
そう呟きながら控え室を借り最後の試作をする奏。頭に浮かぶのはサッカーボールを追いかけ走る響ばかり。今日はコンテストが終わってもすぐに響に会えず、喜びや悔しさを分かち合えないと思うと寂しさがあった。もちろん夕方には会うこともできるから、その時まで待てば良いのだが。
横に響がいないからってすぐこうなるんじゃパティシエになんてなれない、と自分に言い聞かせるが、ケーキを作っていると盗み食いにやってきて幸せそうに笑う響が浮かんで、どこからも響が現れないことに違和感を覚えた。
どうしてもあの笑顔が浮かんでしまう。ならば。
「…響がいると思えば良いのよ、すぐ傍に…!」
作り上げれば響がつまみ食いに来ると思って無我夢中で最後の試作品を作り、それはすぐに完成した。
いつもの真っ白のケーキに、いちごを並べたシンプルなもの。去年と同じだが、ちょっぴりスパイスを入れたような味がした、気がした。
「今から本番…響、頑張るね…!」
自分が今作ったケーキを美味しそうに食べてしまった響を思い浮かべながら貰ったお守りのようなものを両手で握りしめ、願うように囁いた。
「う~ん、美味しい!!奏、お待たせ!」
「え…」
気が付くと思い浮かべたままの彼女がそこにいた。召還したかのように現れたので奏は驚くばかり。
もぐもぐ試作品のケーキを食べ、口のまわりにクリームがついた響がにししっと笑った。
「いつものケーキとなんか違うのに奏のケーキだよ…!すっごく美味しい!」
「ちょ…ちょっと、響サッカーは!?」
「よく考えたんだけどやっぱりどうしても応援に行きたくて!それで、和音に代わりを急いで頼んできた!」
「いいけど、突然頼んだら迷惑じゃ…」
「そえかな?嬉しそうだったよ。
…傍に行って、ちゃんと言いたかったの。
奏、頑張って!」
一瞬で思いが溢れた。
「うん。気合いのレシピ、見せてあげるわ…!!!」
*****
本番、奏のケーキは試作のものより想いがぎっしり詰まって間違いなく満足の出来だった。奏は優勝したのだった。
「すごい…すごいよ奏!おめでとう!!」
うるさいくらいに響は祝福した。
「うん、ありがとう!私響のことずっと思って作ってたの。…響のこと想像するだけでも、傍にいるように思えたわ」
「えーっなにそれ、私が来た意味あんまりないじゃん」
「…ううん、違う…いるように思うんじゃなくて、想うと本当に現れるみたい。気付くといつもいるから笑っちゃうくらいだわ。応援してくれてありがとう!」
「どういたしまして!私も奏のことずっと想ってたよ。それで会いたくなっちゃうんだもん。」
「二人がいつもお互いのこと考えてるから自然と傍にいるのかニャ?」
「そうなのかもしれないわね…ハミィもいたの!?」
「連れてきちゃった。それじゃ一緒になれたからこのまま奏の家行ってケーキでお祝いしよう!」
「え、ちょっと、もう!響が食べたいだけでしょ!」
「そんなことないよー奏のお祝いだって!
「私のお祝いが私の家の店って可笑しいでしょ!!」
…響はどんな時、どんな所でも想いあって
気が付くといつもそばにいる、私の大親友。
いつでも傍に
誤字ごめんなさい。お題にあんまり沿わない気がします。75分クオリティ
ていうかスイーツコンクールってどんなものか分からないんです!!