多重人格

ある人は私に「多重人格だ」と冷静に言ってきた。

ある人は私に「可哀想に…」と哀れんできた。

ある人は私に「ざまぁみろ」と罵ってきた。

ある人は私に「多重人格だって、めずらしー!」と見世物を見るような目で見た。

ある人は私に「ぼくもだよ!」と共感してきた。

ある人は私に「それはどうやったのですか?」とまるでタネがあるかのように聞いてきた。

私は確かに言われた。だって頭の中にまだ響いているから。

でも誰が言ったかは思い出せない。

もしかして、この文を書いているのも私じゃないかもしれない。

でも、私は多重人格じゃない!

そう思って精神科医に相談した。

その精神科医は「多重人格ですね」といった。

当たり前だ。だって私の中に流れている声はすべて・・・

他の心の中の「わたし」が言った物なのだから。

多重人格

多重人格

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-03-27

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