『あれ』の話

『あれ』!『あれ』!!『あれ』!!!


私は、確かに家から『あれ』を消し去った。
 

それは、去年の話。


けれど、目の前には、『あれ』がある。


『あれ』の誘惑は、凄まじいが、ここまで、頑張ってきた。


私の憎きものと同時に愛するもの、『あれ』


『あれ』と出会ったのは、中学生の頃だった。


家に帰って来て、たまにある『あれ』


高校生になってからは、簡単に入手が出来るようになった。


『あれ』を得るために私は、たいへんなことをしてきた。


学校の友達と遊ぶのを断り、『あれ』のために頑張ってきた。


ただ、それが最高に私を幸せにしてくれる、一時期だけ、


同時に私の青春の1ページをぶっ壊した。


誕生日の時、母に『あれ』を10個ほど頼んだ。


学校から帰ってくると、『あれ』が沢山、置かれてた。


『あれ』の横に、手紙がそっと置かれてる。


【あなたの未来が心配です。あなたは、これから素敵な未来が訪れるでしょう。だけど、あなたに『あれ』があるかぎり、幸せは、こないでしょう。もう一度、言います、心配です。    母より  】


『あれ』のふたを開け、


『あれ』を皿の上にもっていき、


『あれ』を逆さまにして、


『あれ』の天辺の出っ張りを折る。


『あれ』は、重力に素直になり、


皿の上に落ちる。


私と『あれ』は、同時に震える。


私は、今日で、『あれ』を卒業する。


最後の一口を味わった。

 

『あれ』とは、プリン

 

『プリン』のせいで、太ってしまい、恋愛が終わる。

 

『プリン』のせいで、幸せになった。

 

私は、もう食べないために、最後の一個と言って、


確かに、家から『プリン』を消し去った。


けれど、目の前には、『プリン』 がある。


『プリン』の横に、手紙がそっと置かれてる。


【我慢一年記念と誕生日、今日くらいは、いいんじゃない    母より  】


私は、『あれ』の誘惑に負けた。


「今日くらいは、いいでしょ」


私は、微笑みながら、スプーンをとる。

 

 

「いただきます」

『あれ』の話

小説を読もう! 超能力のダイヤ 評価please プリン

『あれ』の話

『あれ』

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-03-27

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