マジモンカワ先輩
「マジモンカワ先輩って、時計がお好きでしたよね」
七月の防波堤を歩いていました。爽やかな潮風は制服の薄地をはためかせ、夏への期待が海面をきらきらと輝かせます。「まあ、そうね」カモメが鳴きました。「どういうところが好きなんですか」少し間を置いて、フナムシが踏まれます。「好きっていうのはそんな細かく考えるもんじゃないでしょ」そう言うと、先輩はその凛とした体幹を力強くしなやかにこの上なく美しく駆使して消波ブロックへ飛びのりました。無数のブロックに反響した波の音が心地よく耳に馴染みます。
水平線はどこまでも遠く、それを捉える睫毛はいつまでも可憐で、この夏を何度でも繰りかえします。
マジモンカワ先輩