未来(つぎ)の道~未来(みらい)が教えてくれた進むべき道(あした)とは…~
未来へ
未来、元気にしていますか?
あなたがいなくなってから4ヶ月が経とうとしています
お父さんに会えましたか?
ごめんね…ままのせいで病気になっちゃって…
そんな体にしたのはままのせい
それなのに、あなたは一生懸命闘ってくれてたね
明志くんはあなたの分まで生きるって言って退院したそうよ
明志くん、あなたのことが好きだったみたい
未来は私たちみんなを未来(つぎ)の道に案内してくれた
進む道を探してくれた
本当にありがとう
あなたが見つけてくれてなかったら、今後私たちは迷っていたと思う
あなたが生きていた4ヶ月前
その時に教えてくれたことを忘れず、これから、お姉ちゃんと生きていきたいと思います
未来
本当にありがとうね
ままはあなたのことを忘れません
これを書く前の4ヶ月前
2012年6月8日 14時20分
榎本 未来 享年16
1995年の香川県小豆島
香川県の小豆島に女の子が生まれた
「未来に翔(と)んでいける元気な子」という理由で名付けられた
未来は元気な子に育っていったのだった
しかし悪夢が迫っていた
未来が小学生のときに父が病死してしまった
未来はそれをきっかけで心を閉ざしてしまった
大好きだったお父さん
未来の将来を考えてくれたお父さん
突然の死…
それからというものお母さんはお父さんの代わりに
朝も昼も夜も仕事に出るようになってしまった
お姉ちゃんの由希がごはんを作ってくれるようになった
未来はお母さんに甘えることは少なくなり由希に甘えるようになっていった
まだお父さんのことは引きずっているものの少しずつ心を開くようになっていった
しかし…またしても悪夢が待っていた…
ある日…
未来はずっーと体調が優れずにいた
学校に行っても授業もあまり出れず保健室で休むばかり
食欲もあまりなく少しずつだが痩せていった
さすがに心配になったお母さんは未来を休ませて病院に行くことにした
香川県内の大学病院に行った
診察をしたあと血液検査、レントゲン、ⅹ線など12種類の検査を行った
検査結果が出るまで1週間程かかるため今日は帰ることにした
だが食欲がないため栄養剤を点滴をして薬をもらい帰ることになった
家に帰り少し楽になったのか未来は眠りに就いた
そんな未来の様子をお母さんは涙ぐみながら見ていたのだった
学校はとりあえず行くだけ行かせて薬を持たせて行くことになったのだった
検査をしてから1週間経った
未来は学校を休み、お母さんと一緒に病院に行き検査の結果を聞きに行った
そして未来が苦しんでいた原因が分かった
それは…「急性骨髄性白血病」だった
これは血液のがんのひとつで
造血幹細胞から好中球・好酸球・好塩基球、単球、赤血球、血小板を造る細胞に少し分化した細胞がいわゆる「がん化」して起こる病気である
未来の場合はめまいや全身倦怠などの症状があった
それから未来は入院することになった
小豆島の小学校に戻れなくなってしまった
予定では4ヶ月の入院と言われた
辛い抗がん剤治療やその副作用が容赦なく未来を襲ってくる
だが未来は必死に病気と闘った
学校の友だちと遊ぶために…
抗がん剤の副作用
抗がん剤を使ったりして髪の毛が抜けていった
自慢だった長い髪…
そして未来は覚悟を決めていた
未来は看護師さんにお願いをして髪の毛を切ってもらうことにした
抜けてしまうなら切った方がいいと思ったから
髪の毛を切ってからというもの未来はバンダナをつけるようになった
あっという間に4ヶ月が経っていた
気づけば入院して半年が過ぎていた
主治医の長谷先生はこう言った
「お母さん、未来は頑張ってんで。
もう少ししたら退院できると思うんで安心してくださいね。」と。
長谷先生は未来にこんなことを言っていた
「私もね、病気になったんよ。
未来とは少し違う病気なんねんけど治らないって言われたんよ。
もしかしたら死んじゃっていたのかもしれへんけど今は大丈夫やで。
せな、未来も頑張って乗り越えような。」
長谷先生は自分が病気になったことを未来に話していた
それを聞いた未来は一生懸命病気と闘った
後期から学校に行けることを願って…
8ヶ月が経った
未来は学校に行っている
小1の後期から行けるようになった学校
毎日が楽しくて学校に行くのが楽しみにしている
入院する前とは違う未来の様子にお母さんは一安心
でも心配事がある
今は大丈夫だがいつ再発するかわからない恐怖
再発した時は移植も考えなければいけない…
小2になった未来
お父さんの傷はまだ癒えないが今は自分のことで沢山(いっぱい)
由希とお母さんは幸せにしていた
今まで以上に…
それから3年が経ったある日
未来は熱があり3日間学校を休んでいる
お母さんは心配になり病院に連れて行った
恐れていたことが起きた
白血病が再発してしまっていた
ちゃんと月に2回通院もしていたのにとお母さんは自分を責めていた…
未来はまた入院することになった
今回は再発ため入院は長くなると思うと長谷先生が言っていた
もしかすると小学校の卒業式に出れないかもしれない…と
未来は病室で1人泣いていた
声を殺して誰にも気づかれないように…
お見舞いに来たお母さんや由希の前では明るいいつもの未来のままで…
今回の病室は2人部屋だった
そこにいたのが1つ上の明志だった
明志は小学校3年生から入院している
今年で3年目になる
だから未来より先輩だ
年長さんの頃に発病した病気は未来と同じだ
辛いはずなのに毎日を明るく暮らしている
未来のお母さんと明志のお母さんは仲良くなった
お互いに同じ病気を持つ子どもがいる同士話が合った
明志のお母さんの名前は道加。未来のお母さんの名前は理子
明志のお母さんも女で1つで育ててきた
それからというもの未来と明志は兄妹のようになった
同室でもあり同じ苦しみを知っているから
長谷先生も認める程の兄妹愛が生まれていた
明志も未来のことを本当の妹のように接してくれた
未来の姉の由希も明志と仲が良くなった
そして数年後…
未来は中学2年生、明志は中学3年生になった
未来は小学校の卒業式には出られなかった
思ったよりも病魔が未来を襲っていた
中学の入学式も出られなかった
もう未来は小豆島には帰れない程弱っていた
今は一応退院しているもののまたいつ入院するかわからない
いつでも病院に行けるようにと榎本家は香川県内に引っ越してきた
由希は高校に上がったと同時に香川県内に引っ越していた
そのため未来と理子のために家を探していた
だがなかなかいい場所がなく諦めかけていた
明志はというと元気に学校に通っていた
でも明志もいつ再発するかわからない
理子は道加に相談をした
そうすると、道加は言った
「うちで住まん?その方が未来ちゃん安心やろ?
理子が仕事に行ってる間に私が未来ちゃん見れるやろ。そうしない?」と。
理子は迷ったがそうすることにした。
その方が未来も安心するし、明志とも一緒にいれるという安心感もあるし…
未来は学校に席をおいてもらうことできた
調子が良いときに行くことになった
ちなみに明志と同じ学校だ
だから明志と一緒に行くことが楽しみになっていた
1年が経った
2人はというと…
再発はしていなかった
明志は無事に中学校を卒業し県立の高校の予備校に行っている
勉強が少し不足していたため高校入試で落ちてしまった
みんなと一緒じゃなかったけど通信制の高校を受けるため猛勉強中だ
未来はというと…
再発していなかった。車椅子だが中学3年生になった
学校にも行っている
明志と一緒の通信制の学校に行けるように今までやれなかった勉強を頑張っている
1年前の未来とは違い、笑顔で行っている
理子は思っていた
”このまま、未来が生きててほしい
未来の将来を潰さないで…。”と
その願いは神様に通じたのか未来は毎日を楽しく生きていた
そして…
そして…
未来は晴れて中学校を卒業することができた
次に行く通信制の高校にも無事に決まり…
小学校の卒業式には出れなかったけど
中学校の無事に出ることができた
未来にとっては大きいこと
明志は自分のことのように祝った
明志も高校に入学することができるようになった
未来と同じ学年だけど嬉しかった
2人はなぜ通信制の高校かというと
主治医の長谷先生に聞いたところ
「普通科の高校だと精神的に疲れちゃうから
それだったら通信制にした方がええちゃう?」と言われたからだ
長谷先生の話は素直に聞くことができる
自分の経験を生かした話をしてくれるから
2人は”香川県医療学科通信制高等学院”に入学した
生徒数は25名と少人数の学校だ
1~3年生全員で25名。とても小さな学校だ
この学校は3年間通信教育で医療のことを学び
短大に2年間通って国家資格に合格すれば医者になれるというのだ
普通は医学部に入学し、6年間通わなければならないのである
なぜ2人は医者になりたいかというと
長谷先生と同じように自分の経験を元にして
人を助ける仕事に就きたくなったからだ
そして…
※”香川県医療学科通信制高等学院”は架空です
未来は15歳 明志は17歳
そんな時だった。またしても未来に病魔が襲ってきた
”白血病が再発…”
明志は元気なのに…なんで私だけが…
再び入院することになった未来は長谷先生に言われた
「次の桜は見れないと思います
今回で3回目(?)ですよね。もう抗がん剤は使えません。
骨髄移植もできないんです。型が合致するリスクは20~30%なんです。
それには半年以上の入院が必要となります
なのでそれにかけてみるのであれば多額のお金が必要となるので覚悟しておいてください。」
未来は心を閉ざしてしまった
あと何年、あと数ヶ月の命…
医者になる夢を諦めたくない
明志と一緒の夢を叶えるんだ
そうやって決めた将来が潰れる…
未来は弱っていった
未来は弱ってきている体を起こして手紙を書いた
明志へ
私が小5の時からの付き合いだね
明志はいつでも私の力になってくれたよね
だから私は明志といる方が楽しかったんだ
明志、私ね 言わないといけないことがあるの
それは自分では気づかなかったんだけど
私は明志に恋をしてたんだ
知らない間に明志を私のものにしようとしてたんだ
でも諦めないといけないんだ
私はあと少しでいなくなるんだ
次の桜は見れないんだって
これを読んでいるということは私はいないっていうことだから
明志と一緒にいることができてよかった
そして明志に恋をしてよかった
叶うことはなかったけどそれでも明志は私にとって大事な人
他の誰よりも明志は大事な人だよ。いつまでも…
明志、今までありがとう
私の代わりに…っていうか
私の夢を絶対に叶えてね
未来より
そしてこの手紙を書いて数日後…
眠るように息を引き取っていった…
その時は明志も同じ病院に入院していた
笑顔で天使のような顔
誕生日を迎える前だった
15歳という短い生涯を閉じた
未来は、理子・由希・そして明志・道加に進むべき路を教えた
それは
「明日は当たり前に来るのではなく
自分自身で切り開いていく未来」と…
未来はその通りに生きた
今でもみんなの心の中に未来は生き続けている
未来(つぎ)の道~未来(みらい)が教えてくれた進むべき道(あした)とは…~
私もだけれど明日が来ることは当たり前と思いがち
でも病気で自分の命の終わりを知ってしまったらどんなことをするのか…
私はきっと後悔しないように生きると思います
ただ後悔しない生き方と言っても一言では言えないもの
人間、いつどんな風に終わるかわからないもの…
もしかしたら明日、今日ってなるかもしれないと考えて生活していませんよね
未来もきっと小学校5年生で病気になるまではそんなことは考えていなかったかもしれない
病気になってからの未来の生き方に気持ちを寄せながら書けているかわかりませんが共感・感動を覚えてくれたら嬉しいです。