残響に問う

「小説家になろう」時代。


 彼は王だった。

 祖国のため、民のため、その生涯を捧げて心を砕いた。
 侵略者は多かった。
 何度となく犠牲を払いながら、それでも土地を守るため、誇りを糧にして、王は戦った。
 たくさん死にながら、たくさん救われた。
 臣下も、民も、それを称えた。
 称えられたけれども、王は救われなかった者たちを思って涙を流した。

 そして終わりが訪れる。
 これまでで最大の敵――臣下の率いる軍を蹴散らした後の玉座で。
 傷ついて、みるみる温かさを失う身体を玉座に預ける王に、ただ一人付き従った騎士が乞うた。

 ――貴方は、最高の王です
 ――どうか、もうお休みになってください

 最高の王と称えられて、王は最期まで涙を流していた。

 国を乱し、それを見捨てて死に行く自分を呪いながら、最期まで泣いていた。



 誰も、彼の名前を知らない。
  

残響に問う

残響に問う

この世に二度とは現れないようなほどに素晴らしい王様の話。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-10

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