妄想ディスティニー

プロローグ

「ごめんなさい」

そう告げ彼女は僕の前から消えてしまった。

校舎の屋上。

誰も居ない空間で僕は一人佇んでいる。

僕はたった今振られたのだ。


「また失敗か・・・」

同じ時間。同じ場所。同じ台詞。同じ答え。

僕はこの展開を知っていた。

振られた事に対しての強がりでも無くそのままの意味でだ。

正確に言うならば「何度も経験している」

第1話 転校生

「転校生の花宮加奈です。宜しくお願いします」

そう告げ彼女は頭を下げた。

『うぉーーー!!!』

途端男子達の歓声が湧き上がりクラスは騒然とした空気になる。

無理もない。

艶やかな黒髪は腰に届く程長く、人形のように整った顔立ち。
誰が見ても絶世の美少女だと口を揃えて言うだろう。

無論、僕もその中の一人である。
更に付け加えるならば・・・

『僕は一目惚れをした』

生まれて十八年。今年で高校三年生の代。
特に目立った特徴も無く、引っ込み思案な性格のせいで友達も居ない。
趣味は妄想と人間観察。
勿論恋人なんて居た事は無い。
そんな僕、白浜流(ながれ)は人生で初めて恋をしてしまったようだ。

休み時間に入ると転校生恒例の行事とも言える質問責め大会が行われている。

四方八方から飛んでくる色んな質問に嫌な顔せず受け答えしている様子から察するに花宮さんは性格も良いようだ。

勿論僕は話しかけに行く勇気など無く
こうやって自分の席から見届けている訳だが。

さて、妄想タイムにでも入るか。

始業のチャイムが鳴る前の時間。
友達の居ない僕は
「もしも友達が居たら」というテーマに沿って妄想している。

悲しい現実だが僕はこの妄想をしている時間が好きだ。

昨日のテレビの感想を言い合ったりだとか些細なジョークで笑いあったりだとか妄想の中でならいくらでも語り合えるから。

妄想ディスティニー

妄想ディスティニー

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-09

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  1. プロローグ
  2. 第1話 転校生
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