男女逆転~Female Counterattack~

男女逆転の果てに見えるものとは・・・・・・

私は世紀の大発明をした。その名も男女逆転薬。名前の通り、この薬を飲めば男性は女性に、女性は男性に完全な性転換ができるという代物だ。
 製薬会社でこの薬を作ると、国中が注目を集めた。そして、政府が私に声を掛けた。
 ある日、政府の使者がやってきて私に言った。
「せっかくの機会なので、この薬を全国民に服用させて、両方の性別のいいところや悪いところを認識してもらうという政策を打ち出したいので、全国民分のお薬を作っていただきたい」
「ええ、いいでしょう」
 二言で承諾すると、使者は聞いた。
「ちなみに、そのお薬の効力はいったいどれくらいの時間持つのでしょうか?」
「一生涯です。もちろん、もう一度薬を服用すれば元の性別に戻ることができますがね」
 それだけ確認すると、使者は私に大金を渡して製薬を取り付けた。ちなみにこの時の使者は女性だった。
 それから数か月が経って、完成した薬を政府に渡すとさっそく全国民に配布され、テレビで首相が政策の旨を発表した。
「それでは、この薬を今日、この時間にみなさん飲みましょう。私も飲みます」
 首相が率先して薬を飲んだ姿は日本中に流れた。彼が薬を飲んだ途端にみるみる骨格から肉付きまで変わって行き、ちょうど綺麗なおばさんと言った女性の姿になる様子が放送された。
 効力が本物だと知った国民は皆一斉に飲んだ。なにしろ、もう一度薬を飲めば元の姿に戻れるのだ。逆転期間は一か月なので、一か月後に薬が再配布されるまではいつもと違う日常を楽しめると、みんな期待にうきうきとしながら薬を飲んだ。あっという間に、男女が逆転した日本が誕生した。
 しかし、それからわずか数時間後に事件が起こった。
「但馬博士、大変です」
「どうしたんだ」
 若い筋肉質の男だった助手が、背の高い巨乳の美女となって慌てふためきながら私に言った。
「そんな女性になれたことが大変なのか?」
 私は一か月後にまた同じだけの量の薬を作らなければならないので、調合をしながら問いただした。
「違います! 反乱がおこったんです!」
「なにぃ、反乱!! どこのカルト宗教団体の暴挙だ!?」
「いいえ、そうではありません、反乱を起こしたのは男性、いや、元女性だった男達です!」
「なにぃ!?」
 聞くと、元女性だった男たちは、みな薬を飲むだけで身に着けた逞しい腕力を使って警察、自衛隊をさっさと占拠してしまい、おばさんやおばあさんだらけになった政治家たちをみなふん縛って、国の中枢を乗っ取ってしまったらしい。
「なんとふがいない……いや、それもそうか、今は警官も自衛官も、警備員に至ってまで、腕力を随分と失ったか弱い女性の姿になってしまったんだ。男になった女性たちの力には到底かなうまい」
 私は納得した。
「それだけにはとどまらずに、今やこの製薬会社までも元女性たちによる総攻撃を受けています」
「な、なんだって!? それは一体どういった心づもりで……」
「この製薬会社を破壊して、さらにあなたを捕まえてしまえば、もう二度とこの世に男女逆転薬が出回ることが無くなるからです。彼女ら、いや、彼らと言った方がいいのか、とにかく、元女性たちは自分達の手にした天下を永遠の物にしようとしているのです!」
「なんてこった」
「なんとか脱出用の車を手配しました。但馬教授はこの日本の、いや日本男児たちの最後の希望なんです。ここから逃げ出しましょう!」
 私は、助手の案内にしたがって製薬会社を脱出した。

 それから一年が経過した。私は山奥の小さな小屋に身を隠して、わずかな外の情報を得ながらも薬を作ることに没頭した。
「はぁ、「毎女子新聞」に「朝女新聞」「デイリー女性」に「女経新聞」か、やれやれみんな外面は強面な男達なのに、こんな名前の新聞に改名しよってからに……」
 私の唯一の情報収集手段は、なんとか男に戻してやった助手が毎日わずかながら収集してくる新聞だけだった。
 しかも、中身は全て同じようなものだ。元男の女性たちをひっとらえて見つけた者には与える賞金の相場や、これまで女性たちがいかに圧迫を受けて生きて来たかを延々と述べるだけのコラム。テレビ欄は女性を泣かせてきた俳優たちの名前が延々と連なったストリップショーで埋め尽くされている。
 たった一年で、元女性たちは新しい社会を築き上げてしまった。女尊男卑を謳い、元男性の女性たちをほとんど奴隷のような低い身分で扱っている。それが一目見れば男性が女性を徹底的に弾圧しているようにしか見えないのがややこしい限りだ。
 などと新聞を見ながら一息ついていると、突然小屋の扉が開かれた。
「お久しぶりですね、但馬博士」
 扉を開けたのは時の元女性総理大臣、秋津だった。
「おやおや、あの時の使者がこんなむさくるしい男になるとは、あのときにデートにでも誘えばよかったわい」
「あら、それなら今からでもデートしてあげるけど? 男女逆転薬を作ってくれたお礼としてね~」
 秋津はもともとの性別の口調で喋るが、今では完全なオカマ口調でちっとも色っぽくない。
「うえぇ、それは勘弁してくれ。デートの代わりに私を見逃してくれんか」
「それはできませんわ。あなたをこの世から消せば後顧の憂いを絶つことができるんですもの」
 秋津が指をぱちん、と鳴らすと新しい刺客たちがたくさん現れた。ぞろぞろと小屋の中に入ってくるのは、ほとんど裸に近い水着を着せられた女、つまり元男達の集団だった。
「おいおい、日本男児たちがみんな元女の奴隷にやすやすと成り下がるとは……」
 私は呆れながらも、ついつい元男だと分かっていているが彼らのきわどい部分に目が行ってしまう。
「あらあら、この子たちはとても賢い選択をしたのですよ、頭の中は猿同然の男のくせして」
「その発言、国際社会で言うと問題になりそうな差別発言だな」
「ふん、男なんて差別されて当然でしょう? 女たちの今までの苦しみも何も知らないで、文句を言えば打つ、一方的な愛を受け取らなければストーカーになり、どんだけ私たちの主張をしても態度を改めようとしない。いつまで経ってもお猿の大将になった気分で女たちを慰み者にして笑う。こんなバカたちは私たち女がきちんと支配して管理してあげないと駄目なんですもの」
「はぁ、それで……腕力で逆転できるようになれば、言うことを聞かせるためにねじ伏せたわけか」
「ええ。私たちの言い分が正しいのに、それを受け入れない男たちなんて、体で立場を思い知らせてやるしかありませんもの」
「やれやれ、ヒステリーが腕力を持てばとんでもない弾圧兵器になったもんだ」
「力があればねじ伏せる。当然でしょう?」
「今まで男達がやらなかったことを平然とやってのけてくれたなぁ。そう考えると男の社会でも立派な情があったもんだ」
「今でも情がありますわよ。男達が悪いことをしたって思っている元男性諸君らはそろいもそろって私たち女の子供を産む奴隷になって下さってますよ」
「こいつは酷い。女が天下をとった暁に、時代が一気に後退しちまったらしい」
「違うわ。女たちの新しい時代よ。そこに、お猿脳の男なんて必要ないの。それをこの日本が証明してみせましたわ。くっくっく、これから、世界中で男不要論が流れて、地球上から男たちが排除されることでしょう。さ、あなたもさっさと死んでくださいな」
 秋津がもう一度ぱちん、と指を鳴らすと、私は女たちの豊満な胸に体中を圧迫されてしまった。
 ああ、なんて幸せな気分。しかし、こうも圧迫されると窒息して死んでしま……。

男女逆転~Female Counterattack~

読んで分かるかと思いますが、私は筒井康隆が大好きです。その影響を激しく受けた作品です。
あと英語合ってますか? やっぱりウーマンズでしょうか。ちょっと英語がよく分からないのでこんな感じになってます。残念な大人です。

男女逆転~Female Counterattack~

これはSFなのかなんなのか。女性が男になったとき一体どうなるかを適当に考えてみました。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-08

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