私見 動物記

「昆虫記」を書いたのなら、当然「動物記」も…!!
という、至ってイージーな動機で筆を執りました。
内容は、主に私が飼っていた(亦は飼っている)、或いはこれ迄に出逢った動物達について、自分勝手な私見を書かせて頂きました。
筆者の趣味・趣向がかなり色濃い内容となっておりますので、その辺りをご理解頂き読んで頂ければ幸いです。

犬 ― イヌ ―

唐突だが ―――
私は犬との相性が昔から宜しくない。
どちらかというと、苦手な部類に入る。
何故なら、それは単純に " 怖い " から ―――。
幼少の頃、大きな犬に追いかけられた記憶許りが印象に残っているのである。多分それがトラウマになっているのだろう。

そもそも私の子供時代は、犬を平気で放し飼いにする家が多かった。
そして、今よりずっと野犬の数も多かった。
だから、登下校時や戸外で遊んでる時など、そういう犬に出くわす事はむしろ日常茶飯事だった。
実際、小学1年の頃だったか、シェパード犬に数十㍍追い回された事もあった。

が、何より一番のトラウマになっているのが、幼年期の恐怖体験であろう。
実はこの話、亡き祖母から聞いたもので、私は殆ど記憶に残っていないというのが正直な処である。

それはまだ私が幼い頃(3歳位だったと聞いている)、祖母は「折り紙」の内職をしていた。
当時折り紙は、外国の方々に大変人気だったらしく、海外向けにそういった商品の受注が結構あったようである。
それはさておき、祖母が毎回納品に行く " 折り紙問屋 " は、家から歩いて行ける距離だったが、厄介だったのは、近所に物凄くデカい犬を2頭も飼っている家があったそうだ。
しかもその犬共は、誰かが近くを通る度に大声で吠えたてた。
一応いつも、大きな檻に入れられているから良いようなものの、もし檻など無く鎖に繋がれた状態で飼われていたら、恐怖も更に倍増である。

そして、予期せぬ悲劇が起こった ――― !!!!
或る日、いつものように祖母は仕上がった折り紙を納品しに、問屋に向かっていた。
丁度私も、その時祖母におんぶされて一緒に付いていっていた。
納品の手続きも滞りなく終り、帰ろうと問屋を出た時………!!!
祖母の眼前に信じられない光景が写った。
あのドデカい2頭の犬が、檻から放たれこちらに向かってくるではないか!!!
見ると、何故か檻の扉は開いている。どうやら飼い主が、鍵を掛け忘れたらしかった。
祖母は咄嗟に身構え、幼い私を庇った。
その時 ――― !!!!
犬共はいきなり祖母に襲いかかってきた!!!
逃げる間も無く、亦私をおぶっていた為両手が塞がり防御する事も出来ず、全くの無防備な状態の祖母に犬共は容赦無く、その内の1頭が祖母の太腿に咬みついた!!!
その時私は恐怖の余り泣き叫んだという。それが功を奏し、問屋のご主人や近所の人達が文字通り飛んで来てくれ、犬共は取り抑えられ、祖母と私は一命を取り止めたのだった。
その後祖母は直ぐ救急車で病院に搬送され、十数針も縫う大怪我を負ったが、それ以上の大事には至らず、私の方も、祖母の命懸けの行動によって傷一つ負わなかったという事である。

然し、悲劇はこれで終わらなかった!!!
後日、大分傷も癒え仕事復帰した祖母が、問屋に折り紙の納品に行った時、問屋のご主人から思わぬ話を耳にした。
例の狂暴な犬共が2頭共、あの事件の数日後何者かによって毒殺されたというのだ!!!
犯人は全く不明で、一時祖母にもその嫌疑がかけられていたという。
唯そのご主人が言うには、犬共も飼い主も近所では滅法評判が悪く、犬共も屡々放し飼いにされていたようで、誰が殺(や)ってもおかしくないという状況だったらしい。
ともあれ、犬共には気の毒だが、そのご近所に平和が訪れたのは言う迄もない。

随分長々と、私の「犬のトラウマ」のエピソードを書かせて頂いたが、こういう無意識の中に埋没したトラウマこそが、その後の人格形成に大きく左右するのだと、認めざるを得ない。

さて、ここ迄書いてしまって、犬好きの方々に置かれましてはさぞ不快に思われた事だろう。それについては謝ります。スイマセン…。
唯一つ弁解をさせて頂けるならば………、
現在の私は、昨今の「お座敷犬ブーム」の影響もあってか、以前程犬嫌いではなくなってきている。否むしろ、懐っこい小型犬などは可愛く思える位に " 進歩 " した。
相変わらず大型犬には、今尚強い苦手意識が続いているが…。

猫 ― ネコ ―

「吾輩は『猫派』である。」

もし、
「貴方は『犬派』?それとも『猫派』?」
と訊かれれば、私は迷わずそう答えるだろう。
(尤も、無論『吾輩』とは言わないが)

前章の「犬」編で、散々犬嫌い(謝!)を示してきたので、それは察して余りある処だろうが、実際その通り私は猫好きである。
だが、誤解無きようお願いしたいのだが、犬が嫌いで「猫派」という訳では決してなく、純粋に猫は好きなのだ!!

そもそも私の猫好きは小学校時代に遡る。否、物心ついた時からもう既に好きだった気がする。1年に1回位は野良猫を拾ってきては、よく家の者に叱られたものだ。

ところが、ある一時期、我が家に空前の「猫ブーム」が訪れる。
それは私が大学生の頃で、当の私がたまたま(猫だけに!)大学のサークルボックス付近で1匹の仔猫を見つけ、確か生後1ヶ月位だったか、その愛苦しさに魅了され、思わず自転車の前篭に載せて連れ帰ったのが事の発端。
その子(♂)が大きくなって発情期を迎えた為お嫁さんを貰い、子供が産まれ、その子達が子供を産み、正に“産めよ増やせよ”状態で、成るように任せた結果、数年後遂にその数は何と“18匹”に迄増えてしまった!!!
当時家(うち)の家族全員が、今では信じられない話だが、「避妊」に関する知識を全く誰も持ち合わせておらず、当然と言えば当然の結果であった。
不本意乍ら近所からは“猫屋敷”と揶揄され、挙げ句の果ては町会長さん迄出張ってきて、苦情を言ってくる始末であった。
(これ亦至極当然の事なのだが…)
それらの経緯もあり、更に家計の比重をかなり占めていた“猫達の食費”の事もあって、余りに残酷な話ではあるが、家族会議の末、内半数程を手放す事に相成った。
その内半数程は、仔猫という事もあって貰い手が付いたのだが、“親猫クラス”ともなると中々そうもいかない。結局は1ヶ月経っても引取り手は現れず、結局やむを得ず、夜も更けた頃近所の河川敷の公園に捨てに行く事になった。実行者は私と2コ下の妹。二人共辛い役回りである。お互い後ろ髪を引かれる思いだったが、意外にも当の猫達はそれ迄の窮屈な生活から解放されたのが余程嬉しかったのか、我々の気持ちを全く察する事無く、有頂天になって河川敷の闇に消えていった…。

ところが、話はそこで終わらなかった!!
それから1ヶ月程経った或る日、夜の闇に消えていった猫達の内2匹がほぼ同日位に家に還ってきたのだ!それも、家で飼われていた時は殆ど懐かなかった、無器量(余計!?)な2匹だった。
因みに、その河川敷の公園から家迄は約1㎞程離れており、よく戻ってこれたと家族一同感心し、その日はたっぷりと餌を与えて休ませてやった。
然し暫くすると、還ってきた猫達に“異変”が見られるようになった。
家に残していた猫達を異常な程虐めるようになったのだ!!
約1ヶ月のサバイバル生活で、すっかり性格が荒んでしまったのか、はたまた置いて貰えた猫達への復讐からか、兎に角以前にも増して明らかに性格は悪くなっていた。

そして遂に、二度目の家族会議の結果、もう一度あの河川敷に“帰還猫”2匹を捨てに行く事が決定。亦しても夜半、今回は私のみがその任を負った。
猫達も不穏な空気を察してか何やら落ち着かない様子。だが不思議と暴れたりはしなかった。
そして河川敷迄2匹を連れて行き放った途端、亦しても彼等は一目散に闇の中に走り去っていった。
その光景に私は呆気にとられた。
「こいつら、アホなのか…!?」
でもこれでもう再び逢う事も無いだろう。
そう思い半ば安堵し乍ら、私は家路に就いた。

ところが、ところがである―――!!!!
2匹の内の、最も性悪の雄猫「長助」が三たび還ってきたのである!!
しかも、今回はタイムを大幅に縮め約10日程で!!
否全く、猫の性根という奴は本当に恐ろしい………。
この時程そう思った事は無い。正に“招かれざる猫”である。
(因みに「長助」の名の由来は、只単に長男だったからで、一応蛇足だが正式名称は、落語の「寿限無寿限無…長久命の長助」である。)

その後、長助がどうなったかというと……。
家族全員が悩みに悩んだ末に出した結論は、郊外のダム付近の山の麓迄捨てに行くという最も過酷なものだった。尚、今回に限り私は関知せず、その一切を親戚の伯父さんに委ねた。
そして ――― 、お察しの通りその後長助は二度と我々の前に還ってくる事は無かった。

今思えば、何とも後味の悪い経験であった。酷(むご)い事をしたと、今でも反省している。
でもあれだけタフな猫だから、結構自然の中でも逞しく生きていったであろう。否、そう信じたい!! そう信じないとやはりやり切れない。

それにしても………、
前言はどうした!?
何が「猫好き」だ!? 何が「猫派」だ!!??
何ともお恥ずかしい限りである!!!
然し乍ら、弁解のようでアレだが、私は誓って「猫が好き」だ!!!
そもそもこれら一連の悲劇は、我々家族全員の無知に因る所が大きい。
犬にしろ猫にしろ、或いは他の動物にしろ、飼うと決めたらとことんその生き物について徹底的に勉強し、絶対に無責任な飼い方をしてはいけないという事である!!!
読者諸氏に於かれましては、私のこの過去の過ちと悲劇を是非とも“反面教師”にして頂き、今後ペットを飼う際の教訓として含み置き頂きたいと願う許りである。(合掌)

【追記】
これは正真正銘の蛇足なのだが…、
猫と言えば、最近某所で『シュレーディンガーの猫』という文言を知った。
何でも「量子力学」に関する専門用語だそうで、私も「猫」というワードに釣られて一応調べてみたが、結局よく理解出来なかった。
興味を持たれた方は是非調べてみては?
(正直、かなり難しい内容です!)

私見 動物記

最後迄読んで頂き、どうも有難うございました。
これからも、尚一層自然観察に目を向け、更なる邁進(ネタ収集)に努めて参る所存ですので、作品更新毎に再読して頂ければ大変嬉しく思います。
尚、「昆虫記」同様、かなり偏った内容の文章になっていると思いますが、その辺は "私見" という事でご容赦頂きたく宜しくお願いします。
m(__)m

私見 動物記

『動物』に纏わる様々な事を、私の体験談も交えて書き綴った、独断と偏見による私見的四方山話。 尚“くくり”は「脊椎動物」全般という事でご了承下さい!! (鳥類・魚類を含みます。)

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-05

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  1. 犬 ― イヌ ―
  2. 猫 ― ネコ ―