好きだよ。②
出遅れた心
恐怖に負けてたら、何もできない。
…でも…でももし変な空気になったら…?
萌絵達には告白するから付いてきてなんで言えないし。
……やるっきゃないのかな。
「愛?」
愛楽麗という私の名前を愛と呼ぶ人はただ一人…。
生徒をいつもあだ名で呼んでいる、
「羽田先生‼︎」
「どうした?」
「ううん、何もないよ?」
「そうか…?」
「うんっ♪」
「もうすぐ授業始まるから教室戻れよ?」
「あ、本当だ。はーい( ´ ▽ ` )ノ」
ニコニコ返事をしながら羽田先生と話す。
あと10分あるんだから…もう少し話したいな。
なんて言えるわけなくて。
「…羽田先生?」
「ん?」
「先生…奥さんと喧嘩したの?」
「………いや?なんでだ?」
「あ、ううん。ごめんね、縁起でもないこと言って」
「いや。何かあったんなら言えよ?」
「うん‼︎ありがと♡」
「おう」
私は引きつってるであろう顔をかばいながら教室へ戻った。
…ハァ…先生…奥さんと別れないんだよね。
…良かった…ね…。
なんだか複雑な気持ちだった。
この時は8割好きだと確信していた。
逆に言えば2割は分かってなかったんだけど。
「愛楽麗ーっ、どーした?」
「えっ?あ、ううん。」
「そ?ならいいけど…。」
「…私初恋したかも」
「えっ⁉︎まじ⁇」
「うん…。」
「誰々?」
「え、言えないよ????」
「なんでよー‼︎私頑張って告白したんだから」
萌絵がしつこく質問攻めをしてくる。
…そんなこと言ったって…萌絵にだけは絶対に言えないんだもん。
「…松尾くん」
「えっ⁉︎松尾祐介⁉︎」
「えっ?あ、うん…?」
偽名を使ったつもりが、萌絵の知り合いにいたらしい。
…こうなったらその松尾祐介って人に恋してることにするか。
「だってだって、松尾くんって8組だよ?私ら1組なのに会うことあったの?」
「え?あ、ま、まぁね」
「へーっ!ねね、教えて教えて!」
「え…⁉︎…っと…わ、私の一目惚れ…だよ」
「なーんだ、話したことないんだ?」
「…うん」
「松尾くん人見知りだもんなぁ」
「そうなの…?」
「え?知らないの?」
「ま、まぁね。」
好きな人はただ一人なのに…。
羽田先生だけなのに…。
私は自分の素直な気持ちだけではなく、萌絵にまで嘘をついた。
ごめん…萌絵…もうこの話はしたくないんだ。
「ごめんね萌絵。もう、いい?かな」
「祐介…ね」
萌絵が何かを考え込んでいるように腕を組んで首を傾げていた。
知り合い…なのかな?
『祐介』って呼ぶくらいだから…幼馴染みとか?
「祐介ね、私の元カレなの。」
「ふぅーん………って、えぇ⁉︎」
元カレいたのね、萌絵。
私は大袈裟に驚いたフリをした。
自分の好きな人がもし親友の元カレだったら、絶対驚くから。
「祐介ね、優しかったよ。私が振ったんだけどね、そっからも優しくしてくれたの。
祐介…ね…グスッ…」
「…泣かないで…」
嘘付いたのに…泣かれるなんて…私の嘘で泣いてるみたいじゃんか。
「祐介の事…よろしくね?」
「…う…ん…」
「好きなんだよね?」
「………萌絵……ごめ「好きなら幸せにしてあげてね?…例えその人に彼女とかがいても。」
「え?」
「私は無理だよ?もう別れたし。…だけど愛楽麗なら可能性ある…から。」
「…………うん…?」
なんかおかしい。
まるで…まるで羽田先生の事を言ってるみたい…。
『彼女とかがいる』⇨『奥さんと子供がいる』
『もう別れた』⇨『振られた』
なんで…?
わかってるのかな…?
「祐介、優しいからね。祐介、人見知りだけど面白いからね。祐介、捨てないであげてね。」
「…ご…ん」
「ん?」
「ごめん萌絵…ホント。」
「いいよいいよ♪好きになるのは仕方ない、愛楽麗が教えてくれたんでしょ?」
「うん…」
「頑張れ愛楽麗‼︎‼︎」
「うんっ…‼︎」
私は…決めた。
気持ちを伝えよう。
伝えて振られて、スッキリしよう。
そして新しい恋を探そう。
先生のために。
萌絵のために。
松尾君の為に。
そして…
私のために。
先生の事大好きだから。
好きだよ。②