消し去られた者

序章 消された者

ざあざあと雨が地面や木の葉を叩きつけ、滴り落ち、大きな湖を形成する中を一人の少女が走り抜ける。
少女が身に纏っている服は目も当てられないような無残なものだ。全身びしょ濡れな上に泥だらけ。ブーツはもはや役目を果たしておらず、マントは数箇所に傷があり血が滲んでいる。腰からぶら下げている鞘も傷だらけで、剣は入っていない。
それだけボロボロになっているにも関わらず、少女はただひたすら走り続ける。

名前も、家も、大切な人も、何もかも全てを失った少女。
当然理由も当の昔に失った。
なら、なぜ走り続けるのか。

それは少女にも分からなかった。

消し去られた者

消し去られた者

全てを失った少女と全てを手に入れようとした少年の話。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-05

CC BY-NC-ND
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