拷問官

彼の気分は高揚していた。また今日も仕事を始められるから。彼の生きがいは拷問だけだ。
そしてその目的は自白ではない。拷問は彼にとって娯楽であり愉悦であり享楽なのだ。
彼はこれから訪れるであろう甘美なひとときに思いを寄せ、破顔する。その醜く歪んだ顔のしわ一本々々が彼の歴史だ。
最初の犠牲者は男だ。拷問官の目は、普段は死んだ魚のようなその目は今は爛々としている。拷問官の手が男へ伸びる。
男はまず田と力に解体された。力の上に置かれた田が無惨にも切り落とされたのだ。そのために男は男でなくなってしまった。しかし拷問官の仕事はまだ始まったばかりだ。
彼は次に田の口を強引に開き、そこに収まっていた十を一気に引き抜く。これではもう稲は作れない。口はショックのあまり口をぽかんと開け放心している。
十も一と1に分解されてしまった。これでは一足す1で2にしかならず、その価値は5分の1にまで落とされた。
拷問官は口と一と1の姿を見て嗜虐の快感の酔いしれている。彼の視線は力へと向かう。力は恐怖のあまり力なくうなだれている。
拷問官は松明を手に取り、力を炎で炙る。そのために飛んで火に入る夏の虫との言葉が示すように力は蚊になってしまった。
次の犠牲者は医者だ。拷問官は医者をまじまじと見つめる。彼はおもむろに医から矢を抜き、放つ!>→◎的中!者も土とノと日にされ、土ノ日という国民の祝日になった。
三人目の犠牲者は作曲家だ。拷問官にはその恐怖に屈服した下僕たちがいる。彼はそれらを呼び寄せる。がとっとたとをとるが来た。
拷問官は作曲家を並び替え、それに下僕たちも加えて曲がった家を作るにしてしまった。作曲家は建築家にされたのだ。それだけならまだよい。しかし彼は曲がった家を作る。それは欠陥住宅ではないか。そんな家を建てる者はもはや建築家ではない。では彼は何者なのだ?
最後の犠牲者は筒井康隆だ。まずは筒のヶが毟られた。同じように残ったヶも毟られ筒は同にされてしまった。日本が誇る希代の天才作家ももう年なので少しくらい毛が少なくてもいいと思うのだが彼の美学はそれを許さなかった。
同井康隆は激怒した。同井康隆の筆力は凄まじく拷問官は一瞬で才考門ロウBにされてしまう。しかし彼の怒りはこの程度ではとても収まらず、その筆先はななれんぷへと向かう。
同井康隆はSFからナンセンス、ドタバタ喜劇にジュヴナイル果ては国語辞典までなんでもござれの海千山千の千両作家であり、正攻法ではとても勝ち目がない。ななれんぷは、を投げる。しかしあっさりと躱されてしまう。、!、!、、、!とひたすら投げ続ける。そのうちの一つがかろうじて命中した。しかし同丼康隆にとってそんなものは蚊に刺された程度だ。彼はななれんぷを捕まえる。
同丼康隆はななれんぷをぽかりと殴るとケッケと笑い、なとなを奪い取って娼婦にしてしまった。ああ、僕のななちゃん!そんな空々しい顔しないで!
そんなこんなでれんぷの目からは悲しみのあまり。が零れ落ちました。そして気も触れんばかりに泣き叫ぶと、ピクロスになってしまいましたとさ。悲しい悲しいお話です。

拷問官

「作曲家=曲った家を作る」の並び替えは、西村朗(著)『曲った家を作るわけ』から借用しました。

拷問官

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-03

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