失恋の色

叶わぬ恋のうつくしさ

びゅうびゅう。

荒れる…誰にも見えない世界。
無色の細線がクルクル回る、クルクル踊る。

我慢できずに、忙しなくゴロゴロお腹を鳴らす。

目は、覚めない。迷いも醒めない。
さめるのは、明日と昨日の間の日。
特別な日、きっとこれからも歩いていく日。

◉「台風…。台風って、好き?」

◆「急に何を言いだすの。」

◉「台風が来たね…。」

◆「そりゃあね。風も強い。あっ…見て!何か黒いものが風に乗ってくるよ!」

黒いもの。
何も変わらない。中も見えない、静かなまま–

★「うーん…。」

◆「あ…ごめん、起こしちゃった?」

★「うん…」

◆「…まだ、眠る?また、眠る?…」

★「ううん…どこを見渡しても色が無かった。だから…」

◆「…起きる?いま、黒いものが飛んできたんだよ。なんだろうね、あれ。」

黒いもの。
無色に落ちる、ほんの一滴。

◉「ねぇ、台風って、好き?」

◆「またそれ?…うーん。好きかもしれない。だって台風が来てくれると、そのあと真っ青な海みたいに広くなって、真っ赤な果実がトクトク笑うからね。」

◉「…そう、かな。」

★「わたしは、台風…嫌い。」

◉「どうして?」

★「だって、嘘だよ、あんなの海じゃない、果実でもない。遠い遠い宇宙だよ。果てしない。笑う?嘘だよ、それ。泣くんだよ。」

◆「そうかなぁ。」

黒いもの。
ほんの一滴が、じわじわと広がる、黒いもの。
何色とも交わらないはず、の黒いもの。

いつも、右。それはえも言われぬ、深層の慣習。
ふと左を向いてみる。
それは混ざり合っているかもしれない。

◆「あ、見てごらん。」

★「あっ…」

◉「これは…少し、明るくなったね。」

いつの間にか、世界は目を覚ましていく。

ギザギザのレモン色。
隙間から覗くオレンジ色。

◉「また明るくなった…どんどん明るくなる…」

◆「うん。でも、あの黒いものは、なんだろう?ずっとウロウロしているね。ねぇ、窓、開けてもいい?邪魔だよ、あの黒いもの。」

◉「ダメ…まだ台風は過ぎてない。それに、あの黒いものは…触れちゃいけない。」

★「そう…なのかな。」

◉「そう。」

◆「じゃあ、カーテン閉めようよ。怖い。」

◉「うん。閉めよう。」

★「お腹…空いたな…」

◆「そうだね、お腹空いたな。」

カーテンは閉まる。

みんな、今日も笑顔。
無色の笑顔に、明日もこんにちは。

失恋の色

失恋の色

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-02

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