肺と料理(作:キュアセブン)

詩「肺と料理」

死にたいと思ってさ、
煙草を始めたんだ
だけど生まれてこのかた優等生で通してきたから
煙草の正しい吸い方なんてわかんなくて
口の中に煙を含んでは吐いてを繰り返してたら
「お前、ふかしてるだけじゃん」
って、
「煙草は肺で吸わなきゃだめだよ」
そんな風に言われるとこっちもへんに意地を張って
「俺はこっちの方が性に合ってる」
って、
その場はそうやって通して
ひとり隠れて別の場所で煙草をくわえて
ためしに肺にまで煙を入れてみたら
どうしようもないくらいにむせてきて
涙が出てきて
死にたいと思ってさ、

死にたいと思ってさ、
酒に狂ってしまおうとしたんだ
だけどてめえの生活さえままならない学生だから
高い酒なんてとうてい買えなくて
スーパーで売ってるいちばん安い酒を買って呑んでたら
「この酒不味いな」
って、
「うわ、これ料理酒じゃん」
そんな風に言われるとこっちも引くに引けなくなって
「俺はこっちの方が性に合ってる」
って、
その場はそうやって通して
ひとりになった時にまた新しいのを開けて
一瓶いっきに干したところで
違和感がとたんにどっと溢れてきて
反吐が出てきて
死にたいと思ってさ、

死にたいと思ってさ、
でもこんなんじゃ死んでも死にきれないなって思ってさ、
ほら、
死ぬのにも格好つけたいだろ
だからその格好がつくまでは
生きようと思ってさ。

肺と料理(作:キュアセブン)

肺と料理(作:キュアセブン)

北海道大学文芸部において評価の高かった作品です。お楽しみください。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-01

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