電車

いつから鞄にあるのかわからないような怪しい飴をこの世の終わりみたいな顔で舐める。
あー、この時間の電車だと授業間に合わないのか〜。とか入学2日目みたいなアホなこと考えながら電車に乗って、今日も講義に遅刻する。
わたしの隣に座ってる男からは嫌なアンモニアとずっとあけてない押入れの臭いが漂っていて、すぐ目の前にはヒョロヒョロとしたおっさんが立ってこちらを見ている。今日に限って胸元のあいた服を着てきてしまったことに心底ウンザリする。

疲れた。
忙しくて、もう長いこと会いたい人に会ってない。
肩にさす日差しがあつくて、ふと窓に目をやった。
窓から見える景色はすごく綺麗で、もうこんなことなら、この景色が美しいうちに、私の怠惰も思い出も、全部ひっくるめて体ごと線路へ投げ出してしまいたいと思った。

電車

電車

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-29

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted