ズボラと几帳面

リクエスト*リンク夢

1

「マサコ!…マサコ!」

「あれ、リンクじゃないですか。どうしたんですか?」

「ウォーカー…いえ、なんでもありません。
君は確かこれから任務の報告に行くはずでは?」

「はいはい、今から行きますってば。…あ、そうそう。マサコさんならさっきラビと一緒にいましたよ」

「そうですか、では」


くるりと踵を返し、今度はラビを探す。
こうも次から次へとやることが増えるのは他でもないあの人のせいだ。



「…マサコ!見つけましたよ!あなたって人は!!」

『リンク、そんなに青筋立ててどうしたの?』

「誰のせいだと思ってるんですか!?」


胃がキリキリと痛む。
マサコは一応仕事上の上司で、本来ならこなすべき責務が山のようにあるのだ。
……本来なら。


「ゴホン…それでは帰って仕事をしてもらいます」

『えぇ…眠い』

「明日までの書類がどれだけあると思ってるんですか?」

『上の奴らなんて待たせときゃいいじゃん。どうせ口だけでなんもしないんだし
…戦うのはエクソシスト。私達はそれを補佐するべき立場なのに、あのハゲども口出すだけ出してなんもしやしない』

「…それとこれとは話が別です。」

『あーはいはいわかったわよ。リンクは頭が固いんだから』


まいったまいった、と手を振りながら仕事場に戻るマサコ。
その後ろをついていくリンクの顔は、微妙に浮かない表情だった。



**


【数時間後】



『あー………終わったぁ……』

「お疲れ様です。それでは私はこれを提出してきますので」

『缶詰めで働いた一応の上司に労いの言葉もないの…
…まぁ、いいや……眠…』


マサコはそのまま机に突っ伏し、規則の正しい寝息を立てて眠る。


「………っ」


そんな彼女に一瞬手を伸ばしかけ、髪に触れる手前で手を引っ込めた。
これ以上触れるのは部下と上司の域を越える。
それはいけない。これは仕事なのだから、私情を挟むべきではない。

そう自分に言い聞かせ、部屋を出た。

2


「…ふう」

仕事を終え、疲れた目を誤魔化すように眉間を押さえる。

「リンクじゃないですか」

「どうしたんさー?」

「……ウォーカーにJr.…」


よりによって今一番会いたくない二人だ。
ラビがニヤニヤしながら肩に手をかけてくる

「マサコさんは?」

「彼女なら机に突っ伏して寝ています」

「男ならベッドに運んでやれよ」

「そうですよ!…まさかリンクまだ告白してないんですか!?」

「…なんの話か検討もつきませんが」


なぜ知っているんだ。
本格的に胃が痛くなってきた

「…リンクが仕掛けねーんなら俺が攫っちまうぞー?」

「だからなんの話ですかJr.」

「知らない振りすんならそれでもいいけど。
んじゃアレン、俺マサコの部屋行ってくるさ〜」


女好きの彼ならやりかねない。
しかも彼女は今寝ている。一度寝ると時間の許す限り寝続けるのだ。


「何する気ですか、ラビ」

「何って…アレンはおませさんさね♪」

パチリとウインク(眼帯をしているので言い切りがたいが)をする彼の目は本気だった。


「待ちなさいJr.」

「んぁ?」

「彼女にはまだ仕事があります。では私はこれで」

「リンク!」


アレンの声を背中に受け、しかし止まることなく彼女の部屋まで向かう。
焦っているのか、自分らしくない。
彼女といるといつもそうだ。予定が狂わされ、心をざわめかされ、そのくせ本人は気づいていない。

もう我慢の限界だ。



**



「マサコ!」

『…ぐぅ…むにゃ…』


人の気持ちなど知らずに眠りこけているその顔は、見慣れたはずなのになんだかイラっとする。
恋は甘酸っぱいなどと言った人間の気が知れない。


「…っ」

『ん…っ………!?!?!?』

口で口を塞ぎ、…暫くすると彼女は驚いたように目を見開いた。

「…ようやく起きましたか」

『へ、ぁ……りんく…?』

なんて顔をしているんだ。
自分は仮にも男で、しかも自分を好いている男の前で。


『…な、何怒ってるの?っていうかさっきの…は……』

ようやく頭が回り出したのか、彼女は顔を赤くしてうつむく。
何時ものマサコらしくはない。けれど、なんともいじらしい姿だった。


「…あなたのせいで私の予定が狂わされていきます」

『…はぁ…え、あの、そんな文句を言いに来たの?』

「話を最後まで聞きなさい」

自分はこれまで我慢強い方だと思っていた。けれど、
あまりの鈍感さに怒りがこみ上げてくるのは初めてかもしれない。

「………あなたのせいで隠しておこうと思っていたのが無駄になりました」

『…なんの話デスカ』

「あなたは女性なんですからもっとそれなりに警戒心を持つべきです。」

『は、はぁ…つまりリンクは何が言いたいの?』

「…あなたが好きです」

『へっ!?』


振られる覚悟でいたのに。
いつも通り鼻で笑われて終わると思っていたのに。

彼女は泣き出した。


「!?ど、どうしたんですマサコ」

『り、リンクに…嫌われてるとばっかり、思ってたから…』

「はぁ!?」

『だってリンクいつも怒るじゃん!笑わないし!起こし方乱暴だし…!!』


いつもは毅然に振舞っているが、それでもやはり年相応の女性なのだ。
いくら寝ぎたなくても、男前でも、泣く時は泣く。


『嫌われてるんだと思ってずっと言わなかったのに!
…好きとかなんだよ!私だってリンクが好きだよ!!』

「……へ」

『なんか文句あるかよ、ばかっ…!』


聞き違いかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
顔に一気に熱が集まり、今までの自分が恥ずかしくなる。
と同時に、目の前で涙を流す女性がなんだか愛おしく思えた


「……り、両想いというやつ、ですか」

『リンクなんか嫌いだぁっ、ばか、はげ、ほくろ!』


そういえばいつかウォーカーが言っていた言葉があった。


「…女性がいうバカ、とは《好き》と言うこと…ですか」

『Σッ……知らないっ!』


いつもはカチンと来る素直じゃない反応も、彼女の顔が赤いせいで全く頭に来ない。


「…マサコ、好きですよ」

『………うん、私m』

「意外と女性らしいところもあるんですね」

『…やっぱりリンク嫌いハゲろ三つ編み』



喧嘩するほど………?


End

ズボラと几帳面

ズボラと几帳面

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-28

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
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