ある殺人者の心理
久しぶりに書いた短編作品。
なろうにも載せています
短編としても,朗読としても,声劇としても自由にお使いください
※素晴らしいイメ画は私の素晴らしい友人に書いていただきました!
ほんとにありがとう!
今日、俺は殺る。
理由は至って明白。
殺したいから殺す。
ただそれだけ。
他に理由なんていらない。
そう…まるで小さな子供が無邪気にありやダンゴムシを踏みつぶす様に…。
あるいは雌の蟷螂が雄を食い殺す様に…。
ただ本能・欲望の赴くままに…。
目の前で命が消える瞬間って美しい…。
特に同じクラスメイトの手によって消えていく命…。
誰もが顔面蒼白,飛び出るのではないかというくらい大きく見開かれた瞳、生きたい、死にたくないと必死に懇願するその表情…。
俺の殺意の炎を更に強く、激しく燃え上がらせる。
そして…そんな喉元を切り裂く。
切り裂かれた、人間だった「モノ」は当然、主の言うことを聞くことなく重力に従って倒れていく。
その時に切り口から真っ赤な噴水が沸き起こる。
その噴水の事と言ったら、何物にも例え難く、変え難い美しさを持っている。
しかし儚い…直ぐに終わってしまう。
周りに実験台が散らばる教室で美しい噴水ショーが終わったあと、俺は心の底から笑いがこみ上げてきた。
何故か?
その答えは俺にも分からない。
俺は沈んでいく夕日の光を、噴水の真っ赤な液体がかかった身体で受けた。
外からはパトカーと救急車のサイレン…。
ここの教室にある実験台は、どうあがいても助かることはない…。
こんなに清々しい思いをしたのは17年という短い間ではあるが、初めてだろう。
しかし、本当の楽しみはこれからだ…。
俺は実験台の首を切ったナイフの切っ先を自分の首に近づける。
そして…切り裂く。
一瞬の痛み、しかしそれを乗り越えてしまえば俺の好きな美しさが残る…。
結局一番美しかったのは…自分自身だったのだな…。
これこそが俺の追い求めていた美しさ…。
ほかの実験台より一回りも二回りも大きな噴水がそこに完成した…。
夕日を浴びてキラキラと煌めきながら…。
Fin.
ある殺人者の心理