三行半

 ここは、徳川時代中期、花のお江戸は日本橋、呉服問屋中村屋の屋敷。そこの若旦那、弥一郎の妻になったお菊は、齢18、嫁いで3年ほどになるが未だ子を宿さず、肩身の狭い思いをしていた。
 そして、ついに若旦那より、
「実家へ帰れ。」
と、三行半を突きつけられたのである。
 この時代、子を産めない女は、用無し、離縁され、追い出されてしまうのである。

 実家へ戻っては見たものの。そこは既に兄が跡を取り、妻を娶り子も3人おり、今更お菊がいる場所などないのである。
 仕方なしに話のあった百姓家に嫁いだところ、あっという間に子を宿し、あれよあれよという間に三男四女の子だくさん。めでたしめでたし、大忙しとなった。

 この時代、女は、べっぴんであるとか色白であるとか言うよりも、たとえ無学でも少々不細工でも、丈夫で尻がでかく、子をたくさん産める方が良いのである。

 ところで、三行半を突きつけた呉服問屋の若旦那は、再婚を繰り返すも妾を持とうとも、いっこうに子は出来なかった。

 この時代、子が出来ないのは、男が原因などと思われることはなく、
「祟りじゃ~~。」
などと、言われたそうな。

三行半

三行半

男尊女卑の江戸時代のお話。つい最近まで、このようなことはあったらしい。

  • 小説
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-03-24

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