【創作BL】黒百合と向日葵
【連載中】
「お前、つまんないの?」
そう言ったのは、誰だったか。
主人公・黒咲由利(くろさきゆうり)は、めんどくさがりの高校1年生。
何に対しても無気力で、色のない毎日を送っていた。
そんな彼の前に、クラスメイトである樋廻一真(ひまわりかずま)が現れ
「オレのパートナーだ」と告げられる。
樋廻との出会いが、彼の人生を変える――。
【作品概要】
本作品はBL要素を感じさせる内容を含んでおります。
露骨な性的表現はありませんが、それ類の単語は記載する予定です。
ご理解の方よろしくお願いします。
【公式サイト】
http://kuroyuri-of-himawari.jimdo.com/
【公式Twitter】
https://twitter.com/kuro_of_hima
第一輪
めんどくさい。
だるい。
――つまんない。
そんなことしか思わない毎日だった。
“楽しく”なんて自然に忘れた。
“幸せ”なんて母親の腹の中に置いて来た。
“愛”なんて、最も無駄なモノだろう。
めんどくさい。
――あぁ、めんどくさい。
「……面倒じゃないのは、お前ぐらいか」
青い空を見上げ、ポツリとつぶやく。
誰もいない空間に、冷たいコンクリート。屋上は昼寝をするのに最適な場所だ。
……虫の声がうるさい。
夏が近付いて来るこの時期は、虫の鳴き声と中途半端に暑い気温が、よりだるさを引き立たせた。
この高校に入学して早二ヶ月。
俺はいつも通り、こうして屋上で昼寝をしている。
……ただ、いつもと違ったのは、扉を開く音が聞こえたぐらいだろうか。
「あーっ! 黒咲いたー!! 探したんだぜ~」
扉の方から聞こえてくる、自分の名前を呼ぶ大きな声。
どこかで聞いたことのあるその声は、軽やかな足音と共にこちらへと近付いて来る。
俺の隣で足を止め、腰を下ろすそいつは、金髪オカッパに青の瞳という不思議な容姿をしていた。
「……うるせぇよ。昼寝の邪魔するな」
「ひどっ! それがパートナーに対する態度かよ~!」
「……は?」
初めて話すというのに、コイツは何を言い出すんだ。
パートナー? 誰と誰が? 頭沸いてんのか。
“帰れ”という思いを込め、思いきりソイツを睨んだ。
だがソイツは俺の行動に気付きもせず、ニコニコと笑っているばかり。……気持ち悪い。
「何だよー、変な顔すんなよ! そんなにオレとパートナーになったのが嬉し」
「黙れ、意味分かんねぇこと言ってんじゃねぇよ」
ただでさえ寝起きで機嫌が良くないというのに、話したこともない奴に訳も分からないことを言われたら、誰だって少しは嫌にでもなるだろう。
“パートナー? よく分かんねぇけど、よろしくな!”なんて言える程、俺はバカじゃない。
「んー、だからパートナーだって。1ヶ月後に学園祭があるだろー? それに向けての合唱練習で、二人一組になって特別練習をすることになったってわけ!」
「……つまり、その相手がお前ってことか」
「そういうこと! あ、オレのこと分かるー? 同じクラスの樋廻、樋廻一真! いつも黒咲のこと見てたんだぜ~!!」
……頭が痛い。こんな痛みは生まれて初めてかもしれない。
こんなバカと接したのが初めてだからだろうか。
俺とコイツじゃ、性格も容姿も何もかもが正反対だろう。
こういうバカは見ているだけで疲れる。一刻も早くこの場から立ち去ってほしいものだ。
――樋廻一真。
その名前はよく知っている。
派手な見た目にうるさい性格、おまけにクラスの“人気者”というやつだ。
珍しい名前に引けを取らない、そんな奴。
俺とコイツはただのクラスメイトであり、ただの他人だ。
お互いの人生において、居ても居なくても変わらない程度の存在。
……コイツが、俺のパートナーだって?
ふざけんな。
俺は一人で生きて行きたいんだ。
よりにもよって、何でコイツなんだ。他にもクラスの連中はいるじゃねぇか。
決めた奴の気が知れねぇ。
「っつーことで! これから練習を始めたいと……って何寝てんだよー!! 黒咲ぃーー!!」
「……」
こんなバカに“パートナーにはならねぇ”と言ったところで、素直に聞き入れるとは思わない。
めんどくさいことは無視に限る。
早く帰れオカッパ。
「無視すんなよー! やっとお前と話せたのに、このまま帰りたくねぇよ~」
「……」
シカトし続ける俺に、諦めず何度も言葉を掛けてくるバカ。
それどころか俺を起こそうと、触ってきやがる。
しつこい、うるさい、めんどくさい。
「黒咲って何でいつも一人なんだー? 一人が好きなの?」
「……」
お前には関係ないだろ。
「あっ、今度オレと遊ぼうぜ! パートナー記念!」
「……」
パートナーにはならねぇ。
「……なぁ、黒咲」
「……?」
さっきまでとは少し違ったヤツの声色に、思わず顔を上げてしまった。
視界に入って来たのは、遠くを見つめながら目を細める、樋廻だった。
……あぁ、これが樋廻か。
「……」
仕方ない。無視が通じないなら、ハッキリと言ってやるか。
そうすれば、諦めて帰るに違いない。
「はぁ……何だよ。パートナーのことな、ら……」
ヤツと目が合って、言葉が詰まった。
「お前、つまんないの?」
そう言いながら、微笑む樋廻。
柔らかく笑いながら放ったそれは、表情とは裏腹に、黒い意味がこもっているに違いない。
……あぁ、
コイツの言葉は、耳障りだ――。
【創作BL】黒百合と向日葵
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