チョコレート

私は彼が好きだったのだ。

私は彼が好きだった。私は彼とキスがしたかった。私は彼と手を繋ぎたかった。
私は彼に頬を撫でられ、愛の言葉をささやかれたかったのです。
つまりは、彼が欲しかったのです。
2月14日彼のためにささやかな愛を込めてチョコレートを作りました。
出来栄えはそこそこな、甘いチョコレートでした。

僕はあの子が好きだった。僕はあの子とキスがしたかった。僕はあの子と手を繋ぎたかった。僕はあの子の艶やかな髪の毛を触り、静かに煌めく瞳を見つめていたかった。
2月14日あの子からクッキーを貰った。
あの子のクッキーは絶品とまではいかないが、僕には勿体無いくらいの味だった。

彼はあの子が好きで、あの子に愛の言葉を囁きたいのでしょう。
彼があの子と話すたび、彼の小さな耳は赤く染まる。
彼の耳が、赤く、赤く染まっていく様を、私はただ見つめる事しか出来なかったのです。

彼にあげられなかったチョコレートを、ひとつ口に含めると
喉を赤く焦がしていくかのようにチョコレートが溶けていった。

チョコレート

チョコレート

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-22

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