船出
1
まだこの世が薄明に包まれていたころ
ひとつの無垢な魂が まぶたをそっとあけた
「おはよう 万象よ」
彼はそう言うと 見渡す限りの「混沌」に 名前を付けていった
神にしてはあまりにも小さな声だったが
人にしてはあまりにも大きな声だった
「おやすみ 万象よ」
彼はすべての名前を付けたあと 静かにそう言ってまぶたをそっととじた
2
さあ、帆を上げよう! 大海原に漕ぎ出すのだ! 最初の人はそう言った
我々も後に続かなくてはならない
遠い過去の先祖の思いを胸に
遥か彼方の未来へ
今がその時 その時なのだ!
船出