あなたを殺した日

晴れですか、明日は

わたしは、あなたを殺しました


あなたに吐きかけようとした痰を呑み込んで、呑み込み続けて、溜め込んだ。
いつしかそれは、私のなかのペットボトルにはおさまりきらない量になって
でもそれは、愛だと思っていたの。
あなたとふたりで不幸になってしまえば、あなたとほんとうの幸せが掴めると思っていたの。
だからそれを伝えることなんてできなくて
言ってしまったらなくなってしまうから、甘えた。
案の定、どこにでもあるような、綺麗にラッピングされた言葉で慰められて、なんてつまらない人なんだと思った。

ひどく残酷なあなたに、なぜこだわるのか、自分でもわからなかった。


そんなことを、駅のホームで考えていた。
風が私の肌を撫でる。その感覚が気持ち悪くて、イライラした。
私は線路に唾を吐き捨てた。

家に帰ると、あなたがいた。
笑顔で「おかえり」というあなたに、わからない。何故だか、腹がたった。
あなたが嫌いだった。
この世の誰よりも好きで、誰よりも嫌いだった

その日は彼にいっぱい優しくした。
お互いを確かめ合うように抱き合ってキスをした。

その夜私は、彼を殺した。

彼の首を絞める度、彼の喉がきゅっと切なく鳴いた。
彼が目を覚まし、驚いた瞳でこちらを見る。

彼の唇は、噎せ返る程甘かった。

あなたを殺した日

あなたを殺した日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-22

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted