肝試し

リクエスト*檜佐木夢

1

『肝試しなんて聞いてないよ!』

「ん?あー、言ってなかったか?悪い悪い」


あっけらかんと言い放つのは萌恵の恋人、9番隊副隊長の檜佐木修兵。
今にも泣き出しそうな萌恵を見て、楽しそうに微笑んでいる。
大方、いつもは大人しい萌恵が感情をあらわにしているのが珍しいのだろう



「おい修兵、ウチの妹泣かせて楽しいか?」

「い、一護!なんだお前もいたのか!!」

「最初からいたわ!めちゃくちゃ棒読みじゃねぇか巫山戯んな!」


そしてそんな修兵を凄い眼力で睨み、
まるで毛を逆立てた猫のように威嚇しているのが萌恵の兄、一護だ。

如何せん2人は仲が悪い。
一護としては大事な妹を取られた感情が大きいのだが、それがわからない萌恵にとっては今回親睦を深めるいい機会になれば…と思っていたのだが。


『(なんでよりにもよって肝試しなの…?)』


夏だし、暑いし、現世ではやっていると噂の肝試しをしようと言うことになったらしい。
(噂を流したのは他でもない涅マユリ)

死神自体おばけのようなモノなのでは。
というかソウルソサエティには、一般的に幽霊やオバケと言われる人たちが沢山いるじゃないか。
と抗議をしたいのは山々だったのだが、一護と修兵の険悪ムードにそれどころではなかった。

2

「さぁーて、んじゃみんな揃ったことだし始めますか!
あ、ちなみに脅かす役の人たちはもう準備できてるってよ」


帰ろうにも楽しそうな雰囲気を壊すわけにもいかず、
そうやって黙っていると乱菊さんや吉良くん達、上位席官が揃ってしまった。
しかもみんな乗り気だ


「ねぇ、ただ入るってのもつまんないから、下準備して行きましょうよ」

『し、下準備、ですか?』

「そう!例えばそぉねぇ……あ、怖い話とかどうかしら?雰囲気出るんじゃない?」

「それならボクも幾つか聞いたことありますよ。」

「お前はそういうの得意そうだよな…」



なんだかどんどん怖い方に話が進んで行ってる。

彼らの言う「怖い話」は、現世で聞く怖い話とはまた違った怖さがあった。
何というか…こう、記憶に焼きつく怖さ。
表現がリアルだったり生々しくて、萌恵は何度か気を失いそうになった


「…ふぅ、まぁまぁ怖かったわね。
んじゃ、早速肝試ししましょ!ほらほら、みんなくじ引いて」



肝試しに行く順番はくじ引きで2人ずつ行くことになり、
萌恵は修兵とのペアになった。(一護がやり直せと怒っていた)

入り口である森の前に立つと、中は真っ暗、一寸先は闇と言う状況だ。
思わず修兵の手を握り、泣きそうな声で呟く


『し、修兵…置いていかないでね…』

「当たり前だろ?オバケ役っていっても見知った顔ばっかだろうよ
さ、行こうぜ?」

『うん…』


渡された提灯の明かりを頼りに一歩ずつ歩く。
いつもなら涼しげな虫の声が、今日に限っては恨めしいほど怖い

最初は手を握っているだけのはずだったのだが、萌恵は怖さからかいつの間にか修兵の腕に抱きつく形で歩いていた


「(あんまりくっつかれると…当たってるんだよなぁ)」


薄着のため形もよくわかる。
修兵は怖さと言うよりは、理性と戦っていた。


「うらめしや〜」

『ッひょわぁ!?』

「…って、萌恵か!悪りぃ悪りぃ」

『い、いいい一角、さん…?』

「おう、この先に札があるから、それを持って戻ればゴールだぜ」



どうやら案内役も兼ねているらしい。


木陰から現れたのはミツ目のオバケ…ではなく、額にもうひとつ目を描いただけの斑目一角。
正体がわかってホッとしたものの、萌恵が立ち上がろうとするがどうにも力が入らない



「どうした?」

『びっくりして…その、腰が…』

「お前ビビりだな、…まぁ檜佐木副隊長が紳士的に優しく抱えてくれるだろうよ」

「斑目お前……ほら、萌恵。」


意味ありげな笑みを浮かべている一角をよそに、修兵が横抱きに抱える。


『はぇっ!?し、しゅうへ…』

「暴れると落ちるから、な?」

『う、ん…』




**


檜佐木修兵は後悔していた。

いや、恋人である萌恵を横抱きにすることで距離が縮まったのは嬉しい。
しかし、別の問題が起きていたからだ


『重くない?』

「あ、あぁ…」


今は夏だ。そして彼女は薄着だ。
お互い若干汗ばんでいて、彼女の細い腕や足、胸元が見え隠れいている。
しかも人影はない。薄っすらとある明かりが異様に萌恵を艶かしく映し出しているだけだ。


「(いや何考えてるんだ俺は。紳士的に萌恵を送り届けるだけだ。紳士的に…)」


そう思えば思うほど目に入ってしまうのが男の性と言うもの。
大体ここでおとなしく帰った所であの兄(一護)がいるわけで。
となると今日はキスもできない可能性が大きい

修兵に戸惑う理由はなくなった


「なぁ、萌恵」

『何?』

「…その、…キス、したい」

『へっ!?…な、なな、なっ、何考えてるの!?』

「こんだけ密着しといてお預けってキツイ。…戻ってもアイツがいるしな
それとも萌恵はしたくないか?」

『それは……したい、けど…』


もにょもにょと語尾が小さくなり、頬が紅く染まっていく。
そんな姿を見て我慢できなくなった修兵は、少しだけ道を逸れ萌恵を降ろす


『っ、ここで、するの?次の人達に見つかっちゃうよ…』

「そうだな。…でももう、我慢できねぇ」

『っん…しゅ、へ…っ』


顎を持ち上げ、舌でゆっくりと唇をなぞり、そのまま唇を合わせる。


「あー…やばい…」

『?』

「なんか、何時もより興奮する」

『え、っひゃ…!?』


首を噛まれ、思わず高い声が出る。
ぞくぞくとした感覚に戸惑いながらも、拒否できない


「…現世で他の男に取られないように、きちんと痕付けとかねぇと」

『そ、んなの、いらな…っん』

「萌恵は俺のこと好きじゃねえの?」


修兵の目に嫉妬の色が滲み、より一層強く口付けをされる。


『ちが、…違うのっ、…そんなことしなくたって、私は修兵しか見てないもん…』


だから、嫌なわけじゃない。
そう言われて、修兵の中の何かが音を立てて切れた
通信機を取り出し何かを打ったかと思えば、くるっと向き直りにやりと笑う。


「吉良達には遅れるって言っておいた」

『へ…?』

「続き。…さっきの続きしようぜ?」

『えぇっ!?あの、本当に、っするの?』


二の腕を撫でられ、ぞわぞわとした感覚が体を襲う。


「嫌だったら言えよ?…って言っても、止められる自信はないけど…」

『ふ、ぁ…っ、修兵…っ』

「萌恵、愛してる」



私の好きな人はとってもかっこ良くて、

少し(?)変態です。



End

肝試し

肝試し

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-21

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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