砂漠のオアシス
ギラギラと太陽が照りつける…ここは砂漠の真ん中。
ラクダも、かなり疲れているようだ…
旅に出る前に、街の商人は確か砂漠の真ん中に、緑と水が豊富なオアシスがあると言っていた。
本当なら、もう見えてもよいはずなのだが…旅人は残り少ない水を一口飲んで、あとはラクダに分けてやった。
それからラクダを優しく愛でて、『サァ、もう少し歩こう、しばらくするとオアシスが見っかるさ!』
自分を勇気付けるように、ラクダに語った。
目の前には幾重にも砂の山が連なっている。
商人は確かに、この辺りだと話していたが…旅人は疑心暗鬼に陥った。
商人はお金欲しさに、偽りの情報を渡したのでは…
オアシスなど、始めから、この砂漠には無いのでは…
目的の地、わたしの愛する女性が待つ町までは
この砂漠を横切るのが最短距離だと言っていた。
彼を信じた、わたしが愚かなのか…それとも彼を信じられない、わたしが不徳なのか…
ふと、足下を見ると、ラクダと人の人骨が砂山に無造作に横たわっていた。
愕然(がくぜん)とする旅人。
こんなところで、命、尽きるとは、やはりオアシスなど、ないのだ!
憤りと怒りが旅人の心に沸き上がった。
残り少ない水を飲み干したことに、後悔したが、もはや後の祭り…
わたしも、この白骨した旅人と同じ運命なのだと思い、もはや歩く気力を失い、その場に座り込んだ。
しかし、旅人は宿を出る前に商人から言われたことを思い出した。
『あなたが、砂漠の真ん中で、迷い途方に暮れた時には、この言葉を思い出してください。 』
『全ての欲しいものは、求めるときは与えられず、返って遠ざかります。
しかし、全てを、ありのままに、受け入れ、疑うことなく、自らを信じ行動し
希望を失わないなら、欲しいものは、おのずと、引寄せられるのです。』
『あなたが、予期しない時に突然、その時は来ます』
今は、この言葉に頼るしかいきる道はないと確信した旅人は
連なる砂山に圧倒されながらも歩みを進めた…
目の前にある、小高い砂山を、やっとの思いで越えた旅人の目に信じられない光景が映る。
旅人の瞳からは、一筋の涙がこぼれた。
『オアシスだ…』
砂漠のオアシス