美しい卵

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童話調の短い物語です。ご覧になってくだされば幸いです。

-その女は美しい卵だった-


 ある一国に少女が生まれる。名前はガブリエラ。平凡な中流家庭に生まれたが、ひときわ綺麗な美貌を持って生まれた。少女は華のようにすくすく育ち、やがて誰もが麗しがるような無垢な女性になった。
 彼女の余りの無垢さと美しさに求婚する男は後をたたなかったが、彼女は「恋人がいるの」といってすべての男の求婚を断った。だがしかし、彼女の恋人を見たという人は一人も居なかった。
 そのかわり、夜な夜な娘が畑に出て月光の晩誰かと踊っているような姿を見るものが現れはじめた。
「あの子は月に恋人がいるんだよ」
盲目の娘の母親はそう言ったっきり口を閉ざした。
 そして娘が17になった満月の晩、事は起こった。
「みんな、わたし婚約するの」
娘の誕生祝のパーティーの途中、娘がそう言ったとき、畑は猛烈な熱風に晒された。木々はざわめき、どこからともなく大量のカラスが湧き出し、気づいたときには畑に一人の痩躯の男が立っていた。
「みんな、さよなら。わたしこの人と幸せになるわ」
 男を見た若者が言う「そいつは、娘とは正反対の禍々しいが、見とれてしまうほどに美しい男だった。」
 男は娘を抱き、一言だけつぶやいた。
「確かに、雛はもらった」
そういうと二人はまた大量のカラスと熱風に包まれ、跡形もなく消えてしまっていた。

 
そういえば誰もが不思議に思っていいのだが、娘には父がなく、また母も含め周りもその存在について曖昧だった。
 彼女の母は言った「私は卵を預かっただけさ…」と。

美しい卵

美しい卵

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-18

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