叶わない恋

叶わない恋

深い海の中
光も届かない
私は泳いでいる
そんな場所で

ある時人間という
大きい生き物が
突然やってきた

この海の中を見に来たのだ
ぐるぐるとあたりを巡っている

その時だった
遠くから黒いものが
サメだと分かったとたん
生き物たちは
いっせいに飛び散った

人間もそれに気づき
地上に帰っていった

サメはただ通り過ぎていった

私はやれやれと
サンゴに寝そべった
先ほどの彼を思い出した
うとうとと寝てしまったのだろう
夢の中で地上へ向かっていた
そうさっきの彼に連れられて
光が差し込み明るい世界に―――
もう少しというところで目が覚めた

彼とおんなじ人間だったら
私は彼に恋をした
地上の世界みたい
彼のそばでずっと
でもそれは叶わない
なぜなら私は
さかなだからだ

叶わない恋

叶わない恋

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-18

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