不時着
ああ、ああ。ええと、音声ワープロは動いているかな。あれ、余計なことまで印刷されちゃった。まあ、いいや。後で削除しよう。
『宇宙の不思議』を読んで。4年3組遠山ヒカル。
ぼくは課題図書の中から、『宇宙の不思議』を選びました。なぜなら、ぼくは将来、宇宙飛行士になりたいからです。
ぼくは宇宙にすごく興味があります。宇宙のことを、もっともっと勉強して、きっと宇宙飛行士になります。
宇宙には宇宙人がいるでしょうから、お友達になりたいです。お友達になって、いっしょにゲームとかして遊びたいです。
そういえば、ぼくのゲーム機は昨日から調子が悪くて、ピーピー変な音がします。
あ、間違えちゃった。読書の感想を言うんだった。でも、ピーピーなるだけじゃなくて、話し声のような音もするんだよなあ。そうだ、ちょっと、音声ワープロに近づけてみよう。
《太陽系第三惑星に不時着した。至急、救助願う》
変だなあ。ぼくのゲーム機には、そんな宇宙もののソフトは入っていないのに。
あれ、別の声も聞こえてきたぞ。
《太陽系の近傍には、現在、航行中の母船はいない。何とか自力で脱出できないのか》
まるで、アドベンチャーゲームみたいだ。
《この惑星のスケールが、我々の母星と異なるのを見落としていた。何か巨大な構造物に挟まれて、身動きがとれない。近くに発信機能のある機械があるので、それを利用して通信している。自動的にこの惑星の言語に変換されてしまうのが難点だが、まあ、使えないことはない。但し、きわめて原始的な機械なので、ハイパー増幅器を接続しても、このまま超光速通信を続けることは難しい。通信不能になる前に、事態を打開しなければこの惑星で遭難してしまう》
ぼくは気になって、ゲーム機をゆすってみた。
《うあーっ、何か強力なパワーで揺さぶられている》
ゲーム機をひっくり返してみた。
《あああーっ、今度は回転している》
軽くたたいてみた。
《あっ、あっ、激しい衝撃波が襲ってきた》
思い切って、ポンとたたいた。
《ぎゃあーっ。うわっ。おおっ。は、外れた。助かったぞ》
ゲーム機から小さなムシのようなものがとび出して、窓から外に飛んで行っちゃった。何だったんだろう。
ええと、それでは、これから読書の感想を述べます。
(おわり)
不時着