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2015/06/14 テーマ「鳥」

穏やかな春の光が照らす、教室。まだ一人しかいないそこで、優しげな少女-晴-が出席簿を読み上げていた。
「1番、東兎角くん、2番、犬飼伊介くん、4番………」
「……10番、走り鳩くん、11番…」
「おいおいちょっと待てっすうううう!!!」
突然ガラリと扉が開き、金髪の少女-鳰-が物凄い形相で教室に駆け込んできた。
「あっ、あなたも黒組の生徒?晴は一ノ瀬…」
「そうじゃなくて!そうじゃなくて!出席簿よく見て!鳩じゃないっすぅ!」
悲痛な叫びを受けて、晴は出席簿を見返してみる。しかし。
「いや、鳩ですよ?」
唖然とする鳰。
「なによその会話、ウケル♥伊介にも見せなさいよ」
「…私も、気に、なるます…」
「何だ?」
気がつくと、他の生徒ももう教室に入っている。鳰は出席簿を掴むと、クラスメイトに見せつけて叫んだ。
「コレ!何て読むっすか!?」
……………………………

「走り、鳩?ダッサイ名前ね♥」
「…はと、さん…よろしく、おねがいします……くるっぽー……」
「走り鳩か。変わった名前だな」
「ちょ、皆さん!?」
予想外の返答に目を白黒させる鳰。
その日からずっと彼女は、「走り鳩」と呼ばれ続けるのであった…。

06/18 テーマ「化石」

食事も風呂も宿題も支度も集団下校との連絡も、全て終わった十時半。横になってスマホをいじっていると、隣のベッドから武智の鼻歌が聞こえた。
「やけにご機嫌だな」
ボクがそう呟くと、武智はご機嫌な声で
「昔ハマってたゲームを久々にさぁ」
と言った。確かに、昔やっていたゲームを久しぶりにやってみるのは楽しいものだ。こればかりは武智に同感だ。
「なんていうゲームなんだ?」
「カセホリ」
そう答えつつ、武智は青色のゲーム機に一世代前のソフトを挿し込んだ。僅かにカチリと聞こえる。しばらくすると、楽しげなオープニング曲が流れた。ゲームが始まったみたいだ。

あまり話しかけないほうが良いだろうと無言でいたが、『ピコーンザクッザクッ…テッテレテッテッテッ』とか『パシャ-カンカンカンカンギュイイイイイン』とかいう異様な効果音はさすがに気になる。
「ソレの内容教えてくれ…」
「よっしゃ125ォ!あぁ、これは化石を掘り出して削ってそれを復活させるゲームだよー」
「…なんか、いいな。それ」
ボクが羨ましげにそう言うと、武智は楽しそうに笑ってこう言った。
「あはは、でしょー?…あ、そうだ!これセーブ2スロットだからしえなちゃんやってみてもいいよ♪」

そうしてボクは、武智と一緒にそれをやってみた。最初のクリーニングでは70ptくらいしか獲れなかったけど、回数を重ねていくごとにだんだん腕が上がり、採掘もバトルもバリバリいけて、そして宇宙生命体を倒す為にワープ機関へ乗り込む…
…というところで、スズメが鳴いた。どうやら、もう朝になったみたいだ。隣で武智が苦笑する。
「徹夜でやりこんじゃったね…まあ楽しいからいいよね!さあ学校行こ!」

それから数日間、ボクと武智はそのゲームをプレイし続けた。クリア後のサムライ戦で苦戦したりだとか、砂漠を巡回してティラノを探したりだとか。ゲームをしているときの武智は本当に楽しそうだったし、ボクも誰かとするゲームは新鮮で面白かった。

そして、ある日武智は去っていった。ボクの手元にそのソフトを遺して。
1つめは武智のデータ、2つめはボクと武智のデータ。ボクはそのソフトを売ることも棄てることもできなかった。それに、続きをプレイすることも無理だった。
武智との思い出、ボクと武智が仲良くしていたという記憶。それがこの中にある…言わば「化石」。それは無くすことも手を加えることもしてはならない…そんな気がするから。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-14

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. 2015/06/14 テーマ「鳥」
  2. 06/18 テーマ「化石」