雨上がり

haruna

 幼い頃、絵を描くことがとても好きだった。

 買ってもらった大きなスケッチブックと、鉛筆を一本だけ持って、一瞬を捕まえに行く。

 家の庭の、初夏の風に恋をしたばらの花

 どこからかやって来た 陽だまりで昼寝をする猫

 近所の家の池に映る自分の姿


 あの頃の僕には描きたいものがたくさんあった。
 どんなに分厚いスケッチブックでも足りないくらい

 
 あの頃の僕は真っ白な紙に何を描こうとしていたんだろうか。


 あの時何かを探して走った道を、
 今ゆっくりと歩いてみる


 あの頃の僕にこの景色はどんな風に見えていたんだろうか。


 6月の夕暮れ
 さっきまでの雨が全ての迷いをさらっていったかのように
 澄んだ空気が僕を包み込む

 紅く染まっていく空と雲 優しくて 懐かしくて

 それは雨上がりの魔法
 夢の中で出会ったような
 夕焼け色に色づいた紫陽花の花が咲いていた


 この一瞬を忘れないようにと
 僕は心の中で繰り返した

雨上がり

雨上がり

幼い頃、大切なものをたくさん持っていたような気がします。 それを思い出しました。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-14

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